コロナ対応、マスク・追跡アプリが支持失う
スイス人は引き続き、新型コロナウイルス対策としてのマスク着用や濃厚接触者の追跡アプリに懐疑的だ。
公共の場でのマスク着用の義務付けは、ますます支持を失っている。世論調査会社ソトモが12日に発表した調査によると、店舗などでマスクを着けたくない人の割合は、4月に比べて10ポイント増えた。
支持が過半数を得たのはイタリア語圏だけだった。スイスの中で最も感染者・死者が多い地域の一つだ。
コロナに関する世論調査は4回目。swissinfo.chの親会社であるスイス公共放送協会(SRG SSR)が調査を依頼した。
公共交通機関の中でのマスク着用の義務付けについても、イタリア語圏では圧倒的に賛成する人が多かった。フランス語圏でも比較的賛成が多く、ドイツ語圏では僅差で反対が賛成を上回った。
ソトモのミヒャエル・ヘルマン代表によると、マスク義務付けに反対する意見の多さは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者が減ったことや、ソーシャルディスタンシング(社会的距離)が取れない時のみマスク着用を推奨する政府の方針に関係している。
「第2波が来ない限り、マスク反対のトレンドは続く可能性が高い」(ヘルマン氏)
またドイツ語圏を中心に、マスクを着ける文化や圧力がないことも背景にある。
ウイルス拡大を封じ込めるために感染者との濃厚接触者を突き止めるスマートフォンアプリについても、同様の傾向が見て取れる。
支持派は全体で54%と、4月時点から11ポイント減った。
この結果はあまりよくない知らせだ。アプリが有効性を発揮するには人口の60%がインストールしなければならないからだ。
これにもマスクと同じような背景があり、「ウイルスが制御されていると、人々はそうしたアプリを実装する必要性を感じない」とヘルマン氏は説明する。
個人の自由に対する規制や当局による監視への疑い・不安も根強い。
ヘルマン氏は、この段階でアプリ使用を促す周知キャンペーンをしても、効果があるかは疑わしいという。
経済不安
今回の調査では、パンデミックによるネガティブな影響の中で、失業の増加など経済減速に対する懸念が過去3カ月で最も大きくなった。
個人の自由や国際・社会紛争への懸念が最初に明らかになったのは4月だった。一方、国内の医療体制の崩壊に対する不安は目立たなくなっている。
ヘルマン氏は、現在は社会のムードが二律背反に陥っていると指摘する。国内の経済危機は避けられる、との楽観論がある一方、職を失うかもしれないという個人的な不安が表面化している。
「現在はロックダウンの解除に伴い幸福感に満たされているが、前向きなムードはそう長続きしないだろう」とヘルマン氏はみる。「現在操業短縮制度で給付金を受けている人の多くが、もうすぐ制度が終わる可能性があることに気づくだろう」
スイス連邦政府は3月半ばに導入した諸規制を段階的に緩和し、商店やレストラン、学校が再開するなど生活の多くがもとに戻った。残る最大の規制は、(少なくとも原則として)300人を超える集まりの禁止だ。
信頼は堅く
政府への信頼はなお厚いが、一部のコロナ対策に関しては批判も高まっている。
信頼感は3月の61%から66%に上昇した。自身を保守派または右派とみなすドイツ語・イタリア語圏の回答者は、政府の危機対応への信頼を失っていると答えた。対照的に、フランス語圏では当局への支持が増えている。
こうした言語圏による違いは、これまでのコロナ関連世論調査にもはっきり表れている。
スイスに住む15歳以上を対象にインターネットで調査。3万1011人から回答を得た。
回答期間は6月5~8日。標準誤差は±1.1%。
調査はswissinfo.chの親会社であるスイス公共放送協会(SRG SSR)の委託を受け、調査会社ソトモが実施した。今回で4回目。
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