スイスの視点を10言語で

コロナで不満蓄積か スイス東部で若者と警察が衝突

police
ザンクト・ガレン市のマリア・パッパ市長は今回の暴力的行為は「ほんの一握り」の若者によるものだと話した Keystone / Michel Canonica

スイス東部ザンクト・ガレンで若者の集団と警察が衝突する事件が相次いでいる。国内の政党青年部は、新型コロナウイルスによる若者への心理的負担が深刻だとして、連邦政府に対応を求める請願書を出した。

スイス公共放送(SRF、独語)の報道によると2日午後9時頃、ザンクト・ガレンの中心部で若者グループの一部が警察に瓶や爆竹を投げつけて攻撃。同10時半頃には駅周辺で若者が警察に火炎瓶などを投げつけた。警察はゴム弾や催涙ガスで応戦した。

一連の事件で若者2人が負傷し、21人が一時身柄を拘束された。現場周辺は自転車や建築資材が道路に投げ込まれるなど騒然となった。

ザンクト・ガレンでは1週間前にも、警察が200人の違法パーティを摘発した際に若者と衝突、警察官1人が負傷する事件があったばかり。

今回の事件では1週間前から、ソーシャルメディアで暴力行為を予告する投稿があり、警察が厳戒態勢を敷いていた。

ザンクト・ガレン市のマリア・パッパ市長は翌3日の会見で、このような暴力は断固容認しないと強調した。

この暴動で一部のショップやレストランが被害を受けた。警察によると、3日正午までに7件の被害報告があり、被害総額は約5万フラン(約590万円)に上った。

スイスでは新型コロナウイルス変異株の感染拡大を受け、1月からセミロックダウンを実施。現在は一部緩和されたが、屋外での集まりは15人に制限され、レストランやカフェは閉鎖が続いている。大規模な政治デモは自治体の許可があった場合のみ実施できる。

コロナへの不満

今回の事件は新型コロナウイルスの制限措置に反対するため組織されたものではない。だが多くのメディアが事件とコロナを結び付け、若者の社会的・文化的接触の欠如が関係していると報じた。

おすすめの記事

青年心理学者のフェリックス・ホフ氏は独語圏の日刊紙NZZに、青少年の心身発達に必要な要素が感染対策に反映されない限り、このような事件は増加すると述べた。

一方、政府は先月1日の緩和第1弾で、スポーツ・文化活動の人数制限を除外する年齢を16歳未満から20歳未満に引き上げるなど、若者の心理的負担軽減策を講じている。

若者へのサポート

ザンクト・ガレンの事件を受け、国内の5つの政党青年部は5日、危機管理に若者の意見をもっと反映させるよう連邦内閣に求める公開書簡を出した。公開書簡は超党派の青年部が署名。政府との連携を求めている。

外部リンクへ移動

書簡では、緩和措置が若者を差別するようなものであってはならないと主張。精神的な問題を抱える若者への十分なサポートのほか、大学などでの対面授業の再開を求めた。

おすすめの記事
ワクチン

おすすめの記事

スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。

もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

ジョン・レノンとオノ・ヨーコさん

おすすめの記事

ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定

このコンテンツが公開されたのは、 ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。

もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
スイス証券取引所を運営するSIX本社

おすすめの記事

スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。

もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
野菜

おすすめの記事

2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。

もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
研究所の外観

おすすめの記事

CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える

このコンテンツが公開されたのは、 今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。

もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
クラスの風景

おすすめの記事

女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。

もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
雪山で写真を撮る観光客

おすすめの記事

11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ

このコンテンツが公開されたのは、 スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。

もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
巨大な豆腐を切る人

おすすめの記事

スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。

もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
草原のツルの群れ

おすすめの記事

スイスを縦断するツルが過去最多

このコンテンツが公開されたのは、 スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。

もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
手

おすすめの記事

「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。

もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部