スイスでサル痘が流行していることを受け、ワクチンなどの感染対策強化を求める嘆願書に、5500筆超の署名が集まった。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)が21日に報じた。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは、初の感染例が確認された5月21日以降、感染者数が約400人に上る。
SRFによると、スイスは現時点で発症率(人口に占める病気の発生速度を示す)が隣国に比べ最も高い。スイスが45.91なのに対し、ドイツとフランスが40以下、イタリアが11.18だった。
報告されている国内の症例の大半は、同性愛者の男性の間で発生している。このウイルスは、皮膚や粘膜に直接触れる行為(性行為も含む)で感染する可能性がある。
嘆願書はスイスのゲイ・バイセクシュアル男性のための団体「ピンククロス」が今月10日に立ち上げた。嘆願書ではスイス当局がサル痘の流行に対し「特別事態宣言」を発令するよう求めている。
他国ではワクチン接種始まる
世界保健機関(WHO)は7月23日、サル痘の発生を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言した。
スイスの近隣諸国では、天然痘のワクチンを使った予防接種を既に始めている。しかし、サル痘に対するワクチンとしてスイス当局が使用を承認したものや、調達したものはまだない。
ピンククロスのロマン・ヘッグリ事務局長はSRFの取材に「今、この病気にどう対処すべきかということに対して予測がつかないこと、とりわけ政府に対する不満が大きい、と感じている。今回のサル痘に有効なワクチンがあるはずなのに、スイスでは手に入らない」と語った。
ワクチンは、政府が製造元から直接調達しなければならない。連邦保健庁はSRFに対し「製造元は、サル痘に対する使用の認可申請をスイスで出していない。その意向もないようだ」と文書で回答した。
次のステップ
しかし、保健庁はSRFに対し、現在交渉中である事実を認めた。
ヘッグリ氏は、このプロセスのスピードが極めて遅いとし「私たちにとって、政府がこのワクチンをできるだけ早く、また十分な量を調達しなければならないことは明らかだ」と述べた。
ピンククロスは、21日までに5766筆の署名を集めた。来週中に政府に嘆願書を提出する予定という。
英語からの翻訳・宇田薫
おすすめの記事
スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ州の放射性廃棄物処分場建設計画が、正式な認可が下りる前から反対運動に直面している。
もっと読む スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
おすすめの記事
ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
このコンテンツが公開されたのは、
ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。
もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
おすすめの記事
スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。
もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
おすすめの記事
2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。
もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
おすすめの記事
CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
このコンテンツが公開されたのは、
今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。
もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
おすすめの記事
女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。
もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
おすすめの記事
11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。
もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
続きを読む
おすすめの記事
南アで国内3例目のサル痘確認 スイスからの観光客
このコンテンツが公開されたのは、
南アフリカ北東部リンポポ州保健局は、国内3例目のサル痘感染が確認されたと発表した。スイスからの観光客男性(42)という。
もっと読む 南アで国内3例目のサル痘確認 スイスからの観光客
おすすめの記事
初のサル痘感染が確認されたスイス、有効な治療薬は未承認
このコンテンツが公開されたのは、
21日、サル痘の感染者がスイス国内で初めて確認された。しかしスイスでは現在、欧州連合で(EU)認可済みのサル痘に利用できる天然痘の治療薬「テコビリマット(tecovirimat)」は承認されていない。
もっと読む 初のサル痘感染が確認されたスイス、有効な治療薬は未承認
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。