スイスで活躍する久保裕也選手、「自炊で豚肉の生姜焼きなども作ります」
日本食のおいしさをスイスで紹介するイベントがベルンで20日、農林水産省と在スイス日本大使館との共催で開催された。ゲストとして招かれたスイスのサッカーリーグで活躍中の久保裕也選手(20)に、スイスでの食生活や日常の生活などを中心に話を聞いた。
スイス1部リーグのサッカーチーム「ヤングボーイズ(YB)」に在籍中の久保裕也選手。スイスに来て1年が過ぎ、今では現地の生活にすっかり馴染んだという。日本に戻った時など、自然あふれるスイスがいかに「静かな国」であるかを実感するようにもなった。
スイスではパンを食べることが多いが、「自炊するときは基本は日本食です。豚肉の生姜焼きなども作ります」とスイスインフォの取材に対して語る。
けんかもするが仲良しのチーム
英語もドイツ語もままならないままスイスにやってきた久保選手だったが、現在はチーム側が用意したドイツ語のレッスンを受けている。仲間とのやりとりはドイツ語が基本だが、「サッカーではテンションとかノリとかで、大抵のことは言葉がなくても通じます」。
現在所属のチームは、フォワードとしてはプレーしやすいと話す。「でもけんかは多いですよ。僕も最初来たときはけんかしましたし。物が言えなくても怒っているのは分かりますから。ただしそれは練習中のことで、練習が終われば、皆仲が良いです」
休日はチームメイトたちと一緒に、溶かしたチーズをじゃがいもに掛けるスイスの名物料理「ラクレット」を食べたり(スイス料理の中で一番好きだという)、バーベキューをしたりするという。
ちなみに、同じくスイスで活躍する柿谷曜一朗選手(FCバーゼル所属)とはまだあまり連絡は取っていないが、尊敬している先輩だと語る。先週末行われたYB対FCバーゼルの試合前には、二人で会話した。「彼は日本代表に選ばれていますから、代表に関することなどについて話したりしました」
日本とは全く違う欧州サッカー
スイスと日本のサッカーは「全然違う」と久保選手は言う。「スイスや欧州のサッカーでは(1人の選手が)走る距離も長いですし、フィジカルな部分でも違います。日本は足元(のボールさばき)とか、テクニック的なことが多いですね」
環境や練習内容もスイスと日本では全く違うと感じる。特に重視されているのは走りだ。スプリントと呼ばれる短距離を走る練習などは「特にきつい」と思うという。
注目を浴びる「スシ・ボンバー」
YBに移籍してからというもの、数々の試合でゴールを決め、スイスのメディアから一目置かれる存在となった久保選手。そんな彼に現地メディアがつけたあだ名は「スシ・ボンバー」だ。このあだ名についてどう思っているのだろうか?
「日本の選手が海外でプレーして得点取ったら、決まって(現地のメディアから)スシ・ボンバーって書かれるじゃないですか。だからそういうもんだと思います」と、全く気にしていない様子。だが、こうしたあだ名がついたりして現地で注目されることは嬉しいとも語る。
スイスを足がかりにして、数年後にはイタリアのチームへの移籍など更に上を目指している。「海外に出てきたからには、もちろん日本代表に選ばれたい」。会場で振る舞われた巻き寿司をおいしそうに頬張りながら、将来の夢を語る久保選手の目には固い決心が表れていた。
日本食を紹介するイベント
日本・スイス国交樹立150周年にちなんでベルン市内のホテルで開催されたイベント「Oishii Japan ! Discover delicious Japan !」は、日本食の普及促進を行う農林水産省が在スイス日本大使館と企画したもので、政府関係者、スイスのホテル・レストラン関係者や小売業者、メディア関係者など約60人が参加した。
スイスでは健康ブームと相まって、寿司が数年前から人気となっているが、寿司以外の日本食はあまり知られていない。そこで、「本当の日本食のおいしさを(スイス人に)知っていただくため」(前田隆平駐スイス大使)、今回のイベントが企画された。
イベントでは、手巻き寿司の作り方やおいしいお茶の入れ方などのセミナーが行われたほか、定番の寿司以外にも、スイスでは馴染みのないしゃぶしゃぶや牛にぎり、そうめん、おにぎり、日本各地の名酒や緑茶などが参加者に振る舞われた。参加者からは、日本食の多様性や色の美しさに称賛の声が上がった。
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