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スイスで進む教会離れ、信者数の減少

教会
スイスで教会離れが進んでいる © Keystone / Gaetan Bally

欧米諸国と同様、スイスで無宗教の人の割合が着実に増えている。最先端の医療や社会保険が完備された現代社会に、教会はもう必要ないのだろうか。

このまま行けば、スイスで無宗教の人がカトリック教信者を超えて多数派になる日が来そうだ。連邦統計局(BFS/OFS)によると、無宗教の人のグループは過去50年間で最も増加した。2021年には人口の約3分の1に達し、カトリック教徒の割合とほぼ同じになった。

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統計局によると、「無宗教」の人口集団は一般的に▽若年層▽教育水準が高い▽都市部に住むーーという傾向がある。女性より男性の方が若干多い。

無宗教者の価値観や生活実態は人によって様々だが、共通しているのは教会に属さず、信仰活動を実践していないことだ。無神論者や不可知論者のほか、特定の宗教には属さないが人知を超えた存在を信じる人々も含まれる。

ローザンヌ大学(UNIL)宗教社会科学研究所(ISSR)の所長で宗教社会学者のイェルク・シュトルツ氏は、「多くの場合、これらの人々は宗教的な社会交流がなく、宗教一般に無関心、あるいは反対している人達だ」と説明する。

西洋風

ほとんどの先進国で宗教の存在感が希薄化している。英スコットランドとフランスでは人口の過半数が無宗教だ。オーストラリアでは「無宗教」のグループが全体で2番目に多い。英国ではキリスト教徒がもはや多数派ではなくなっている。ドイツでは教会に属する人は人口の半分以下だ。米国、韓国でも信仰の重みが着実に低下している。

世界の状況は地域によって幅がある。米シンクタンク、ピュー研究所の国際調査によると、欧州、アジア太平洋、北米は最も世俗化が進み、約5人に1人(約20%)が「無宗教」だという。世界平均は16%だ。

欧州に視点を移すと、スイスは「平均的」なレベルにある。英国とフランスはより世俗化が進む傾向がみられるが、イタリアやポーランドのような国々は宗教色がより強い、とシュトルツ氏は言う。

「欧州の国々はいずれも、同じ世俗化のプロセスにある」とシュトルツ氏は分析する。「それが同じスピードで進んでいないのは、始まった時期が異なるからだ」

しかし、ピュー研究所は、人口動態を鑑みると現在から2050年の間で世界人口に占める宗教信仰者の割合が増加すると予測する。人口減少が進む北米と欧州では「無宗教」の人の割合が増え続ける一方で、人口急増が見込まれるその他の地域では無信仰者の数は横ばいか、むしろ減少するという。

教会は今後どうなる?

シュトルツ氏は、西洋で宗教が衰退した主な原因は近代化であり、長期的に見れば宗教にとって主たる脅威だと話す。人類が宗教から離れつつあるのは、もはや宗教の有用性を見いだせないからだと同氏は言う。「多くの世俗的な手法は、宗教がかつて対処していた問題を解決している」

「生物医学が私たちを治療し、個人的な問題は心理士やセラピストに相談する。保険や福祉国家が、私たちに安心感を与えてくれる。神父や牧師に祈ったり、相談したりする必要性は減っている」

欧米諸国における無宗教化のあおりを最も受けているのは教会だ。教会は信者の流出に直面している。牧会社会学研究所(SPI)によれば、スイスでは2021年までに3万4千人以上がカトリック教会を離脱した。プロテスタント教会では2万8千人以上という。

この傾向は今後も続きそうだ。教会の今後を調べたスイスの調査では、2045年までに福音改革派教会の信者数はほぼ半減し、ローマ・カトリック教会の信者数は3分の1になると予測する。スイス・ローマ・カトリック中央協議会(RKZ)のレナタ・アサル・シュテーガー会長は「この傾向を覆すことはできない」と断言する。

一方、改革派教会のリタ・ファモス会長は「私たちは(…)現在の信者たちと協力すべきだ。スイスにはまだ180万人の信者がいるのだから」と強調する。

教会からの脱会は主に個人の信仰との関係によって決まるが、統計によれば、特にカトリック教会では、教会の現状が大量の脱会に影響している。

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アサル・シュテーガー氏は、組織にも責任の一端があると認める。最近メディアを賑わせたカトリック教会での性的虐待スキャンダルが信頼の崩壊につながったという。「現在の人々のニーズ」によりよく対応するために、教会は「徹底的な改革」を断行する必要があると同氏は話す。

両教会は、信者流出がやがて深刻な財政問題に発展することを自覚している。教会の今後を調べた調査では、今後20年間で数千万フランの収入減が見込まれる。

そのため教会側は資産運用のほか、特定のプロジェクトのスポンサーや共同出資を行ったり、教会サービスの契約を結ぶなどして収入源の多様化を検討している。また、自分たちの活動を広く社会に呼び掛け、資金の有効な使い道を模索することが重要だとしている。

シュトルツ氏は「資金が減れば教会の規模も、スタッフの数も、教会サービスも縮小する」と指摘する。しかし、swissinfo.chがインタビューした教会の代表者は、教会は依然として社会全体にとって有益な使命を果たしており、「なくてはならない」存在でさえあると語った。

「なくてはならない存在」とは特に、難民、若者、高齢者への支援、さらには病人への精神的ケアや遺族支援というような教会サービスだ。アサル・シュテーガー氏は「たとえ測定が困難であっても、組織の社会的価値全体を過小評価すべきではない。それは、男女に人生の基本的な自信を伝えるものだ」と訴える。

「教会は社会の結束に貢献している。悲劇は宗教儀式で乗り越えることもできる」とシュトルツ氏は言う。問題は、もし教会がなくなったらこれらを誰が引き継ぐのかということだ。国家か?それとも市民社会の他の担い手か?

シュトルツ氏は、たとえ無宗教者であっても、多くの人々の心の中に教会のアイデンティティやそれに対する文化的な愛着が残っていると話す。「教会は人生の主要な段階を共に歩むものだ。教会という建物が存在するだけで、空間的なアイデンティティが生まれ、人々はそれがなくなってほしくないと感じる」

編集:Marc Leutenegger、仏語からの翻訳:宇田薫

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