スイスの視点を10言語で

スイスの滞在許可証更新は「社会統合」の度合いが基準に 2019年から

永住許可証
永住許可証を持つ人は注意が必要 Keystone

スイス連邦内閣は15日、外国人の滞在許可証更新は「社会統合(インテグレーション)の一定基準を満たした場合のみとする」という規則を採択した。2019年から適用する。

>>スイスの滞在許可証は何種類ある?

 外国人法改正に伴う措置。スイス社会に適応していると見なされれば直ちに滞在許可証が更新されるが、そうでない場合は滞在許可証がダウングレードされる場合がある。

 滞在許可証の更新・延長が認められるのは、申請者が一定の基準を満たした場合のみ。改正外国人法によれば、公共の安全・秩序やスイス連邦憲法を尊重していること、スイスの経済活動に参加していることまたはその技能訓練を受けていること、スイスの公用語習得などが含まれる。

 スイスの公用語の知識は、それがすでに母国語であるか、3年間の義務教育を公用語で修了した外国人(当初の草案では5年間)が対象とみられる。この言語要件を適用するため、1年間の移行期間が設けられた。

 個人に付与される権利が増えるほど、この言語要件の比重も大きくなる。家族でスイスに住む場合の滞在許可証などを申請する際も言語要件が課せられるが、満たせない場合は語学教室への参加で十分だ。

罰則

 社会統合の意思がない外国人は、当局の求める基準を満たす必要があるという「社会統合合意書」に署名しなければならない場合がある。しかしこのような文書を取り交わすか否かは、滞在許可証を発行する州の判断にゆだねられる。

 この合意を遵守できないと、滞在許可証の更新に影響が及ぶ場合がある。例えば、永住許可証(C許可証)が一時滞在許可証(B許可証)にダウングレードされるケースもありうる。

 社会保障の受給者で暫定的な滞在が認められている外国人や難民は、社会統合コース、職業訓練コースへの参加が義務付けられる場合がある。正当な理由なくこれに従わないと、社会保障が減額されることもある。

 当局は個々の事情に応じて例外規定を設けることができるが、審理手続きを経た上、連邦内閣の定める規則の範囲内でなければならない。職に就いていても貧困状態の人は例外規定の適用対象だが、社会扶助の枠からは外れる。

 外国人改正法はまた、難民認定者、暫定滞在者に対する労働市場への参画条件を緩和。こうした人たちを企業が雇用する際、複雑な承認手続きが必要なくなった。企業は雇用者の個人情報のほか、職種、雇用形態、給料などを当局に届け出る。また適切な労働条件、給与水準を遵守する。政府はこの新規定により国内の労働市場が活性化し、社会保障コストの削減につながるとしている。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

研究所の外観

おすすめの記事

CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える

このコンテンツが公開されたのは、 今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。

もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
クラスの風景

おすすめの記事

女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。

もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
雪山で写真を撮る観光客

おすすめの記事

11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ

このコンテンツが公開されたのは、 スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。

もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
巨大な豆腐を切る人

おすすめの記事

スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。

もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
草原のツルの群れ

おすすめの記事

スイスを縦断するツルが過去最多

このコンテンツが公開されたのは、 スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。

もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
手

おすすめの記事

「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。

もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
眼の診察

おすすめの記事

スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの医療機関団体は22日、外来患者向けの新料金体系を承認したと発表した。エリザベット・ボーム・シュナイダー内務相は積年の議論に決着がついたことを歓迎した。

もっと読む スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入
戦車

おすすめの記事

スイス製武器の再輸出解禁案まとまる 主要政党の賛否まとまらず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国民議会(下院)安全保障委員会は、スイス製武器の再輸出の解禁案をまとめた。武器の輸出から5年経過を条件に、ウクライナなど紛争中の第三国への再輸出を認める内容だ。ただ主要政党の間では賛否が割れている。

もっと読む スイス製武器の再輸出解禁案まとまる 主要政党の賛否まとまらず
新聞を読む男性

おすすめの記事

スイスで「ニュース離れ」さらに深刻に メディア品質年鑑

このコンテンツが公開されたのは、 チューリヒ大学公共・社会研究センターが毎年まとめる「スイスメディア品質年鑑」2024年度版で、スイスでニュースを平均以下の量しか消費しない人の割合は46%と、過去最高を更新したことがわかった。スイスメディア全体の質は引き続き「良好」と評価された。

もっと読む スイスで「ニュース離れ」さらに深刻に メディア品質年鑑
スイスのアイスホッケー代表

おすすめの記事

アイスホッケーのスイス代表、国旗の白十字使用認められず

このコンテンツが公開されたのは、 アイスホッケーのスイス代表チームは、ユニフォームにスイスの国旗である白十字の紋章を付けることができなくなった。スイスアイスホッケー連盟(SIHF)が連邦行政裁判所に提出した申請が遅すぎたのが原因だ。

もっと読む アイスホッケーのスイス代表、国旗の白十字使用認められず

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部