スイスの慈善団体「幸福の鎖」 75年の連帯の歴史
スイス公共放送協会(SRG SSR)と二人三脚で人道支援事業を行う慈善団体「幸福の鎖」は、設立から75年の間に、スイスにおける人道支援の主要財源の1つとなった。同団体は今日までに20億フラン(約2400億円)近くを集めた。その歴史を振り返る。
「幸福の鎖外部リンク」はスイスを代表する慈善団体の1つだ。今年9月に設立75周年を迎える。これを記念して、12月に1週間、困窮した子供たちのための特別募金運動が行われる。
同団体の歴史は1946年、ヴォー州ローザンヌで始まった。第二次世界大戦が終わったばかりで、大半のスイス人は惨めな暮らしを送っていた。
スイス・フランス語圏の公共ラジオ局(後のフランス語圏スイス公共放送協会RTS)の2人の司会者、ロジェ・ノルドマンとジャック・ローランが、戦争によって苦しんでいる人々を支援するため、ラジオの聴衆と連帯の鎖を作ることを思いついた。
初めての寄付の呼びかけは1946年9月26日に放送され、その後は「幸福の鎖」と名付けられた週1回の番組となった。目的は、チェーンレター(手紙の鎖)の原理から発想を得たやり方で、人道支援の寄付を集めることだった。
最初、寄付は基本的に現物で行われた。ローザンヌのスタジオは定期的にさまざまな物資の箱であふれ、それらはスイス赤十字によって配られた。
スイス・フランス語圏で生まれたこのアイデアはすぐにドイツ語圏(1947年より『Glückskette』)、ティチーノ州(1948年に始まった『La buona azione』で、その後『Catena della Solidarietà』に改編)にも広まった。
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週1回のラジオ番組は1954年に終わりを迎えたが、その後も「幸福の鎖」は世界の状況に応じ、必要があれば放送を行っている。
「幸福の鎖」は37年間、スイス公共放送協会(SRG SSR)の一部門だった。なおこの協会は、swissinfo.chの親会社でもある。
募金活動の数が増加し、活動が職業化していったため、「幸福の鎖」は1983年に独立した財団となった。
しかしSRG SSRとの緊密な関係は続き、協会の「人道支援の片腕」という呼び方が定着している。活動の面では、SRG SSRはさまざまなチャンネルや媒体で「幸福の鎖」のキャンペーンを報道している。
スイス内外で5千件以上のプロジェクト
時とともに「幸福の鎖」は支援の幅を広げてきた。スイス国内の困難な状況にある人々、特に子供たちへの支援が優先課題の1つであることは変わっていない。しかし、世界のさまざまな地域での自然災害後の復興や、紛争被害者や病気の患者への支援のための募金活動も行っている。
これまで同財団が集めた募金の中で最高額を記録したのは2004〜05年の東南アジアの津波の後で、総額2億2700万フラン(約272億円)が集まった。
より最近では、昨年新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への対応として始まった「コロナウイルス・スイス」募金キャンペーンが4350万フラン近くを集め、170万人以上を支援することができた。
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同団体によると、コロナウイルスに関する特別募金活動はスイス国外向けにも行われ、それによってパンデミックで打撃を受けた17カ国600万人の人が支援を受けたという。
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「幸福の鎖」は集めた募金を現地で活動するパートナー組織に分配する。現在パートナー組織は国境なき医師団、ヘルヴェタス、赤十字、カトリック系の人道援助団体スイス・カリタスなど24団体に上る。また「幸福の鎖」はお金の使途の透明性を保証する。
寄付は「幸福の鎖」のウェブサイトで直接行うこともできるし、郵便口座10-15000-6に振り込むこともできる。現在実施中の募金運動の1つを選んで寄付することもできるし(アフガニスタン、ハイチ地震、新型コロナウイルスなど)、最も必要なところにお金を使うよう「幸福の鎖」に選択を任せることもできる。
75年前の設立以来、「幸福の鎖」は260件近くの募金活動によって19億フランを集めた。それにより、同団体は人道支援の主要出資者となっている。同団体によると、これらの資金によって5100件近くのプロジェクトを支援することができたという。
予定されている次の活動は、12月12〜17日にSRG SSRとの協力のもとで実施される設立記念募金だ。「幸福の鎖」の副会長カトリーヌ・ボー・ラヴィーヌ氏の発表によると、スイスおよび世界の困窮した子供たちがこの募金活動の中心となる。
(仏語からの翻訳・西田英恵)
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