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スイスの大学、新入生が増加 社会に黄信号?

講堂
講義を聞くザンクト・ガレン大学の学生 © KEYSTONE / CHRISTIAN BEUTLER

今年度はスイス国内の大学に入学した学生が非常に多く、今後もこの傾向が続きそうだ。しかし、これは学者の増えすぎにつながらないだろうか。 

連邦工科大学チューリヒ校外部リンク(ETHZ)は9月半ば、今年の新入生が過去最高の2万1千人に上ったと発表した(前年は2万人)。ローザンヌ大学も今年の新入生が前年比2%増外部リンクの1万5300人だった。

学生の増加に伴い、キャンパス拡張を計画している大学もある。ザンクト・ガレン大学外部リンクは市内中心部に大掛かりな建設プロジェクトを計画。事業費は1億6千万フラン(約176億円)に上る見通しだ。ただ実現には自治体の投票で有権者の過半数の賛成が必要となる。 

同大は8600人の学生を抱え、キャンパスが手狭になっているという。トーマス・ビーガー学長は「キャンパスの収容能力は5千人分。現在一時的な措置を取っているが、コストがかさみ、質もベストではない」と頭を抱える。

ベルン大学は、スイス連邦鉄道の旧本社建物を大学の施設に改装した。図書館を備えた施設で、費用は4千万フラン。今後も複数のプロジェクトを予定しているといい、クリスティアン・ローマン学長は新年度にあてた声明で「更なる学習スペースと研究インフラの整備は、最優先課題の一つ」と述べた。

より高資格を目指して

スイス連邦教育研究革新庁(SERI)のマルティン・フィッシャー事務局長は9月、スイス公共放送(SRF)に対し、(大学などでの教育を指す)第3期教育の需要は高まっていると述べた。

第3期教育機関の内訳は、大学、応用科学大学、職業訓練がそれぞれ3分の1ずつだという。

全人口の40%がこの課程で何らかの資格を得ており、増加傾向にあるという。2045年までには約60%まで上昇する見通し。

懸念

将来を見据えたとき、これが何を意味するのか。スイスの伝統的な職業訓練制度、つまり会社で働きながら教育を受けるというシステムが危機にさらされているのか?将来的に、学者の増えすぎにつながらないか?

>>スイスの職業訓練制度って?

バーゼル大学の元学長で、スイス大学連合の元代表でもある教育の専門家アントニオ・ロプリエノ氏は「そうはならない」と否定する。

同氏は、第3期教育の人気は好ましいことだとみる。同氏はSRFに対し、柔軟性に富む若者たちが特定の資格・教育が必要な専門職を目指すことを、社会が求めていると語った。

全欧文理アカデミー連盟外部リンク(ALLEA)の代表は、スイスと近隣諸国の学生数を比較すると「スイスの学界は他国に比べはるかに数が少ない」と話す。

スイスには職業訓練制度があり、政治が「幸いなことに(職業教育と学問的教育の)二刀流の教育制度を守っている。伝統的な職業訓練プログラムが脅かされているとは全く思わない」という。しかし、今日の知識社会においては、大学、応用科学大学にかかわらず、学問の道に進む門戸も広く開けておくべきだとした。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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