スイス、4歳ちょうどで幼稚園は早すぎ?入園を遅らせる親が増加中
スイスでは4歳になると幼稚園などの初等教育が始まるが、多くの州で、入園の月齢が年々若年化している。ただその一方で、子供の成長が追いついていないことなどを理由に、入園を遅らせる親が増えているという。
スイスの教育制度は州によって異なるが、一般的に8年の初等教育課程(幼稚園かそれに代わる教育を2年、小学校6年)、3年の前期中等教育課程(中学校)と続く。この11年間は義務教育だ。ただ入学年齢は州によって4歳から5歳と異なる。
スイスの学校は8月以降に新学期がスタートするが、日本と同じように学齢は誕生日で区切られる。全26州のうち24州ではこの区切りが4月上旬~7月下旬に設定されており、それより遅く生まれた子供たちは、翌年の新学期に入学する。
スイス・ドイツ語圏のごく一部の州では、幼稚園が義務化されていないか、1年間だけとなっている。
ただ、この学齢が、7月31日に一律化されつつある。義務教育制度の相違緩和を目指す州間協定外部リンク(HarmoS)に調印した州では2014年から毎年、学齢を半月ずつずらし、2020年には7月31日に固定する。17州はすでに7月31日と設定している。
義務教育には幼すぎる?
しかし、この「区切り」を遅らせることで、本来であれば翌年の入園で良かったはずの子供が、4歳の誕生日を迎えて間もない時期に幼稚園に通うことになる。
一方親たちは、地元の教育行政機関に対し入園を遅らせたいと申し出ることができ、ドイツ語圏の無料日刊紙20min.は、実際にそのような申し出が出ていると指摘する。
ドイツ語圏のソロトゥルン州とベルン州では、子供の幼稚園入園を遅らせたのは全体の1割に上った。ソロトゥルン州の6年前の数値はわずか2%だった。ベルン州では、親が正式に申請する必要はない。チューリヒ州でも入園を遅らせる傾向が見られるという。
チューリヒ教員連盟のクリスティアン・フギさんは20min.に「心の準備が出来ている子供の方がよっぽど楽に(学校環境に)慣れるという調査結果もある」と話す。
専門家によれば、幼稚園に入ったばかりの子供たちは様々な方法で新しい環境に順応する。ただ一部の子供たちは一人でトイレに行けなかったり、なかなか親と離れることが出来なかったりするという。
また、もう少し年齢が低くなると、すぐに疲れてしまう、集団行動を怖がるなどのケースが見られる。教師側も、こうした子供たちに対する特別な配慮が必要となる。専門家は、幼稚園で良いスタートを切ることは、子供の発達面でも非常に重要なことだと指摘する。
一部の親は幼稚園に通わせることを大変だと思っているという。ベルン州教育課のエルヴィン・ゾマーさんは20min.に「子離れは常に付いて回るテーマ。親たちは自分が何よりも大事にしている宝物を、他人に預けるのだから」と話す。
その一方で、自分の子供の誕生日が入学年の区切りを1、2週間過ぎているだけの場合、幼稚園の入園を早める親もいるという。
国際比較
何歳が義務教育開始に最も適しているのかは、他国でも議論になっている。隣国フランスではマクロン大統領による教育改革の一環で、2019年度から義務教育開始年齢を現行の6歳から3歳に引き下げることになった。3歳で初等義務教育が始まるのは欧州でも極めて早いが、この年齢の子供たちはすでに保育園に通っていることが多く、実際に影響を受ける子供は少数という。マクロン大統領は教育の不平等是正が目的としている。
ドイツとイタリアは6歳、英イングランド、スコットランド、ウェールズはそれぞれ5歳。経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)で好成績を出しているフィンランドとエストニアは7歳で義務教育が始まるが、その前に保育園などに通うのが一般的だ。
ティチーノ州は例外
イタリア語圏のスイス・ティチーノ州の幼稚園は3歳から6歳までだが、入園年齢の3歳は義務ではない。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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