スイスの視点を10言語で

アッペンツェル、新観光戦略で脱マスツーリズムへ

Appenzell cliff-face guest house
標高1450メートルにあるゲストハウス「Äscher-Wildkirchli」。2015年にナショナルジオグラフィック監修の世界の名所を紹介する本で紹介され、一躍有名となった Keystone / Melanie Duchene

スイス北東部のアッペンツェル・インナーローデン準州は観光地としてとても人気がある。ただ、観光客の増加に伴う弊害も顕在化し、関係者から改善を求める声が上がっている。 

同州の人口はわずか1万6千人だが、昨年は180万人の観光客がこの地を訪れた。ほとんどは日帰りのハイキング客で、ゼーアルプ湖や、世界的に有名なゲストハウス「Äscher-Wildkirchli」を目的地としていた。 

世界から観光客が集まるスイスの「崖っぷちホテル」

インスタグラムをはじめとするSNSの普及やアウトドア人気の高まりが近年の観光客増加を後押ししたとみられる。同州の観光収入は年間約1億2500万フラン(約180億円)で、6人に1人が観光業に従事している。 

しかし、駐車場の混雑や交通渋滞、ごみの増加など、キャパシティを超える観光客の増加に伴う弊害も顕在化し、関係者から改善を求める声が上がっている。 

州議会は29日、州政府が策定した観光戦略計画を基に、観光の限界について討議を行った。同戦略には15の施策が盛り込まれ、そのうちの2つは日帰り客を減らし、長期滞在客を増やすことを目的としている。同計画の施行には、議会の承認が必要となる。 

同州行政府の代表を務めるローランド・デーラー氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)の取材に対し、「すべてのものには限界がある。観光と自然の健全なバランスを見つけるのが私たちの仕事だ」と語った。 

スイスでは、新型コロナウイルス感染症の流行を機に、さまざまな地域で観光戦略の見直しが行われている。

ルツェルン、Airbnbの宿泊日数制限を可決 住民投票で

おすすめの記事

10言語で意見交換
担当: Veronica DeVore

体験談募集:観光公害に苦しむスイスの人気観光地はどうすべき?

「オーバーツーリズム」に遭遇して嫌な思いをしたことはありますか?こうした問題には、どのような対策をとるのが効果的だと思いますか?

4 件のいいね!
63 件のコメント
議論を表示する

バスツアーやアジア人観光客に人気のルツェルン市は、マスツーリズムからの脱却を図るため、観光戦略計画「ビジョンツーリズム2030」を策定。スイスや欧州からの観光客や会議参加者、長期滞在者などの誘致に力を入れ始めている。

英語からの翻訳:大野瑠衣子 

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

マイクに向かって演説をする女性

おすすめの記事

トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」

このコンテンツが公開されたのは、 ドナルド・トランプ前大統領が13日に銃撃された事件を受け、スイスのヴィオラ・アムヘルト大統領は「政治的な暴力は容認できない」と訴え、一日も早い回復を祈った。

もっと読む トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
洪水の被害を受けた地域

おすすめの記事

ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部を中心に発生した大規模な洪水の影響を受け、ツェルマット~ディセンティス間を結ぶマッターホルン・ゴッタルド鉄道(MGB)は、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休するとの見通しを明らかにした。

もっと読む ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
スイスは対ロシア制裁リストを拡大した

おすすめの記事

スイスが対ロシア制裁リストを拡大

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは対ロシア制裁リストを拡大した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いていることを受け、欧州連合(EU)が決定した変更を採用した。

もっと読む スイスが対ロシア制裁リストを拡大
人工知能(AI)による雇用喪失への懸念はスイスが最も低かった

おすすめの記事

AIによる失業懸念、スイスは最低

このコンテンツが公開されたのは、 人工知能(AI)は日々の仕事に影響を与えている。スイスでは、多くの人たちが仕事を含めAIを使っているが、この新しいテクノロジーのせいで仕事を失うと心配している人は比較的少ないことが最新の調査で分かった。

もっと読む AIによる失業懸念、スイスは最低
核兵器禁止を訴える団体

おすすめの記事

核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの市民団体「核兵器禁止を求める同盟」は、国連核兵器禁止条約への加盟を求めるイニシアチブ(国民発議)を立ち上げた。必要な署名が集まれば国民投票が実施される。

もっと読む 核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始
スイスの伝統衣装を着た女性

おすすめの記事

スイス民族衣装祭りに観光客10万人

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・チューリヒで6月28~29日、連邦民族衣装祭りが14年ぶりに開催され、延べ約10万人の観客が訪れた。

もっと読む スイス民族衣装祭りに観光客10万人
UBSとクレディ・スイスのロゴが入った窓ガラス

おすすめの記事

クレディ・スイスのスイス法人が消失

このコンテンツが公開されたのは、 スイス二大銀行だったUBSとクレディ・スイスの現地法人の合併が1日、完了した。今後スイス国内でも「クレディ・スイス」の看板撤去が進むことになる。

もっと読む クレディ・スイスのスイス法人が消失
マルティン・シュレーゲル氏

おすすめの記事

連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命

このコンテンツが公開されたのは、 連邦内閣はスイス国立銀行(SNB、中銀)の新総裁に予想通りマルティン・シュレーゲル副総裁を任命した。ペトラ・チュディン氏が新たな理事会メンバーとなる。

もっと読む 連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命
職場の犬

おすすめの記事

職場のワンコ、従業員の満足度を向上 スイス調査

このコンテンツが公開されたのは、 犬は職場の雰囲気を良くし、飼い主だけでなく他の従業員にとっても良い影響を与える――スイスの労働者を対象に実施された調査は、職場に犬がいることの効用を強調する。

もっと読む 職場のワンコ、従業員の満足度を向上 スイス調査

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部