スイス、京都議定書の温室効果ガス削減義務を達成
スイスは先週、2008~12年度の温室効果ガスの排出量を90年度比で9%削減したと発表した。これは京都議定書でスイスに義務づけられている90年度比8%削減を上回った「好成績」。しかし、世界自然保護基金(WWF)スイス支部は、スイス政府の「行き当たりばったり的な」政策を批判している。
スイスは08~12年度に人口が18%増、車両交通量も34%増、また国内総生産(GDP)でも36%増を記録した。こうした「成長」にもかかわらず、温室効果ガスは国民1人あたりで、7.8トンから6.4トンに減少したと連邦環境省環境局が発表した。
ただし、車の排気ガス排出量が90年度比で13%増加している。しかしこれは、他の分野での温室効果ガス削減によって補われているという。
温室効果ガス削減は主に、二酸化炭素(CO 2)を低減する諸政策のお陰で達成した。暖房用燃料への課税、建物の断熱性向上で暖房用燃料の消費量削減、また車の排気ガス規制などだ。
一方、90年代からの他の対策も温室効果ガス削減に役立っている。例えば、エネルギー効率アップ、公共交通の推進、貨物のトラック輸送から鉄道輸送への切り替え、自然農法の推進などだ。
環境省環境局は、「温室効果ガスの削減分には海外から購入した排出枠、森林吸収分などを削減量として計算に繰り入れた」とも述べている。
正しい政策
13年以降の温室効果ガス削減の新たな法的枠組み(ポスト京都議定書)において、スイスは削減義務を継続して負う第2約束期間(13~20年)で、平均で90年度比20%削減を目標に打ち出している。
「13~20年のこの目標は、第1約束期間よりさらに野心的なものだ。したがってこの達成には、産業・農業・建設業界などあらゆる分野の協力が必要だ」とブルーノ・オベール環境省環境局長は述べた。
また次のように言う。「スイスは正しい政策を行っている。なぜならスイスは、国の成長と環境保護は両立し得るということを示した一つの『模範国』だからだ。国際的な文脈で言えば、他の国も同じような政策を実行してほしい」
正しい政策
しかし、WWFスイス支部で気候・エネルギー部門の部長を務めるパトリック・ホーフシュテッター氏は、今回の環境省環境局の発表で、第1約束期間で義務づけられた目標にほぼ到達したかに見えるのは、「かなりの装飾」のお蔭だと言う。
「実は、08~12年度の温室効果ガスの排出量はそれほど変わっていない。国外から大量に排出枠を購入したお蔭で、採算が合っているだけだ」
第2約束期間に対しても、ホーフシュテッター氏は悲観的だ。「残念ながら政府は気候政策において、気温上昇幅を2度以内に抑えるための明確な方針をまだ打ち出していない」
つまり、氏によれば「スイスは今なお、行き当たりばったりの政策にとどまっている」。
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