スイスの学校が新年度 教職員ら「定期コロナ検査は必須」
新年度に当たり、スイスの教師たちは、学校での新型コロナウイルスの集団検査は続けるべきだと訴えている。デルタ型変異株の感染が急増するおそれがあるためだ。
スイスの2大教職員団体は10日、ベルンで共同記者会見し、パンデミック(世界的大流行)はまだ終わっていないと強調。生徒と教師の健康を守ることが最優先だと述べた。
北部アールガウ州では全国に先駆けて新学期が始まり、生徒たちが学校に戻った。他の州でも順次新学期が始まる。ソーシャルディスタンス(社会的距離)や手洗い、換気などの感染対策は継続するが、高学年の生徒に対するマスク着用義務は基本的になくなる(州が独自措置を設けることは可能)。
会見したのはドイツ語圏教員連盟(LCH外部リンク)と、フランス語圏教職員組合(SER外部リンク)。定期的な集団検査を継続することで、新規感染を迅速に特定できる、と述べた。
LCHのベアト・シュウェンディマン理事はswissinfo.chの取材に「グラウビュンデン州など、学校での定期的なコロナ検査をすでに実施している州は、これが有効な措置だとしている。(新学期に)学校で定期検査を実施するかは、各州に判断を任せている」と述べた。
アールガウ州、ベルン州、ツーク州、ルツェルン州などは、すでに集団検査の継続を表明。スイスでは、教育や関連のコロナ対策は州の管轄だ。最小の行政主体である基礎自治体でも、独自の対策を取ることは可能だ。
また、教師たちは、空気の質を測定する二酸化炭素(CO2)測定器を教室に設置するよう求めている。
ワクチン問題
教師と生徒ともにワクチン接種を受けさせるかは、依然厄介な問題だ。シュウェンディマン氏によると、両団体は任意ではあるが、教師に優先的にワクチン接種を受けさせるよう求めている。
「教師は必須の労働力であると同時に、非常に危険な状況に置かれている。ワクチン接種を希望する教員は最優先にされるべきだ。ただ、予防接種を受けるかどうかを決めるのは各教師の権利だ」とした。
現在、12歳以上の生徒はファイザー/ビオンテック、モデルナ外部リンク製のどちらかのワクチン接種を受けることが可能。アールガウ州は15歳以上の生徒を対象に、学校内での移動式予防接種ステーションを計画していると発表外部リンクした。将来的には12歳以上に拡大する可能性があると言う。シュウェンディマン氏は、接種希望者向けのこの取り組みを歓迎している。
スイスでは教員にワクチン接種の義務はない。イタリアのようにワクチン接種や検査を受けたこと、コロナウイルス感染症から回復したことを示す義務もないという。
スイス流
スイスは、隣国のドイツやイタリアとは異なり、昨年度(8月~翌7月)は休校措置を取らなった。パンデミック後に学校を閉鎖したのは昨年春の1度だけだ。
シュウェンディマン氏は「国民の保護とサービスやビジネス維持とのバランスにおいて、連邦政府は州と協力し、難しいながらも最終的にはかなりの成功を収めた」と話す。
学校では、コロナウイルスの状況に応じた厳しい安全衛生対策が取られている。例えば、昨年10月は連邦政府が介入し、高学年の生徒にマスクの着用を義務付けた(今年の夏休み直前に撤廃された)。
シュウェンディマン氏は「教師と校長は、すべての生徒に継続的な教育を提供するために、並々ならぬ努力をした」と語る。
休暇明けの不安
しかし、スイスではコロナウイルスの感染者が増加している。13日の新規感染者は2097人に上り、7日平均では1534人と前週比で77%上昇した。国内の専門家は、デルタ型がワクチン未接種の人、特に12歳以下の子供たちの間でより急速に広がる可能性をすでに警告外部リンクしている。
連邦内閣は11日の会見で、学校などで行われる定期コロナ検査に関しては、今後も財政援助を続けると表明。各州に対し、学校での定期検査を実施し、子供たちを感染から守るよう呼びかけた、とした。
パンデミックの影は翌年に向けて尾を引きそうだ。しかし、教職員団体はスイスのやり方がこのまま成功裏に終わることを信じている。
その一方で、国内の学校はパンデミックの影響で別の問題にも悩まされている。慢性的な教師不足、デジタル技術の浸透度の差、労災や安全管理面での懸念などだ。
記者会見ではまた、現在進行形の教員不足にも言及した。教師という仕事がより評価され、公平な給与と勤務時間が確保されれば、より多くの人がこの職業に魅力を感じるだろう、と教職員団体側は指摘する。
また、子供たちの成長やカリキュラム上の目標達成に重要だとして、フィールドトリップや1泊2日のキャンプ再開を求めた。これも集団検査を行う理由の1つだ。連邦政府と公共交通機関に対しては、通学に手頃な交通手段を提供するよう求めた。
また、パンデミックの間、若者のキャリア選択が難しくなったことも強調した。スイスでは、義務教育を終えた人のほとんどが職業訓練を選択する。職業訓練を選択する際には、体験入学やキャリアフェアが欠かせない。しかし、パンデミックにより、これらのイベントの多くが中止されたり、オンラインで行われたりした。また、一部企業による有望な実習生の青田買いが激しくなり、生徒やその家族にプレッシャーを与えている。
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