物価高の国、スイス 旅費を安く上げるには?
世界で最も物価の高い国の一つ、スイス。そんなスイスを低予算で旅行するには?
スイスは「高物価の島」。フラン高とあいまって、特に外国人旅行者の財布を圧迫する。それが理由でスイス旅行を見送る人も少なくない。だが、さしあたって「スイスは高い」という現実は変えられない。そこで、できるだけ安くスイスを旅するためにはどうしたらいいか、具体的な情報やヒントをまとめた。
「スイスの山を安く楽しむ方法」について、編集部に寄せられた読者からのアドバイスを紹介する。
「都会に近く歩きやすいのはユートリベルク。チューリヒ市とチューリヒ湖を一望できる」
「メルヒゼー・フルット。頂上まで車で行ける」
「ラロンからケーブルカーでウンテルベッヒへ。ランチ後、歩いて下山。逆コースもいい。ラロンの見どころはリルケの墓がある美しい教会と名物のアプリコットの木」
「バレンベルク野外博物館はファミリーチケットならお得。バーベキュー設備があるのでソーセージを焼けばレストランに行く必要なし」
「トッゲンブルクがおすすめ。トレッキングにもリラックスにも最高!」
「ヴァイセンシュタインではケーブルカーで頂上のパノラマ周遊路まで行ける」
目的地と季節を賢く選ぶ
旅費の節約に一番効果的なのは、人気観光地を避けること。ユングフラウヨッホやピラトゥスの眺めはもちろん壮観だ。だが、登山鉄道や山のレストランは非常に割高で、空港からの交通費や食事代だけであっというまに1人数百フラン(百フラン=約1万1100円)が飛んでしまう。スイスは有名観光地でなくても美しい景色に事欠かない。スイスのファミリー向けサイト(たとえば、こちら外部リンクやこちら外部リンク)で最新観光情報を仕入れてみよう。
夏は冬に比べて食費も宿泊費も安上がり。冬は気温がマイナスになったり雪が降ったりで、麦わらベッドの宿や公園でのピクニックで節約するという手が使えない。冬のスイスでスキーをしたい人には、サン・モリッツ、ツェルマット、ダボスといった大型ウィンタースポーツリゾートよりも、こじんまりとしたスキー場外部リンクやジュラ地方でのクロスカントリースキー外部リンクがおすすめだ。クロスカントリーなら高額なリフト代もかからない。
交通費
スイス連邦鉄道(SBB)では観光客向けに割引切符を販売外部リンクしている。たとえば国内の主な交通機関が乗り放題の「スイストラベルパス外部リンク」。有効期間により料金が違い、例えば3日間有効パスは216フラン(約2万4600円)する。他に120フランで1カ月有効の「スイスハーフフェアカード外部リンク」があり、これを購入すれば、鉄道、バス、船、一部の登山鉄道の運賃が半額になる。なお、スイスでは6歳未満は運賃無料だ。SBBには、6歳以上16歳未満の子どもが保護者同伴で乗車する場合、運賃を無料にしてくれる「スイスファミリーカード外部リンク」というものがある。カードの発行も無料だ。
移動にはできるだけ足を使おう。スイスの都市は比較的小さく、旧市街なら十分徒歩で回れる。無料または低料金で自転車をレンタルできる都市もある(Schweiz rollt外部リンク)。
公共交通機関が無料になったり、登山列車や船の運賃、各種イベントが割引になるゲストカード。価格は良心的かつホテル泊なら無料でもらえる。各地のゲストカードをチェックしてみよう。
ティチーノ州:ティチーノ・チケット外部リンク
東スイスおよびリヒテンシュタイン侯国:オスカー外部リンク
グラウビュンデン州:グラウビュンデン・パス外部リンク
ベルナーオーバーラント地方:リージョナルパス・ベルナーオーバーラント外部リンク
フリブール州:フリパス外部リンク
ヴァレー州:イージーカード・ヴァレー外部リンク
ローザンヌ市:ローザンヌ・トランスポートカード外部リンク
ガソリン代はドイツなど欧州連合(EU)加盟諸国に比べれば安い。ただし、駐車料金は特に都市部で非常に高い。スイスに知り合いがいれば、ビジター用駐車カードを発行してもらうことで、時間制限のある青線の路上駐車場が終日利用できる。カードの購入は警察の窓口や公共交通機関の切符自動販売機、あるいはキオスクなど自治体によって異なり、料金設定もまた6フラン(ベルン近郊ケーニッツ市)、15フラン(チューリヒ市)、20フラン(ジュネーブ市)などさまざまだ。バーゼル市の場合はオンライン購入後、カードを自宅でプリントアウト外部リンクできる。白線の駐車場は時間制限もなく無料だが、最近は数が減り、ほとんど見かけなくなった。
宿泊費
スイスのホテルはやはり高い。1人1泊80〜200フランは当たり前で、高級ホテルなら300〜400フランは覚悟すべき。1つだけホテル泊で得をする点があるとしたら、ゲストカードを無料でもらえることだろう(別枠参照)。複数のホテルが参加する予約サイト「スイスバジェットホテル外部リンク」には、1泊80フラン以下の安い部屋が並ぶ外部リンク。もっと質素でも、という人にはさらに安く上げる方法がある。
キャンプ場:ホテルより安いとはいえ、残念ながらスイスではキャンプ場もそれなりの値段だ。宿泊料は人数、テントかキャンピングカーか、車の有無、そして区画のカテゴリーによって決まる。各キャンプ場で料金格差が激しいので前もってサイトで調べておこう外部リンク。たとえばベルン州ヴァーベルンのアイヒホルツというキャンプ場だと、子供2人連れのファミリーが車で来てテントを張る場合の料金は1泊36.5フラン。さらに安上がりなのはキャンプ場に行かずに野宿するという方法。スイスでは自然保護地区を除いて公有地でのキャンプは基本的に許可されている。とはいえ、付近に禁止の標識がないか注意しよう。農家の牧草地ならば所有者にテントを張ってもいいか頼んでみてもいい。高速道路のパーキングエリアでは車やキャンピングカーでの車中泊も1泊ならばOKだ。
麦わらベッド:スイスの農家に泊まってみよう!ホテルよりも安上がりで、かつスイスの田園生活を垣間見ることができる。ほとんどの宿は朝食付きでテーブルに自家製農産物が上ることも。通常は駐車場代も宿泊料に含まれ、農家によってはランチボックスや無線LAN(WiFi)、送迎などのサービスもある。麦わらベッドの宿泊料金は1人1泊およそ25〜30フラン。アレルギー持ちの人は麦わらベッドの代わりにファミリールームを選べる。オンライン検索と予約外部リンクが可能。
民泊:スイスでもベッド&ブレックファスト外部リンク、Airbnb外部リンク(エアビーアンドビー)、Couchsurfing外部リンク(カウチサーフィン)など民泊の人気が高まっている。ハイクラスな物件もあるが、じっくり探せばかなり安い宿が見つかる。没個性なホテルと違ってその国や人々により親しめるのもいい。
自然の友の家:シンプルな宿で自然を満喫したい人にぴったりなホステルスタイルの宿泊施設「自然の友外部リンク」。宿のロケーションが非常に魅力的で、森のそばや丘の上、スキー場やハイキングエリア内、小川や湖のほとりなどに建つ。それにもかかわらず、大部屋のシングルベッドが1台1泊10〜30フランと格安だ。希望するエリアやアクティビティー(トレッキング、スキー、自転車など)をキーワードにオンライン検索外部リンクができる。
山小屋:スイスアルペンクラブ(SAC)外部リンクが管轄する簡素なアルプスの山小屋は全部で152軒。料金は1人1泊20〜40フラン。
ユースホステル:スイス・ユースホステル協会加盟施設の宿泊料金外部リンクは、大部屋1人1泊あたりおよそ40フラン。多くのホステルで各種優待券を無料配布している。例えばクラン・モンタナのユースホステルに泊まると登山鉄道の1日券を、バーデンでは公共交通機関やプール、美術館、カジノの入場が無料になるシティチケット・バーデン外部リンクをもらえる。
食費
スイス旅行で出費の筆頭といえばレストランでの食事。レストランでなくても食事はできる。スーパーに行き、乾燥肉やパテ、三つ編みパン(ツォップフ)などスイスならではの食材や、使い捨てフォークの付いたパックのサラダを買い込もう。こうすれば、食器がなくても公園でピクニックができる。ちなみにスイスのスーパーでは、閉店前や土曜日になると生鮮食料品が半額に値下げされる。また、大手スーパーチェーンのコープとミグロでは、それぞれ「Prix Garantie」「M Budget」といった低価格ブランドを展開している。ディスカウントスーパーのアルディやリドルに行けばさらに安いが、これらのスーパーは中心部から離れた場所にあることが多い。
スリル満点のウーリ州のロープウェー外部リンク。開放タイプのトロッコ型ロープウェーなので眺めも素晴らしく冒険心も満足させられる。元は業務用だったこのロープウェー外部リンク、今では観光客を登山やハイキングの出発点まで運んでくれる。
チューリヒ、ベルン、ヴィンタートゥール、ザンクト・ガレン、バーゼルなどにある「Ässbar外部リンク」という店。前日のパンやケーキ、ドリンクなどを安く販売し、食品ロス(食品の廃棄や損失)の削減に取り組んでいる。また、個人や企業が冷蔵庫内に余った食料品を保管し、それを誰でも自由に持ち出せる「公共冷蔵庫外部リンク」というシステムもあり、これも食品ロス対策プロジェクトの一つだ。
レストランで食事をするならランチタイムがおすすめ。夜のディナーに比べ、かなり安くつく。また、ミグロ、コープ、マノーラなど大型小売店にあるセルフサービスレストランは値段が安めだ。チューリヒ、ベルン、バーゼル、ルツェルンの各市では「Prozentbuch外部リンク」というクーポン冊子が販売されている。レストランやナイトクラブ、レジャーで使えるクーポン券90枚のセットが45フランだ。これらクーポンのほとんどが、ドリンクやフード、チケットなどを1人分の値段で2人分買えるというもの。
スイスでは水道や噴水からきれいな水が飲めるため、ミネラルウォーターは買わずに済ませることができる。ボトルが空になったら、あちこちにある噴水で水を補充すればいい。ちなみにシュクオール外部リンク、バート・ラガッツ、イヴェルドン・レ・バンやシンツナッハ・バートといった温泉地では、源泉付近の噴水からミネラルウォーターが出る。
博物館
スイスにも、以下の通り無料で見学できる博物館がある。
欧州原子核研究機構(CERN)外部リンク(ジュネーブ州メイリン):世界的に有名。常設展示とガイドが無料。
掘立柱建物ミュージアム外部リンク(ベルン州リュシェルツ):ビール湖周辺で紀元前4000〜800年に発展した初期農耕社会の様子を学べる。入場無料。
スイス劇場コレクション外部リンク(ベルン):常設展示「過去と現在の劇場」。入場無料。
楽器コレクション外部リンク(ルツェルン州ヴィリサウ):セルパン、ダルシマー、モノコードからガークラインリコーダーまで、さまざまな伝統楽器を実際に演奏することができる。開館時間が非常に限られているので注意が必要。
トーマス・マン資料館外部リンク(チューリヒ):連邦工科大学チューリヒ校(ETH)にあり、一般も無料で利用できる。
ジャズ・アーカイブ資料館「Jazzorama」 外部リンク(チューリヒ州ウスター):音源、写真、ポスター、映像やオブジェを使った展示でジャスの歴史を紹介。入場無料。
チューリヒ美術館外部リンク:毎水曜日が入場無料。
ベルン市内の博物館外部リンク:8月中の土曜日(4回)は無料開放。
チューリヒ大学動物学博物館外部リンク:入場料、ガイドおよびファミリーワークショップ外部リンクが無料。
連邦議事堂(ベルン):館内無料見学ツアー外部リンクはスイスの政治に関心のある人におすすめ。
無料体験、無料見学-チューリヒの場合
市内の公共交通機関の運賃は高い。まずは無料自転車貸し出し所「Züri rollt外部リンク」で自転車をレンタルしよう(チューリヒカード外部リンクを購入する手もある)。唯一、ポリバーン外部リンクだけはチケットが必要だ。しかし、このノスタルジックなケーブルカー、運賃はたったの1.20フラン外部リンクと安い上に特に子どもたちに喜ばれる。セントラル駅で乗車し高台の大学地区まで上る。ETHのテラスから見下ろすチューリヒの眺めが素晴らしい。
安上がりのファミリー向けアクティビティについて、読者から編集部にたくさんのアドバイスが寄せられた。
「家族旅行で毎年訪れるヘルギスヴィールのガラス工場『グラージ』。入場無料で展示は見応え十分」
「レッチェンタールは安上がり。1泊後ガステルンタールを通ってカンデルシュテークまでトレッキング。家族で行ったが、とても面白かった」
「ベルナーオーバーラントのベアテンベルクは、ハイキング、トロッティバイク(大型キックスケーター)、チーズ工房見学などお金をかけずにみんなが楽しめる場所」
チューリヒ市建築局が提供しているガイド付き無料散策ツアーに参加して、旧市街外部リンクやその他の地区外部リンクを見学しよう。「フリーウォーク・チューリヒ協会」という団体も無料ガイドツアー外部リンクを行っている。また、チューリヒ大学には、無料か安い料金で一般公開されている見学ツアーや講義、その他の催し外部リンクが多数あるので参加してみよう。
あのシャガールのステンドグラスで有名な元修道院付属のフラウミュンスター(聖母教会)。スイスの教会はほとんど無料で見学できるが、この教会は惜しくも例外。代わりにリマト川の橋を渡ってすぐのグロスミュンスター(大聖堂)に行こう。塔の見学以外は無料外部リンクだ。
チューリヒ湖にはアクセスがよく泳ぎに適した岸辺が多い。湖水浴場のうち、ウンテラー・レッテン外部リンクとオーベラー・レッテン外部リンク、そしてメナーバート外部リンク(ドイツ語で「男性の浴場」の意で、その名の通り男性専用)は入場無料だ。
リンデンホーフ外部リンクはぜひとも訪れたいスポット。古い歴史に彩られたこの広場から見渡す旧市街やリマト川の景色、そして対岸の大学のある丘の眺めが素晴らしい。広場には球技のペタンクに興じる人々がいる。
一般公開されているチューリヒ植物園外部リンク。5万3千㎡の園内に約9千種の植物を有する。広い芝生、池、カフェテリアがあり、ゆっくり過ごせる場所だ。旧チューリヒ植物園外部リンクの方も無料で見学できる。こちらは市の中心にありながら隠れ家的なスポット。ハイライトは中世風のハーブ園。
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(独語からの翻訳・フュレマン直美)
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