ドイツ語圏の日刊紙NZZは、ナイジェリアの犯罪組織「ブラックアックス」の画策にはまり、チューリヒのラングシュトラッセ地区で売春を強いられているナイジェリア人女性を取材した
Keystone/ennio Leanza
ナイジェリアの犯罪組織「ブラックアックス(黒い斧)」はスイスにも100 人以上のメンバーを擁し、人身売買などの活動を広げている。
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ドイツ語圏の日刊紙NZZの特報記事外部リンク(19日付)によると、スイス連邦警察局は今後も国内でブラックアックスのメンバーが増えていくと見ている。
「ナイジェリアの同胞団はおそらく増え続けるだろう」と同紙に語った。
ブラックアックスは1970 年代にナイジェリア南部ベニンシティで学生運動として発足したが、後にオンライン詐欺を専門とする世界的な犯罪ネットワークに発展した。NZZによると、麻薬や人身売買、マネーロンダリング(資金洗浄)も手掛けている。
国際刑事警察機構(ICPO)は10月、ブラックアックスの脅威は世界中で急速に高まっていると警告外部リンクを発した。ブラックアックスや同様の組織は、世界でサイバー金融詐欺など重大犯罪の多くに関与している。
売春を強要されるナイジェリア人女性たち
NZZはブラックアックスを追い、チューリヒのラングシュトラーセ地区を取材した。そこでブラックアックスの画策にはまり売春を強要されたナイジェリア人女性に会った。
NGO 「人身売買被害者ユニット」の共同ディレクター、ステファン・フックス氏によると、何百人もの若いナイジェリア人女性が、ラングシュトラーセに現れ、働き、その後姿を消す。中には未成年者もいるという。
フックス氏は最近、連邦警察庁の委託を受け人身売買とナイジェリアのマフィアに関する報告書を執筆し、ブラックアックスがスイス内に広がっている実態をまとめた。報告書によると、チューリヒのナイジェリア人女性で自発的に売春をする人は1人もいない。女性が 6万~8万ユーロ(約840万~1120万円)の借金を完済するためには、通常5~8年を要する。
こうした状況から逃れるのは至難の業だ。特にブラックアックスは世界中に情報提供者のネットワークを張っている。「女性が世界のどの国に行こうと、常に追跡・監視・捕獲するブラックアックスのメンバーがいる」(フックス氏)
ICPOは10月に14カ国にまたがる大規模な捜査を展開し、南アフリカ、ナイジェリア、コートジボワールの他、欧州、中東、東南アジア、米国で70人以上のブラックアックス関係者を詐欺容疑で逮捕した。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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