米フロリダ州オーランドのナイトクラブで12日、男が銃を乱射し、少なくとも50人が死亡し、数十人が負傷した事件は、スイスでも一斉に報道された。スイスのブルカルテール外相はショックをあらわにするとともに、テロを厳しく非難。有力紙のNZZは、この事件で共和党のトランプ氏が恩恵を得るだろうとみている。
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スイスのディディエ・ブルカルテール外相は13日、国連人権委員会の開幕スピーチで「オーランドで昨日起きたテロ事件を、スイスは強く非難する。被害者の遺族や関係者には心からお悔やみを申し上げる」と述べ、市民と自由を守るためにはテロと戦い、またこれを防いでいかなければならないと話した。
スイス紙の多くは、今回のフロリダでの銃撃事件と、昨年11月のパリ同時テロで89人が死亡したコンサートホール「ルバタクラン」での事件を比較している。両事件では「イスラム国(IS)」が関わっているとされる。
有力紙のNZZは、「両事件を比較することで、フロリダの銃撃事件がどれほどの規模があり、どのような影響を及ぼすのかが理解できる。テロの危機が常に存在し、米国市民が安全を切望していることが、今回の事件で明白になった」と指摘。
さらに同紙は、「11月の米大統領選で共和党の指名獲得を確実にしたドナルド・トランプ氏がこの事件で最も恩恵を得るだろう」と予測する。
トランプ氏は昨年12月に起きたカリフォルニア州サンバーナディノの銃撃事件以降、イスラム教徒の米国への入国禁止を求めていた。「同氏が掲げるような単純な策があれば、難しい問題が解決できてしまうと考える市民が今回の事件をきっかけに増えてしまうかもしれない」と、NZZはみる。
しかし、トランプ氏の主張は「的外れなものだ。なぜなら容疑者は米国市民だからだ」と続け、次のように締めくくる。
「(テロ撲滅のような)問題には熟考された解決策が必要なうえ、忍耐が必要になるかもしれない。今後数カ月間で、米国人がそうした解決策を支持できるかどうかが、明らかになるだろう」(NZZ)
(英語からの翻訳・編集 鹿島田芙美)
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