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ペットと一緒の老後、スイスの団体が支援

ペットはしばしば人間に生きる力を与える
ペットはしばしば人間に生きる力を与える imago/Westend61

高齢者は、亡くなる前にペットを託せる人がいないのであれば、ペットをひとりにするよりはむしろ「永眠させる」ことを選んだ。だが、そのことでペットとともに飼い主自身も少しずつ生きがいがなくなった。「何か手を打たなければならない」とアルトヴェック夫妻とその友人たちは話し合った。そして、財団を立ち上げ、老人ホームに入る飼い主のペットの面倒を見ている。しかし、それだけではない…

スイス西部のフランス語圏で活動する財団ASA外部リンク(支援(Aide)、高齢者(Seniors)、ペット(Animaux))は、ペットの世話が難しい高齢者にあらゆる種類の支援を提供するとともに、ペットの犬や猫の「養子縁組」手続きを助けていると、活動グループを取りまとめるマルティーヌ・ドムピエールさんは説明する。

例えば、高齢や病気のせいでもはや犬を散歩に連れて行くことができない場合、ASAが代行者を見つける。飼い主が病院に行かなくてはならない場合、ASAが一時的にペットの犬や猫を預かる。また、老人ホームに入る飼い主のペットの養子縁組を手配する。

さらに、高齢者の犬や猫が亡くなった場合には、ASAは飼い主のために新しいペットを見つける。

ペットと一緒に過ごす老後

ドムピエールさんは「以前は、後々世話ができなくなることを心配して、新しいペットを探すよりもひとりでいることを選ぶ高齢者が多かった。今では、ASAの支援をあてにすることができると知っている」と強調する。また、いつも猫や犬を飼っていた人にとって、連れ合いを手放すことはどんなにつらいことか説明する。ひとり暮らしの高齢者にとってはなおさらだ。

ASAの活動は拡大した。しかし、高齢者とそのペットのための活動であることに変わりはない。2019年だけで合計130件のサービスを提供し、今では、3つの「支部」(ヴォー、ジュネーブ、ニヨン)を持ち、400人以上のボランティアを抱えるネットワークがある。また、18年に取得したASAの家外部リンクがある。主に預けるのが難しい猫のホテルだ。

ヴィオレン・ケレンバーガーさんと愛猫フィビには親密な愛情の絆がある
ヴィオレン・ケレンバーガーさんと愛猫フィビには親密な愛情の絆がある asajfk.ch

ここで、財団の構想が生まれた11年のニヨンに話を移そう。獣医のジル・アルトヴェックさんと妻のミシュリンさんは、老人ホームに入る準備をするため診療所を後にする飼い主の悲しみに心を揺さぶられた。ペットを託せる人がいない飼い主は、ペットをひとりにするよりもむしろ「永眠させる」ことを選んだ。

ドムピエールさんは「飼い主たちは、ペットの首輪を手に、すっかり落ち込んで帰って行った」と当時を振り返り、「何カ月かすると、飼い主たちはうつ状態になってしまった。人生の大半、自分の家、おそらく晩年の最も忠実な仲間になっただろうペットを置いていく人のつらさは想像に難くない」と語る。

社会的な溝を埋める活動

そこでアルトヴェック夫妻は、他の医療専門家らの支援を受けて、行動を起こすことに決めた。まず支援ネットワークを立ち上げ、それが(個人の寄付によって支えられる非営利の)財団になった。15年には、「ニヨン市の持続可能開発コンクール」の「計画の実現」分野で最優秀賞を受賞した。

ASAは受賞理由を「審査員は財団が行う活動の革新的な性質に引きつけられた。財団の活動が社会的に大きな溝を埋めるのに役に立つからだ」と説明する。

また「ペット・セラピーが高齢者の精神的な充足に良い効果をもたらすことや、財団が高齢者の孤独感との戦いに果たす役割が評価された。また、審査員は、異世代間の交流を生み出し、緊密にする財団の取り組みも評価した」と話す。

ジュヌヴィエーヴ・ドローさんとペットのココ。「ココは私をベッドから起き上がらせてくれる。そのためには…」
ジュヌヴィエーヴ・ドローさんとペットのココ。「ココは私をベッドから起き上がらせてくれる。そのためには…」 asajfk.ch

「私の犬は私を起き上がらせてくれる」

財団のウェブサイトに掲載されている財団の支援を利用した人々の体験談外部リンクからもASAの社会的機能が分かる。例えば、ヴォー州モルジュのジュヌヴィエーヴ・ドローさん(78)の話を紹介しよう。

ドローさんは00年に夫を亡くした。子供達はそれぞれに家庭を築いていたため、ドローさんはひとりになった。しかし、まだ仕事のことが頭にあった。一番つらい時期は退職の時にやって来た。ドローさんは「大きな虚無感に覆われた」という。そこで、子供達はドローさんにレディ・ココットという名のハバニーズ(犬種)をプレゼントしてくれた。17年12月にこの小さい犬が亡くなるまで、ドローさんはココットと一緒に幸せな時間を過ごした。

「(ココットが亡くなり)ショックを受けた。私たちは一緒にいて本当に幸せだった。(その年は)子供たちや孫たちのためにクリスマスの七面鳥を用意する気力さえなかった」。高齢のため、ドローさんは他のペットを飼う勇気も出なかった。十分に世話をできないのではないかと心配した。そこで、米国に住む姉(妹)を訪ねることにした。しかし、その帰路でドローさんは「何の目的も無く、ひどい孤独を感じた」という。

ドローさんはASAのことを耳にし、連絡を取った。今では、少し内気だがとても人懐っこいマルチーズ(犬種)のココとドローさんは毎日を過ごしている。「ココが大好きだ。私に生きる理由を与えてくれる。ココは私を毎朝ベッドから起き上がらせてくれる。外に連れ出してくれる…人生の最後まで一緒にいることができればいいなと思う」

(仏語からの翻訳・江藤真理)

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