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抜群の美貌で、慈善活動に貢献

2016年ミス・スイスで優勝したロリアンヌ・サリンさん(右)にティアラを授与する前ミス・スイスのレティシア・グアリノさん。人道活動への参加も触発した Keystone

女性の外見と内面の美を競うミス・コンテストで、出場者が「価値ある貢献を!」と訴えながらブランド品の「顔」になるのは、よくある話だ。しかし、スイス一の美女に選ばれた2人は、こうした路線と一線を画す。持ち前の美貌を活かして、NGOの活動を社会に発信しているのだ。

 「インドに行くことになった時は怖かったわ。貧しい地域がまだ結構あるから」

 正直にそう告白するのは、2015年ミス・スイスに選ばれたレティシア・グアリノ(24)さんだ。スイスのNGO「Terre des Hommes」から、インド東部で1週間かけて、赤線と呼ばれる売春地区や栄養失調で苦しむ子供たちを支援する現場を訪ねてみないかと打診された。

 最初は恐怖心が勝り、母親に同行を頼んだほど。だが、インド東部コルカタ市に到着し、そこで出会った子供たちの笑顔に触れて、次第に気持ちが落ち着いてくる。

 「コルカタでたくさんの子供たちに会ったわ。学校に行けず、家にトイレがない、医療サービスも受けられない子供がたくさんいることを知ったの。悲惨な状況だけど、自分が『ミス・スイスだ』と話すと、小さな女の子たちの反応がすごかったの」と振り返る。

 インドではミスコンは成功への「登竜門」と見なされることが多い。同国は1990年代以降、4人のミス・ワールドと2人のミス・ユニバースを輩出してきた。ミスコン出場者の多くはインド映画界で女優に転身し、トップ女優になれば社会的影響力を持つとされる。

 快適ゾーンから一歩踏み出すのは、グアリノさんだけではない。2016年ミス・スイスに輝いたロリアンヌ・サリンさん(23)も後に続く。

 今夏のリオデジャネイロ五輪に関するイベントに参加するため、ブラジルを訪問していたサリンさんは、東部セアラ州にある女子少年院に足を運んだ。

 「一見したところシャイな女の子たちに見えるの。でも、彼女たちがどういう経緯で人を殺して、少年院にいるのかを聞いているうちに、見た目とのギャップにショックを受けたわ」と話す。

 ブラジルで「ファベーラ」と呼ばれるスラム街では、ギャングの縄張り争いや麻薬がらみの犯罪は日常茶飯事。そんな生活しか知らない彼女たちが事件に巻き込まれる一方、同じ町の反対側では、環境の恵まれた子供たちが設備の整った学校に通う――。

 サリンさんは、ギャング抗争がブラジルの大きな社会問題であることを知る。ミス・スイスになったことをきっかけに、自分の知らない世界に触れる機会に恵まれて感謝しているという。

 「ミス・スイスは美しいというだけでなく、その美貌を使って、声なき人たちの声を拾うマイクのような役割を果たす大使にもなれるはず。こうした人たちを支援する活動がなぜ重要なのかを、社会に広く伝えていくことができるはず」と語る。

影響を与える

 グアリノさんのインド滞在とサリンさんのブラジルでの体験は、二人の心に今も色濃く残る。

 グアリノさんは現在、ローザンヌ大学の医学部で勉強している。インドで公立病院を訪れた際、基礎的な診断を目の当たりにした。

 「スイスには洗練された医療システムがあり、たくさんのスキャンと検査があるわ。インドで学んだことの一つは、患者に集中して簡単な診断を採用することも必要だということ」と指摘する。

 またグアリノさんは、世界の恵まれない地域で起こっている現実を若い世代に興味を持ってもらうのに、ソーシャルメディアの力は大きいと信じる。

 「インドでは日々の活動を説明するビデオクリップを毎日作ったわ。こうしたコミュニケーションが、NGOの活動を伝える一助になると思ったから」と話す。

 一方、サリンさんもブラジル訪問から、ミス・スイスが与える潜在力を実感する。

 「ミス・スイスが何を代表しているのか、自問することは大切。私にとってミス・スイスは、強い女性で責任感があり、彼女の言動が人々に影響を与える可能性があることを知っている人間だということだ」と強調する。

 仏語と美術史を専攻するサリンさんは、慈善活動で支持者を集める方法について、NGOにこんなアドバイスをする。「衝撃的な画像を見たくない人は多い。共感と支持を集める方法を見つける必要がある」

 前出のNGO「Terre des Hommes」は、過激派組織「イスラム国」(IS)が支配するイラク北部のモスルでも人道活動を展開している。それに関するプレスリリースを公表したところ、閲覧数は300件程度。だが、サリンさんのブラジル訪問は1300件に達したという。

 「Terre des Hommes」の広報担当者イバナ・ゴレッタさんは、ミス・スイスを自分たちのプロジェクトに巻き込んだことで、プロジェクトに社会の関心が集まったと見ている。

 ゴレッタさんは「イラクや他の紛争地域からの写真があふれる中で、NGOの活動を伝えていくのは難しい。でも、ミス・スイスのような写真写りのいい有名人が訴えて、メディアが注目すれば、人々の関心を再燃させることができる」と話している。


スイスのビューティコンテストの歴史を紐解くと1920年代までさかのぼる。「ミス・スイス」として開催されるようになったのは1951年になってから。

参加するには、①スイス国籍者で国内在住②年齢18~28歳③身長168センチ以上の3つの条件を満たす必要がある。2016年ミス・スイスで優勝したロリアンヌ・サリンさんの年収は12万フラン(約1378万円)。

近年は、ミス・スイスへの世間の関心が薄れ、過渡期を迎えている。2011年は公共放送が視聴率低下を背景にテレビ放映を打ち切りに。12年には資金不足で中止に追い込まれている。

(英語からの翻訳・あだちさとこ)

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