新型コロナウイルスの感染者が急増する中国からの渡航者に対し、スイス連邦内閣は11日、現時点では水際対策としての検査義務付けを行わないことを閣議決定した。
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内閣は閣議後の声明外部リンクで、現在の感染状況が、中国からの渡航者にコロナ検査を義務付ける「正当な理由に現時点ではならない」と述べた。欧州連合(EU)は中国での感染拡大を受け、加盟国に検査義務付けを勧告。一部の加盟国が検査義務を再導入した。スイスはEU非加盟だが、加盟国間の自由な移動を定めたシェンゲン協定に加盟しているため、EUの勧告に足並みを揃えるかどうかを検討していた。
内閣は声明で「スイス国民は現在、新型コロナウイルス感染症の重症化を避けるだけの十分な免疫をつけている」と説明。多くがワクチンを接種済みか、感染から回復した人で、中国における感染増加がスイス国民や医療機関へのリスクを増やすとは考えにくいとした。
また最新の知見によると中国で流行しているのはオミクロン変異株の亜種で、スイスでは既に感染が広範囲に広がり、感染者数が減少している種類だと指摘した。
内閣は「スイス国内では新型コロナウイルス感染症が広範囲に広がっている。中国から空路直行便で入国する渡航者は比較的少なく、検査を義務付けたところでウイルスの流行拡大に与える影響はほとんどない」と述べた。また「懸念される新種の変異株が発生するリスクについても、中国が他の地域より高いわけではない」とした。
スイスでは人口(870万人)のうち、約97%がワクチン接種や感染を通じ抗体を保有する。現在、スイスでは新規感染者数は減少を続けている。これは今年からコロナ検査が原則自己負担になり、検査を受ける人が減ったことも影響している。
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中国の感染拡大で不安広がる
中国でコロナ感染が急速に拡大していることを受け、米国、オーストラリア、一部の欧州諸国を含む10カ国以上が、中国からの渡航者に対し出国前検査と陰性証明提示を義務付けた。中国が公表した感染実態のデータについて過少報告だとの批判が上がったことに対し、中国側は反発している。
EUは4日、中国から空路でEU圏内に入国する乗客に対し、出国前検査と陰性証明提示を義務付けるよう加盟国に勧告。中国発着便の全乗客はマスク着用が望ましいとした。また加盟国政府に対し、中国からの入国者への無作為検査のほか、経由便を含む中国からの便が到着する空港で汚水検査の実施・追跡を行うよう推奨した。
米国は5日から、中国・香港・マカオからの渡航者に新型コロナ検査を義務付けた。国籍やワクチン接種の有無を問わず、空路を利用する2歳以上の全員が対象で、出発前2日以内の検査と陰性証明提示が必要となる。米国疾病予防管理センター(CDC)は、これらの国々への渡航を再考するよう国民に呼びかけた。
世界保健機関(WHO)の欧州地域事務局長は10日、中国での感染拡大について、欧州地域には「差し迫った脅威はない」としたが、より多くの情報が必要だと述べた。
スイス連邦内閣は声明で、国内の感染状況を注視していると述べた。政府は空港エリアや主要観光地などの汚水処理施設の監視のほか、義務となっている報告システム(検査数、新規感染者数、入院者数、死亡者数)、開業医の任意参加型報告システム、汚水サンプルや入院患者から得たウイルス変異株の追跡などを通じ感染状況を把握する。また、中国発の全ての直行便で、汚水の確認を行うかどうかを検討している。
スイスでは昨年9月、新規感染者数と入院者数が再び上昇したが、12月には減少に転じた。検査費用の公費負担が終了したため、検査機関で確認された新規感染は今年初めから急激に減少。連邦内務省保健庁(BAG/OFSP)はそのため「検査の実施件数が減少し、統計に反映されない感染件数の増加が予想される」としている。
英語からの翻訳:シュミット一恵
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