賞味期限切れでも「もっと長持ち」 新表示がスイスで登場
スイスで廃棄される食品の3分の2は実際にはまだ食べられる状態のものだ。ゴミ箱行きにする前に消費者が自分の目で見極めるよう、新しい表示方法が登場した。
スイスの食料品には「消費期限」と「賞味期限」の表示が法律で義務付けられている。「消費期限」はその日付を過ぎると食品が劣化する可能性が高いことを意味し、「賞味期限」はその日付までは美味しさが保たれることを示す。だが賞味期限が過ぎると、実際に食べられるかどうかを吟味することなく捨ててしまう人が多い。
こうした食品ロスを減らすために、スイスの食品会社は新たな表示を追加した。ドイツ語でoft länger gut、フランス語でsouvent bon après、「もっと長く美味しいことが多い」というフレーズだ。余った焼き菓子やサラダ、ビュッフェの残り物を割引価格で販売するモバイルアプリ「Too Good To Go外部リンク」のスイス支部が始めた取り組みだ。
新表示方法には、消費者が自分の五感を使って安全かどうかを判断するよう促す目的がある。見た目や臭いは大丈夫か?変な味はしないかを確かめるには、軽く一なめするだけで十分だ。未開封のクラッカーや缶詰などは賞味期限から数カ月経っても食べられることが多い。例えばいったん開けたジャムでも、汚れたナイフや指で汚染されなければ問題ない。
この表示方法を考案したのは、「To Good To Go」スイスのマーケティング部長デリラ・クルトヴィッチ氏。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)で「人々は『賞味期限』の日付に依存しすぎて、自分の感覚を信用していない」と指摘した。
これまでのところ、スイスの食品企業約10社がこの表示方法を採り入れた。乳製品大手のエミーは「変な臭いや味がせず、カビのような見た目の変化もなければ、普通は食べても大丈夫だ」と説明する。オーガニックスムージーを販売するビオッタ外部リンクは、新しい表示が「消費者が『賞味期限』とは何かを考えるきっかけ」になるとみる。ビスケット・クラッカー製造のHugは、製品が「無駄なく喜んで消費される」と期待する。
カーボンフットプリント
スイス連邦環境省外部リンクによると、スイスでは毎年260万トンの食品廃棄物が発生する。その少なくとも3分の2は、廃棄時点またはその前の時点で食べられる状態、つまり廃棄を防げるはずのものだという。残り3分の1は骨やバナナの皮などそもそも食用に適さないもの。海外から輸入される食品は「国外の食品ロス」となりこの統計には計上されていない。
連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は、2017年に廃棄された食品280万トンは、スイスで発生する食品関連の二酸化炭素(CO2)の4分の1を占めると試算した。
環境省は「製造・マーケティング過程の末端で捨てられる食品が多いほど、環境への負荷は大きくなる」と指摘する。「費やされる資源はより多くなり、輸送や製造、保管、包装により多くのCO2が発生する」。環境への影響にとどまらず、全国で年間50億フラン(約5500億円)、1人当たり600フランのお金が無駄になっている。
スイスには期限切れ近い食品を社会福祉施設などに届ける「スイスの食卓(Schweizer Tafel)」という取り組みもある。2001年に始まり毎日16トンもの食品を救っているこの取り組みは今年、助けの必要な人々の生活水準の向上に貢献した活動に贈られるJ.E.ブランデンベルガー財団賞を受賞した。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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