スイスの中毒事情
スイスではアルコール中毒、ニコチン中毒に加えて、電子たばこ中毒やオンラインギャンブル中毒も増えている。
中毒問題を専門とする公益財団「アディクション・スイス外部リンク」は今年の報告書で、最も問題の大きい合法・違法成分や、年齢別の使用経験を尋ねた調査結果をまとめた。
スイスでは女性の5%が1日2杯以上のアルコール飲料を飲む習慣がある。65~74歳だと6%を超え、75歳以上の男性の41%は毎日お酒を飲む。
1回の食事に4~5杯のお酒を飲む「過飲」も、若い女性を中心に増えている。15~24歳の女性で月に1回以上過飲する人は2007年は12%だったが、17年には24%になった。
16年にスイスの病院が受け入れた急性アルコール中毒患者は1万1500人。その約半分はアルコール依存症と診断された。アルコール依存症患者の平均年齢は46歳で、7割は男性だ。
スイス人の4人に1人は喫煙者だ。5人に1人は毎日、10人に1人は時々吸う。18年のたばこの販売本数は92億本と、17年の95億7千万本からわずかに減ったが、手巻きたばこの販売は増えた。毎日吸う人の6割は禁煙したいと思っている。
人口の3%は嗅ぎたばこや噛みたばこなどの無煙たばこ製品を使っている。調査では、15歳男子の6%は過去1カ月に嗅ぎたばこを吸ったことがある。
電子たばこが18年にスイスで合法化されて以来、愛用者や販売店が広がっている。ただ統計データはまだない。
昔ながらの水たばこ(シーシャ)は、15歳男子の14%が過去1カ月に使ったことがある。
スイスでは大麻を紙で巻いたジョイントが1日50万本以上消費されている。15~64歳の4%は過去1カ月に大麻を使ったことがある(2017年)。20~24歳に限るともっと多く、男性の14%、女性の6.5%で使用経験がある。
アディクション・スイスは、向精神作用を含まないCBD製品が2016年に合法化され、市場に出回るようになってから利用者が増えたと指摘する。
コカインやエクスタシーを使ったことのある人は人口の1%未満に過ぎないが、欧州各都市の中ではスイスの使用量は多い。監視機関によると、治療を求める人の数はゆっくりだが着実に増えている。
スイスで精神刺激薬を使ったことのある人は1.5%(2018年)。20~24歳では3.3%で、その3分の1以上は処方箋なしで入手していた。薬物の大半は集中力を高めるものだ。
オピオイド鎮痛剤の販売額も増えている。業界団体インターファーマによると、14~18年の間に18%増加。ただ常用者の数は13年の2.5%から16年は1.8%に減ったという。
スイスで睡眠導入剤に依存している人は推定35万人。
アディクション・スイスによると、スイス人の約3%はギャンブルのやりすぎで、0.2%は中毒だ。17年の調査では、過去1年にギャンブルをしたことがある人は55%だった。さらに16%は頻繁にギャンブルをしているという。18年のスイスのくじ・賭博事業の売り上げは28億7千万フラン(約3200億円)と、前年より約2%近く増えた。カジノ収益は3%増の7億400万フランだった。
オンラインギャンブルをする人の平均支出は月122フラン。アディクション・スイスは日常的にオンラインゲームができる環境があり、社会的に統制されていない場合、オンラインギャンブルの危険性は極めて大きくなると警告する。スイスでは2019年、カジノによるオンラインギャンブルが合法化された。
スイス人の1~4%、つまり7万3千~29万人は、インターネットの使い方に問題がある。連邦政府の調査によると、16~25歳がインターネットに接続している時間は平均で1日4時間。40~55歳の2.5時間を大きく上回る。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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