21日、サル痘の感染者がスイス国内で初めて確認された。しかしスイスでは現在、欧州連合で(EU)認可済みのサル痘に利用できる天然痘の治療薬「テコビリマット(tecovirimat)」は承認されていない。ドイツ語圏の日刊紙NZZ日曜版が報じた。
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抗ウイルス薬「テコビリマット」は通常、重症患者に投与される。しかしNZZの報道外部リンクや連邦内務省保健庁(FOPH)のサル痘に関する特設ページ外部リンクによると、現在、スイスでは承認されていない。
また、サル痘に対する予防効果があるとされる第3世代の天然痘ワクチンも承認されていない。サル痘に特化したワクチンはない。
医薬品承認機関「スイスメディック(Swissmedic)」はNZZ日曜版に対し、天然痘ワクチンの申請は近年、受けていないと述べた。サル痘と近縁の天然痘は根絶されたと考えられていたため、製薬会社は申請をしていなかった。
大衆紙ブリックの報道外部リンクによると、国内初の感染者となった男性の症状は軽く、現在は自宅で隔離されている。
リスクは「低い」と政府
FOPH予防接種推奨・管理対策部門長のセリーヌ・ガーディオル氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)に対し「今のところ感染拡大のリスクは低いとしているが、疫学的なデータはまだ限られている」と述べた外部リンク。だが、「他の国々と同様、スイスでも感染者が増える可能性はある」。
同氏は、サル痘ウイルスのヒトへの感染力は中程度で、感染者は通常、軽症で済むとされているが、発熱、頭痛、発疹(やがて膿疱に変化)などの症状が出た場合は、速やかに医師の診断を受けることが重要だと述べた。
FOPH公衆衛生局のリンダ・ナルテイ副局長によると、スイスの保健当局は現在、状況を注意深く監視し、国際的な保健当局や専門家と連絡を取り合っている。
同氏は「現時点では、新たなパンデミックに直面しているという証拠はない」としながらも、「引き続き状況を注視していく必要がある」との見解を示した。
WHOの懸念
一方、世界保健機関(WHO、本部・ジュネーブ)は21日、サル痘流行地域に関わりのない12カ国から、92人の感染、28人の感染疑い例があったと報告した。サル痘はこれまで主に西アフリカや中央アフリカの一部で発生してきた。
WHOは流行地域以外での監視を拡大すれば、今後、さらにサル痘の感染例が増えるとの見通しを示した。
(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
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