生きたひよこの細断 スイスで禁止
2020年1月1日から、卵の生産に役に立たないという理由で、オスのニワトリのひなを生きたまま細断して殺処分することが禁じられる。スイス連邦議会外部リンクは今年10月、動物福祉政策の一環で動物保護法改正案を可決した。
2019年9月20日に英語版で配信された記事を翻訳・編集しました。
多くのNGOは、動物の権利に対し、欧州連合加盟国の先を行く判断だと支持した。オスのひなを細断して殺処分する慣行は、すでに国内では行われていない。だが議会はこれを正式に禁止し、殺処分は二酸化炭素ガスを使用しなければならないとした。
スイスは動物権利に関する厳しい法規制を持つが、この慣行が例外的に認められたのは10年以上も前のこと。10月23日、正式な禁止に向け、票が投じられた。
国民議会(下院)の委員会は9月に行われた議会で「卵、肉の生産のためだけに種を飼育する傾向は、動物を単なる物体に変えてしまう。これが、生きたオスのひなを細断するという不条理な慣行につながっている」と指摘した。
スイスの卵生産者協会ガロスイス外部リンクは、こうした慣習は時代遅れであり、法改正を支持すると表明した。実際、めんどりを養鶏農家に提供する国内4カ所の主要鶏卵場は、数年前にこの慣習を取りやめたという。
しかし、スイスでは毎年約300万羽のオスのひなが商業的な理由で飼育価値がないとみなされ、ガスにより殺処分されている。その半数以上が、動物園の動物のえさなどに加工されている。
代替策
農業セクターは政界の方針を重く受け止める。ガロスイスのダニエル・ヴルグラー会長は 「代替策に向け真剣に取り組んでいる」と話す。 「消費者、生産コスト、利用可能なリソース、動物福祉、倫理、生態系などのすべての要素を考慮して、できる限り最良の解決策を見つけたい」
スイスでは現在、2つの代替策が試験的に導入されている。1つはオスのひなをすべて肉の生産に回すこと。もう1つは卵と肉の両方の市場で、ひなの使用方法を見直すことだ。
しかし、ガロスイスは、そのような生産方法を国際レベルで適用する前に、解決すべき実用的な問題があると話す。ヴルグラー氏は 「現時点で、それはニッチな生産方法にすぎない」という。
代替策はより多くの資源が必要で、持続可能ではない、という。さらに、ほとんどの消費者は、産卵鶏の肉を買わないと強調する。
養鶏農家は、動物福祉の問題に尽力し、商業利用のための持続可能な解決策を待っているとヴルグラー氏は話す。「生まれたその日から、その動物を尊重することは私たちにとって非常に重要だ」
動物福祉
NGO団体「ワールド・アニマル・プロテクション」が作成した指標と、「スイス・アニマル・プロテクション」が実施した研究によると、スイスの動物福祉の水準は高い。
スイスは動物に対し比較的人道的で、厳しい法規制、政府のサポートのほか、特別な消費者向けのラベルがあり、生産者に動物の権利を尊重した飼育方法を推奨している。
スイス連邦政府、産業界、消費者は、動物の飼育環境改善に向け、継続的に努力している。ひなの細断の禁止は、その1つの例だ。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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