チューリヒ州は今春から、4~9歳児を対象にデータ保護やプライバシーの問題について学ぶ時間を設ける。ヨーロッパでも先進的な取り組みだ。
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チューリヒ州は若者が個人情報の共有に関する問題意識が低いことを問題視。州の情報保護官外部リンク、ブルーノ・ベリスヴィール氏の依頼を受け、チューリヒ教育大学外部リンクが教材を開発した。
当局によると外部リンク、今年春に試行授業を行い、秋からは州の教員養成コースに組み入れられることになる。
基本的人権であるプライバシーは、社会の自由と民主主義の一環だ。だが幼い子供たちはプライバシーとは何であるか、また個人情報を公開すると何が起こるかを学ばなければならない。ベリスヴィール氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)の取材にこう語った外部リンク。
抽象的な話題をシンプルに
授業は「秘密は許される」と題され、5回にわたって子供たちに見聞きするもの全てが公共の所有に属するわけではないことを教える。良い秘密と悪い秘密の違い、つまり自分限りにとどめるべきことと、関係当事者のためになるなら大人に報告すべきことの違いを説く。
教材は、短い漫画など遊び心のある方法でこうしたメッセージを伝える。一部の教材は既にウェブで公開され(ドイツ語)外部リンク、例えば小さい子供向けには友達に自転車に乗れないことを打ち明けられ、他の誰にも言わないで、と言われた場合は「良い秘密」であることを説明する。
大きめの子供向けには、ソーシャルメディア上で自分がどのような存在であるか、他人に関連した情報をどう共有するか、について教える。下の図のように、友人の写真を撮ってそれらを共有するとどうなるか、という内容だ。
チューリヒ州では4~6歳児が義務教育として幼稚園に通う。4歳児向けでプライバシー問題に焦点を当てた教材は「スイスでは間違いなく初めてだ。我々の知る限り、ヨーロッパやおそらく世界でも初めてだ」(情報保護官室)という。
チューリヒ教育大と情報保護官室は今後も共同作業外部リンクを続ける。現在は高齢者向けのプライバシー教材を開発中だ。
(英語からの翻訳・ムートゥー朋子)
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