今年、スイスに移住するならこの都市に
国外在住者のネットワーク「インターネーションズ」が発表した2019年版「外国人にとって住みやすい街ランキング外部リンク」にはスイスから7都市がランクインした。いずれも20位以内で、特に安全性や域内交通、環境が高い評価を受けた。
しかし外国人がスイスに移住するのはそう簡単ではない。移住しやすさでは、チューリヒやベルンは世界最低レベルに位置する。生活費の高さは減点要素だが、「個人資産と住宅事情」や「都市での働きやすさ」は都市によって評価が分かれた。
世界82都市を調査した今年のランキングでは、どこが最も良い移住先とされたのか?1位は台北で、クアラルンプール、ホーチミン、シンガポール、モントリオールが続いた。ワーストにはパリ、ラゴス、ミラノ、ローマが並び、最下位はクウェート市だった。
では入賞したスイスの7都市を詳しく見てみよう。
8位 ツーク
ツークはスイスで最も住みやすい都市というだけではなく、世界で最も生活の質が高いと評価された。実際、域内交通に不満を唱えた回答者は1人もおらず(世界平均は19%。以下、カッコ内はいずれも世界平均)、環境の質(17%)、身の安全(19%)も満点だった。ツークは地域経済の状況も91%が満足しており、世界のトップ(66%)。ただ職の安定は82都市中44位と振るわなかった。
ツークは「移住のしやすさ」は58位。回答者の35%が地元の文化に馴染みにくいと感じ(20%)、31%は地元住民が外国人居住者に対して友好的でないと考えている(19%)。
10位 バーゼル
バーゼルに住む外国人は生活の質を高く評価する(6位)。特に身の安全は93%、地元交通システムは98%、環境の質は93%と満足度が高い。
しかし他のスイス都市と同じく、移住しやすさは62位と低い。「歓迎されていると感じる」項目も71位。「地元住民が友好的」と「友好・社交性」はともに63位だった。
「個人資産と住宅事情」(14位)や「地域の生活費」(43位)はスイスの都市では最も高い評価を得た。外国人の78%(57%)は自身の経済状況に満足している。
36位 ローザンヌ
ローザンヌは2019年の住みやすい街ランキングで、「都会生活の質」(14位)以外はおおむね平均的な評価だった。94%の外国人は環境の質に満足しており(71%)、世界6位。身の安全も94%と満足度が高い。
一方、移住のしやすさでは53位、親しみやすさ・社会性では77位に。住まいを見つけるのが難しいと考える外国人が66%(同32%)と多く、容易さで世界73位に甘んじた。見つけるのが難しいだけでなく、家賃の支払いに苦労する外国人は60%にのぼる(同44%)。
38位 ベルン
スイスの首都ベルンは都会生活の質が世界7位と高評価を得たが、移住のしやすさは79位と最低レベル。他のスイス都市と同じように、環境の質97%、身の安全93%、域内交通97%は満足度が高い。
移住のしやすさについてはスイス最低の79位。世界最下位のクウェート市、パリ、コペンハーゲンに次いで移住しにくい都市だ。58%(35%)がベルンで友達を作るのは大変だと感じている。ベルンでの社会生活に不満を抱えている人が37%と、世界平均の27%を上回る理由の一つだ。
都市での働きやすさは44位で、外国人は長所・短所の両方を感じている。職の安定に満足する人は71%(59%)と世界6位で、経済状況は89%(66%)が前向きにとらえている。一方、仕事そのものに満足している人は58%(64%)、地元の雇用機会が不足していると考える人は37%(27%)で、「仕事とキャリア」項目は世界75位だった。
41位 チューリヒ
チューリヒは暮らしにお金がかかる街という評判を確立させている。「地域の生活費」で68位、「個人資産と住宅事情」で61位に入った。この2項目でチューリヒより評価が低いのはジュネーブだけだ。外国人の51%(32%)が住居を見つけるのが難しいと答え、家賃に手が届かないと考える人は62%(44%)にのぼる。
チューリヒは生活の質でツーク、東京、台北に次ぐ4位に立った。チューリヒに住む外国人の95%は非常に安全だと感じ、92%は環境の質に満足している。
だが移住のしやすさは73位。35%は社会生活に不満を感じている。52%は友達を作りにくいと感じ、36%は地元住民が外国人居住者に対して友好的でないと考えている。
53位 ルガーノ
ルガーノは安全で安定した都市とみられている。「安全・政治」項目でツーク、シンガポールに次ぐ3位に選ばれた。ルガーノに住む外国人の97%は安全だと感じており、73%が個人的にもとても安全だと考えている。
だが職の安定についてはこうはいかない。31%が不満を唱えており、満足度は世界74位だった。地元の経済状況も24% がマイナス評価で世界58位、スイスで断トツ最下位だった。外国人の31%(19%)は仕事に不満があり、55%が地元の雇用機会が不足していると考える。
69位 ジュネーブ
同ランキングでスイス最下位だったジュネーブ。スイスの都市はどこも物価が高いとみられているが、ジュネーブは「個人資産と住宅事情」、「地域の生活費」項目で共に世界75位とワースト10に食い込んだ。生活費に不満を持つ人は71%と世界平均38%の倍近い。家賃に手が届かないと考える人は78%、見つけるのが難しいと考える人は70%にのぼる。
移住のしやすさでも70位と評価が低い。「友好・社交性」項目ではチューリヒ76位、ローザンヌ77位、ベルン78位、ジュネーブが79位とスイス4都市が並んだ。ジュネーブ居住者の42%は社会生活に不満を抱き、クウェート市とストックホルムに次ぐワースト3だ。
一方、ジュネーブの生活の質は60%(36%)が高評価を与え、世界16位に立った。街の安全性には90%、環境の質には89%、交通インフラには91%が満足している。
東京もスイスも似たもの同士?
日本から唯一ランキング入りした東京と、スイス各都市を比べると、住みやすさの傾向は比較的似ているといえる。
生活の質の評価の高さ、治安や政治の安定性は、東京もスイスの各都市も上位につけた。健康、環境の質は、東京がスイスのどの都市よりも順位が上だった。
移住のしやすさはどちらの国も評価が低い。現地語の難しさがやはりハードルが高いようで、地元の人がフレンドリーでないという意見も目立つ。
スイスはワークライフバランスが非常に良さそうなイメージがあるが、ランキングではツークを除き、軒並み下位だった。東京も評価が低かった。
swissinfo.ch日本語版のフェイスブック外部リンクで「スイスに住んでみて感じたメリット、デメリット」を尋ねたところ、学校や仕事でスイスに7年住んでいたという女性は「安全で、街が綺麗。不必要な華美な装飾ではなく、自然の美しさと香り、人が真面目で安心感がありました。スイスの料理や食事も合っていました」と評価は上々。
別の男性ユーザーは、都市から1時間程度の移動で遊びに行ける場所や施設が100以上あること、近隣国の物価を安く感じられることがメリットだという。しかし、自動車のエンジンを停車中に止めないと怒られる、また、英語表記が少ないのが残念だとコメントした。
エクスパット・インサイダー2019
「外国人にとって住みやすい街ランキング」はインターネーションズが毎年公表する「エクスパット・インサイダー(Expat Insider)」を基にしている。2019年は2万人を超える回答者の声が集まり、外国に住み働く人の最も広範な調査の一つだ。
2019年の調査対象は世界82都市で、①都会生活の質②移住のしやすさ③都市での働きやすさ④個人資産と住宅事情⑤地域の生活費――の5大項目を調べた。住みやすい街ランキングは①~④をもとに、2020年に移住すべき・しないべき都市を順位づけた。
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(英語からの翻訳編集・ムートゥ朋子)
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