スイスの11の州で10日、新学年がスタートした。国内では高等学校でのマスク着用を義務付ける州もあるが、こうした新型コロナウイルス感染予防措置は州で温度差がある。
このコンテンツが公開されたのは、
新学期開始を前に、複数の州が7日、相次いでコロナ感染予防措置を発表した。その多くが、1.5メートルのソーシャルディスタンシング(社会的距離)が保てない場合、高等学校・職業訓練校で学ぶ生徒にマスク着用を義務付ける、というものだ。
スイスでは夏休み明けに新学年がスタートする。新学期開始日は州によって異なる。連邦制のこの国では教育は州の管轄。コロナ対策も州の管轄だ。
5月11日のロックダウン第2弾緩和で、小中学校など義務教育機関の休校が解除された。高等教育課程は厳しい感染予防措置の下、6月8日に再開。多くの学校は夏休みまで、少人数の対面授業とリモート学習を組み合わせた手法を取った。
マスク義務
フランス語・イタリア語圏の公教育州間会議は7日、域内統一の計画を発表。衛生対策が守られれば高校での対面授業を全面再開しても良いとした。1.5メートルのソーシャルディスタンシングを維持できない場合は、年長の生徒と教職員はマスクを着用する。
これまで統一の措置を求めていたフランス語圏の教職員組合(SER)は、同会議の発表を歓迎した。
ジュネーブ、ヴォー、ヴァレー(ヴァリス)州も7日、それぞれ方針を発表。ベルン州もそれに続いた。ドイツ語圏の州では、ルツェルン(最も厳しい措置をいち早く発表)、アールガウ、シャフハウゼン、バーゼル・ラントの各州で、1.5メートルのソーシャルディスタンシング(アールガウ州では教室内の2.25平方メートルに生徒1人)が取れない場合、15歳以上の生徒にマスク着用を義務付ける。
義務化しない州も
ただ高等学校でのマスク着用を義務付けない州も。スイスの通信社Keystone-SDAによると、チューリヒ、バーゼル・シュタット、ザンクト・ガレン、グラウビュンデン、トゥールガウ、ツーク、オプヴァルデン、シュヴィーツ、ソロトゥルン、ウーリ、アッペンツェル・アウサーローデンなどの州では、そうした計画はない。
ただバーゼル・シュタット、グラウビュンデンなど一部の州では、1.5メートルの距離を保つことが難しい実験室での授業中にマスク着用を勧める。
義務教育課程の小中学校は、今のところ義務付けられていない。
批判
州によってアプローチが異なるのに対し、現場の教師らからは批判が挙がる。ドイツ語圏のスイス教職員連盟(LCH)のダグマー・レスラー代表は、マスク着用義務に大きな支持が集まっていると感じたと話す。同氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)に、教室内でソーシャルディスタンシングを強いることは難しいと指摘。教室が満員の場合、マスクは感染不安の緩和に役立つと語った。
スイス・バカロレア学校教員協会のルシウス・ハルトマン会長も、授業に影響が出たとしても、高等教育課程でのマスク義務化は賛成という。同氏はSRFに「コミュニケーションが難しくなり、マスクを7時間も着けることで集中力は低下するかもしれない」としたが、クラスの感染不安を取り除けるメリットが上回ると述べた。
おすすめの記事
トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
このコンテンツが公開されたのは、
ドナルド・トランプ前大統領が13日に銃撃された事件を受け、スイスのヴィオラ・アムヘルト大統領は「政治的な暴力は容認できない」と訴え、一日も早い回復を祈った。
もっと読む トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
おすすめの記事
ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部を中心に発生した大規模な洪水の影響を受け、ツェルマット~ディセンティス間を結ぶマッターホルン・ゴッタルド鉄道(MGB)は、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休するとの見通しを明らかにした。
もっと読む ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
おすすめの記事
スイスが対ロシア制裁リストを拡大
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは対ロシア制裁リストを拡大した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いていることを受け、欧州連合(EU)が決定した変更を採用した。
もっと読む スイスが対ロシア制裁リストを拡大
おすすめの記事
AIによる失業懸念、スイスは最低
このコンテンツが公開されたのは、
人工知能(AI)は日々の仕事に影響を与えている。スイスでは、多くの人たちが仕事を含めAIを使っているが、この新しいテクノロジーのせいで仕事を失うと心配している人は比較的少ないことが最新の調査で分かった。
もっと読む AIによる失業懸念、スイスは最低
おすすめの記事
核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの市民団体「核兵器禁止を求める同盟」は、国連核兵器禁止条約への加盟を求めるイニシアチブ(国民発議)を立ち上げた。必要な署名が集まれば国民投票が実施される。
もっと読む 核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始
おすすめの記事
スイス民族衣装祭りに観光客10万人
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・チューリヒで6月28~29日、連邦民族衣装祭りが14年ぶりに開催され、延べ約10万人の観客が訪れた。
もっと読む スイス民族衣装祭りに観光客10万人
おすすめの記事
クレディ・スイスのスイス法人が消失
このコンテンツが公開されたのは、
スイス二大銀行だったUBSとクレディ・スイスの現地法人の合併が1日、完了した。今後スイス国内でも「クレディ・スイス」の看板撤去が進むことになる。
もっと読む クレディ・スイスのスイス法人が消失
おすすめの記事
スイス人の平均寿命、過去最高に 男性は82.2歳
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの平均寿命は2023年時点で女性85.5歳、男性82.2歳と、過去最高記録を更新した。
もっと読む スイス人の平均寿命、過去最高に 男性は82.2歳
おすすめの記事
連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内閣はスイス国立銀行(SNB、中銀)の新総裁に予想通りマルティン・シュレーゲル副総裁を任命した。ペトラ・チュディン氏が新たな理事会メンバーとなる。
もっと読む 連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命
おすすめの記事
職場のワンコ、従業員の満足度を向上 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
犬は職場の雰囲気を良くし、飼い主だけでなく他の従業員にとっても良い影響を与える――スイスの労働者を対象に実施された調査は、職場に犬がいることの効用を強調する。
もっと読む 職場のワンコ、従業員の満足度を向上 スイス調査
続きを読む
おすすめの記事
スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。
もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
おすすめの記事
スイス滞在中に注意すべき州ごとのコロナ制限措置
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国内では、新型コロナウイルスの封じ込め策として公共交通機関でのマスク着用が義務づけられた。一部の州はさらに厳しい措置を講じている。州別の措置をまとめた。
もっと読む スイス滞在中に注意すべき州ごとのコロナ制限措置
おすすめの記事
ポストコロナ、スイスの空港はどうなる?
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナによるロックダウンの緩和で空路便が徐々に増加していることを受け、スイス国内の空港と航空会社は新たな安全対策を設けた。
もっと読む ポストコロナ、スイスの空港はどうなる?
おすすめの記事
学校でマスク義務化の動き スイス各州で感染予防に
このコンテンツが公開されたのは、
スイス中央部のルツェルン州は、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、高等学校および職業専門学校でのマスク着用を夏休み明けから義務化する方針を発表した。スイスの教育機関としては初の義務化となる。ジュラ州や他の州も同様の対策をとる可能性がある。
もっと読む 学校でマスク義務化の動き スイス各州で感染予防に
おすすめの記事
スイス式民主主義、防護マスク製造にも
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの第2波が近づいている。創意豊かなスイス人2人が立ち上げた「保護マスクイニシアチブ」は、保護力が証明された認定マスク製造の分散化・民主化を目指す。
もっと読む スイス式民主主義、防護マスク製造にも
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。