スイスの視点を10言語で

コロナウイルス検出キットを開発 スイスの病院

コロナウイルス
コロナウイルス感染がアジア拡大している Keystone / Mast Irham

中国で新型コロナウイルスによる肺炎が相次ぐ中、ジュネーブ大学病院が同ウイルスの検出試薬キットを開発した。

世界保健機関(WHO)は23日、緊急委員会を開いたが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言は見送った。

WHOが緊急事態を宣言したのは、2009年の豚インフルエンザの世界的な大流行、2016年のジカウイルス、エボラウイルス(2014年の西アフリカの一部、2018年以降のコンゴ共和国)など、まれなケースだ。

新型コロナウイルス感染による死者は、これまでに少なくとも25人確認され、感染者は800人以上に上る。北京や上海などの大都市を含む中国の省の半数以上に感染が広がっている。日本、韓国、台湾、タイ、オーストラリア、米国でも感染例が報告されている。

スイスの研究者は、このウイルスが人から人に感染することを確認した。また、ウイルスは容易に変異し、自己防御もできるため、専門家が注意を呼び掛ける。

中国では、旧正月(春節)に伴う大型連休が24日始まった。連休中は数億人が国内外を旅行するため、保健当局は感染の拡大を懸念している。

中国からの帰国者に

試薬を開発したジュネーブ大学病院の感染病担当部局長ローレン・カイザー氏はフランス語圏のスイス公共放送(RTS)に「ウイルスは特定された。ウイルスの完全な遺伝情報が私たちのところにある」と語った。

試験キットは、綿棒で喉の奥か鼻の中をこすり、標本を採取するだけ。中国からの帰国者で、咳、発熱、筋肉痛、呼吸困難といった風邪のような症状がみられた場合に使用できる。

カイザー氏は「症状が限定的であれば、患者は通常の治療を受ける。懸念すべきなのは患者が肺炎を発症するケースだ」と話す。現在、この新しいウイルスに対するワクチンや治療法はないと語った。

SARS

新種のウイルスは昨年末、中国で最も人口の多い省の主要都市、武漢の市場で違法に取引された野生動物が感染源だとみられている。 人口1100万人の都市、武漢の交通機関は閉鎖され、事実上の封鎖状態になった。数時間後には、近隣にある人口約700万人の黄岡市が同様の措置を発表した。

カイザー氏は、このウイルスが「SARS(重要急性呼吸器症候群)と70%類似している」と指摘する。中国南部の広東省を起源とした非定型性肺炎のSARSは2002年から2003年に約8千人が感染。774人が死亡した。

カイザー氏はRTSに「複数の国で大きな流行を引き起こしかねない、あらゆる要素と成分がある」と語った。

ワクチン開発には年単位の期間を要するが、今のところ、ヒトの間でウイルス感染がどれくらい続くかははっきりしないという。カイザー氏は「流行は、発生と同時に消えることもある」と話した。

スイスの空港:対策なし

米国など一部の国では、発生源の武漢省から帰国する旅行者に対し、空港での監視措置を強化した。ただ中国当局は現在、同地域からの渡航を禁止している。

スイス連邦内務省保険局は23日、声明で「武漢から欧州(ロンドン、パリ、ローマ)への航空便はあるが、欧州疾病予防管理センターは、ウイルスの流入リスクは中程度だとしている。スイスに対しても同様だ」とコメントした。

声明では、東南アジア諸国のような対策をスイスが講じる必要性は現時点でない、とした。

スイスのアラン・ベルセ連邦内務相は21日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で、「(パンデミックの発生には)万全な準備が整っている」と強調。エボラ危機のときと同様、パンデミックを防ぐ国際的な取り組みを支援する用意はできていると言った。

おすすめの記事
マスク姿の人

おすすめの記事

新型肺炎、スイスが国際的な対応策呼びかけ

このコンテンツが公開されたのは、 中国で感染が拡大する新型コロナウイルスによる肺炎をめぐり、スイスのアラン・ベルセ内務相は、スイスは緊急時の体制は整っているとし、パンデミック(世界的大流行)を防ぐための国際的な取り組みを支援する用意もできていると語った。

もっと読む 新型肺炎、スイスが国際的な対応策呼びかけ
​​​​

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む
ベルジエ報告

おすすめの記事

「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱

このコンテンツが公開されたのは、 スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。

もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
整備中の飛行機

おすすめの記事

スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠

このコンテンツが公開されたのは、 スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。

もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
署名の入った箱

おすすめの記事

国民投票に向けた署名がまたも偽造

このコンテンツが公開されたのは、 医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。

もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
エリック・ヘンニさん

おすすめの記事

スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

このコンテンツが公開されたのは、 1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。

もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部