スイスの小中学校、幼稚園といった義務教育機関は5月11日に休校が解除される予定だ。だが親たちの不安は尽きない。2メートルのソーシャルディスタンシング(社会的距離)を教室内でどう維持するのか、衛生対策はどうするのか、など課題が山積みだからだ。
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ルツェルン州教員連盟のアレックス・メッサーリ代表はドイツ語圏のスイス公共放送外部リンクテレビ(SRF)に「子供たちと学校で会えるのを楽しみにしている。彼らがオンライン学習をどんなふうにやっていたのか関心がある」と語った。
ただはっきりしないことがいくつかあるという。
「何人の子供が来るのか。いつ来るのか。一緒に登校してくるのか。私たち教師はどこで教えたらいいのか」。特に難しいのが、ソーシャルディスタンシングの維持だ。
国内の義務教育機関(幼稚園、小学校、中学校)は3月中旬から休校が続く。休校開始から約2カ月後となる5月11日に再開が予定されている。
大学進学を希望する子供たちが通う高等学校、大学、専門学校は6月8日に再開される予定。ただし、27日から始まった第1段階のロックダウン(都市封鎖)緩和によって感染者が急増すれば再開を遅らせる、と政府は強調する。予定通り5月11日に休校を解除するかは、政府が4月29日に決める。
なぜ今?
政府は休校解除の理由について「子供たちは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主要な媒介者ではない」ためとしている。これは国内の感染症専門の小児科医に聞き取りを行った結果だという。ただ子供たちが本当にこのウイルスの媒介者ではないのか、専門家の意見は今も割れている(下記の記事参照)。
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政府は休校解除の方針は崩さない考えだ。コロナ対策を率いてきた保健庁のダニエル・コッホ氏は22日の会見で「子供たちは何のリスクも負わずに学校に戻れる」と繰り返した。
教師:答えのない質問
ドイツ語圏のスイス教職員連盟(LCH)も学校の再開に不安を感じている。授業中、休憩中、トイレ休憩、学童保育などの場で、子供と教師をどう感染から守ればいいのか。同連盟は国が学校での実用的な防護対策を設けるよう訴えている。
声明外部リンクでは、ウイルス感染が重症化しやすい高リスクグループの人には適切な防護対策を取るか、対面の授業を免除するなどの措置が必要だと指摘。障害児には特別のサポートが必要だという。LCHによると、経済的に恵まれた家庭の子供とそうでない子供の間の格差が、この数週間のオンライン学習中にさらに拡大した。
>>長期の休校は子供たちにどんな影響を与える?
>>オンライン学習で子供たちの勉強時間に差?
フランス語圏の教職員連盟(SER)はもっと手厳しい。同連盟は、休校解除の最終決定が出る29日、国が生徒と教師の防護対策を明確にすべきだと訴える。
同連盟は声明で「防護対策なしで学校は再開できない」と述べた。
生徒の保護という名の下に突然、学校の閉鎖を命じた政府が「科学的要素が特段変化してもいないのに」学校の再開を決めるのは「支離滅裂だ」と批判した。
SERは「学校が新たな感染の媒介所になってはいけない」と警告している。
親の不安
スイス国内では親が自宅勤務、子供も家で学習―という環境が1カ月以上続いている。学校の再開を喜ぶ親もいれば、不安だという人もいる。
チューリヒ大学病院の神経病理学の権威、アドリアーノ・アグッツィ・チューリヒ教授は「私はコッホ氏が何を言おうと、自分の子供たちを学校に行かせるつもりはない」と自身のツイッターに投稿した。
スイス公共放送(SRF)によると、国内では学校再開に反対する請願書外部リンクがインターネット上で複数出ている。特にフランス語圏で反対が強い。
ただ正当な理由なく義務教育機関に子供を行かせない親には罰金が科される外部リンク可能性がある。
自身も教師であるメッサーリ代表は、子供たちに適切な授業を行える場合にのみ、学校を再開すべきだと考える。再開が適切なのかはっきりしないうちに強行突破しようとするのは「疑問が生じる」。教師や親は、政府次第だと言う。
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