ハワイでバッテリーの修理などを行っていたスイスの電動飛行機ソーラー・インパルス2のチームは14日、北米に向けて「出発モード」に切り替えたと発表した。
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「全行程中の最難関区間だといわれた名古屋からハワイへの飛行は5昼夜続き、その間にバッテリーが過熱。異常をきたした。その修理と再飛行のための準備を全て完了して今、出発モードに切り替えた。空のよいコンディションが確認できれば、明日にでも出発する」と、ソーラー・インパルスのチームはプレスリリースで発表した。
今回、北米への飛行を担当するのは、操縦士のベルトラン・ピカールさんだ。ただし、目的地は北米としているだけではっきりとは決まっていない。「昨年の経験から、安全に飛べる航路を選ぶことが最優先。そのため、候補はカナダ・バンクーバー、米・サンフランシスコ、ロサンゼルス、フェニックスと、四つもある」という。その後は、ニューヨークを目指す。
ハワイでの長逗留で得たもの
ソーラー・インパルス2は昨年7月3日、名古屋からハワイまでの約8900キロメートルを117時間52分間のノンストップ飛行で飛び、新記録を打ち出しハワイに着陸した。その間の操縦を担当したアンドレ・ボルシュベルクさんは、その後のハワイでの長逗留について、こう語っている。
「我々は、ソーラー・インパルスのプロジェクトを通じて、困難から新しい局面へと展開していく場面を何回も経験してきた。今回は、昨年7月から今日まで約9カ月もハワイに留まることで、チームの中に、世界一周飛行を続行しようという強い精神・意思が形成されたと思っている。まず、精神的なものが作られ、その後で新しい技術が生まれることはよくあるものだ」
こうしてチームがまとまり、技術的にも準備を整えたソーラー・インパルス2は、今年の2月末からこの4月までに計13回のテスト飛行を行っている。新しく機体に設置された、過熱からバッテリーを守るための冷却装置がうまく機能するかといったことを点検するためだった。
「化石燃料を使わず長時間のノンストップ飛行を行うソーラー・インパルス2は、飛行史で初の記録を作るだけではない。エネルギーの歴史においても新記録を打ち出すのだ」とベルトラン・ピカールさんは、再びプレスリリースの中で強調している。
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ソーラー・インパルス・プロジェクトは、太陽エネルギーを主に再生可能エネルギーの普及促進をサポートするために立ち上げられた。中国の重慶市と南京市に途中着陸したのは、世界でも最も人口の多い中国で、太陽エネルギーのプロジェクトに対する意識を高める狙いがあったからだ。
この世界一周飛行は2015年3月9日、アブダビでスタートした。太陽エネルギーだけを動力とするこの飛行機は四つの大陸と二つの海を横断し、およそ500時間を掛け、3万5千キロの距離を飛行する。
その中でも極めて危険だといわれているのが、太平洋と大西洋の横断飛行だ。
そのためパイロットであるアンドレ・ボシュベルクさんとベルトラン・ピカールさんの二人は、太平洋上でコントロールを失うという最悪の事態を想定した訓練を出発前に行った。
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