スイスの視点を10言語で

温暖化、スイス農業にプラス?マイナス?

大量のレモンを選別する男性
米フロリダ州で収穫されるようなレモンが、いずれスイスでも採れるように…? Keystone / Lynne Sladky

気候変動に伴う異常気象は、スイス農業にどんな影響を及ぼすのか?スイス農家組合外部リンクは、異常気象により国内農家に影響が出ており、何らかの対策を講じなければならないと訴えた。一方で、デメリットばかりではないと指摘する声もある。

同組合の理事長で連邦下院議員のマルクス・リッター氏は、同日ベルン近郊の農場で開かれた記者会見外部リンクで「すぐに行動を起こさなくてはならない」と訴えた。

リッター氏は、霜やひょう、暴風雨、長期の雨や日照り、夏の干ばつが農家に与える影響は拡大していると述べた。例えば昨年の夏は極めて降雨が少なく、ジャガイモやトウモロコシ、小麦、動物の飼料など穀物に大きく影響した。

組合は、水の使用量がより少なくて済む、環境に優しい作物の生産を促進したい考えだ。

だが農業自体も気候変動の一因だ。温室効果を持つメタンガスは、牛のげっぷやおならからも排出されている。リッター氏は「これをゼロにするのは難しい」と語った。

組合は二酸化炭素法の改正を支持する。法改正は温室効果ガスの排出を減らし、気候変動に関するパリ協定へのスイスの貢献を促す内容だが、現在連邦議会で審議がストップしている。

温室やトラクターに使用される燃料を含むと、農業から発生する温室効果ガスは全体の13%を占める。

イチジク?

ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)のクリスティアン・フォン・ブルク記者は、気候変動がスイス農家に与えるのはデメリットだけではないと解説外部リンクする。暖かい気候により、これまで国内では栽培できなかったアンズやイチジク、キビ、大豆も育つ可能性がある。ワイン用のブドウの育成もよくなりそうだ。

フォン・ブルク記者は「これらすべては農業の役に立つ。 既に多くの農家は実験を始めている」と述べた。

一方、農家は気候変動の進行が速いことに不安を感じている。リッター氏は「このペースが続けば非常に温暖で乾燥した気候になる可能性がある」と警告した。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

笑顔で握手を交わす閣僚

おすすめの記事

2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦議会は11日、カリン・ケラー・ズッター副大統領兼財務相(急進民主党、60歳)を新大統領に選出した。新副大統領にはギー・パルムラン経済・教育・研究相(国民党、65歳)が選ばれた。

もっと読む 2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
健康保険カード

おすすめの記事

医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査

このコンテンツが公開されたのは、 大手金融機関UBSが12日発表した調査「心配事バロメーター」によると、依然として医療費と健康保険料の高騰が最大の懸念事項だったことが分かった。環境と年金も懸念事項にあがっている。

もっと読む 医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
連邦工科大学の校舎

おすすめの記事

スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、留学生の授業料をスイス人学生の3倍に引き上げ、2025年秋学期から1学期当たり2190フランにすることを決めた。

もっと読む スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
ベツナウ原発

おすすめの記事

世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの電力会社アクスポは5日、世界で最も古いベツナウ原子力発電所の稼働を2033年に終了すると発表した。33年までの運転継続にかかる追加事業費は3億5000万フラン(約600億円)を予定している。

もっと読む 世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
アルコール検査

おすすめの記事

スイスのドライバー、2割が飲酒運転

このコンテンツが公開されたのは、 欧州など39カ国のドライバーを対象にした調査で、スイスでは2割超が飲酒運転をしたことがあると回答した。

もっと読む スイスのドライバー、2割が飲酒運転
銃口

おすすめの記事

狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部

このコンテンツが公開されたのは、 先月29日午後、スイス西部ヴォー州で64歳の男性が狩猟中に死亡した。イノシシを撃とうとした 猟友会のメンバーに射たれた。

もっと読む 狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
サルコ

おすすめの記事

自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束

このコンテンツが公開されたのは、 今年9月にスイスで初めて使われた自殺カプセル「サルコ」について、連邦内閣は、当分の間、立法措置は必要ないとの見解を示した。サルコ運営団体は2日、身柄を拘束されていたフロリアン・ヴィレ代表が釈放されたと発表した。

もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
金塊

おすすめの記事

スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの金融誌ビランツがまとめた長者番付2024年版によると、スイス在住の富豪トップに輝いたのは、仏高級ブランド・シャネルのオーナー家族の1人、ジェラール・ヴェルテメール氏だった。上位の顔ぶれはほぼ前年と同じだが、香料メーカーのフィルメニッヒ(Firmenich)創業家が初のトップ10入りを果たした。

もっと読む スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
ポイ捨てされた空き缶と小鳥

おすすめの記事

スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・ポイ捨て防止コンピテンスセンター(IGSU)の年次アンケート調査によると、「スイスでは多くのゴミが適切に処理されていない」と考える人は16%にとどまった。

もっと読む スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部