スイスの失業手当をもらえるのは誰?
スイスで失業保険を受給する条件で、知っておくべき注意点をまとめた。
失業手当は有職者が毎月納める雇用保険料から支払われる。保険料は雇用者と被雇用者の折半だ。2019年のスイスの失業率は2.3%で、過去最低を更新した。
だが国の失業率は地域就職支援センター(RAV/ORP/URC)に登録した失業者しか計算に入れていない。失業手当をもらう資格のない人は、この失業者リストから抜け落ちる。一方、世界労働機関(ILO)が計算する失業率は、求職していない失業者も含めた労働人口を分母とする。
スイスでは昨年、10万7千人が失業手当を受給した。
失業手当を申請できるのは、①スイスに居住②労働許可証がある③過去2年間に12カ月以上雇用されていた④500フラン(約5万6千円)以上の月収があった――人だ。自営業者は給付の対象外。
地域就職支援センターに登録すると、就労支援員が新しい仕事を見つけるのをサポートしてくれる。失業することになったら一刻も早く登録するのが望ましい。働いている間は、通知期間の一部として雇用者に監督義務があるからだ。
失業手当をもらうには、上述の申請条件を満たしたうえで、さらにやらなければならないことがある。例えば就職カウンセラーとともに定期的に求人をチェックし、月に10~12件の求人に応募したことを証明しなければならない。履歴書の書き方などを磨く研修にも参加が必要だ。
通常は失業前の1年に得ていた月収平均の70%で、子供がいれば80%になる。月収平均の上限は1万2350フラン。
手当は「日当」として、週5日勤務の換算でもらえる。過去2年間に12カ月就業し雇用保険料を納めていた場合、260日分の日当がもらえる。25歳未満で子供がいない場合は200日分だ。
18カ月以上就業していた場合は400日分に増える。高齢労働者や障害者は120日分が加算される。最大2年間はもらえることになる。
だが面接をすっぽかしたり、ぴったりなはずの仕事を蹴ったり、十分な数の応募書類を送らなかったり、求職活動を辞退したりすると、担当カウンセラーに日当を減額されることがある。軽い違反事項は日当1~15日分、重大違反なら最大60日分の減額になる。
できるが就職支援センターに収入を報告しなければならない。報告しなければ日当が減額されるか、刑罰が科される。
失業から3カ月後以降なら可能だ。その後なら就職支援センターへの報告や求職活動を1週間休んでもいい。もっと長い旅行に行きたければ、手当の下りない無給期間を申請しなければならない。いずれにしても、遅くとも2週間前には担当カウンセラーに旅程を伝えること。怠るとこれまた日当減額や刑罰の対象になる。
その場合は生活保護を受けることができる。
長期失業に対しては多くのスイス人が不安を抱える。特に採用されにくい高齢労働者たちだ。
2020年春、求人をスイス在住者で埋めるための新しい施策がスタートする。また政府は失業手当の受給資格がなくなった60歳以上の失業者に対する追加給付を導入する方針だ。
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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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