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死刑廃止に取り組むスイス

死刑執行直前の風景
2016年、イランでは少なくとも567人が処刑された。写真は殺人犯モハマド・ビジェの処刑を執行する直前のイラン人警察官 Reuters

スイスは2025年までに世界中から死刑をなくしたいと考えている。ディディエ・ブルカルテール前外相を中心に、その実現に向けて本格的に取り組み出した。国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルはこれを野心的な目標だと言う。

 アムネスティで死刑問題を担当する法律家のアラン・ボヴァールさんは「ディディエ・ブルカルテール氏は死刑廃止に向けて迅速に動き出し、彼の優先政策に据えた」と話す。

 このようなスイス外交の取り組み外部リンクは、いずれ何らかの成果をもたらすかもしれない。今年春にアムネスティが公表した死刑に関する報告書外部リンクの内容は、そんな期待を抱かせるものだ。16年に世界で執行された死刑の総数は1032件。前年の1634件に比べると37%の減少だ。ただし、中国では死刑執行数は国家機密とされているため、その数は含まれていない。

 死刑廃止国は増えており、アムネスティによると現在104カ国に上る。1977年はわずか16カ国だった。一方、死刑存置国は23カ国。これらの国に向け連邦外務省は12年、全世界で死刑を廃止するための戦略を策定した。

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 それによると、スイスは死刑の廃止、あるいは少なくとも一時停止を存置国に訴えていく。それが不可能な場合は、死刑が科せられる犯罪の構成要件を減らすよう求める。主な活動の場は二国間外交だが、国連(UN)などの国際組織でも働きかけを続けている。 

 また、英NGOのデス・ペナルティ・プロジェクト外部リンクやスペインに事務所を置く死刑廃止国際委員会(ICDP)外部リンク、フランスを拠点とする死刑廃止世界連盟(WCADP)外部リンクなど、民間や学術界とも連携している。

スイスで最後に一般市民が処刑されたのは1940年。ただし、軍刑法で死刑が公式に廃止されたのは92年になってから。

 死刑廃止に向けて尽力しているのは連邦外務省だけに限らない。14年にはおよそ10人の連邦議会議員がアムネスティへの賛同を表明した。アムネスティの広報担当によると「死刑判決を受けた人物の恩赦をその国の政府に求めるなど、この非公式のグループからは繰り返し協力を得ている」 

 連邦議会議員らは昨年、マレーシアの国会議員にサポートを要請。それが奏功し、マレーシア国会からの照会を受けた政府が初めて年間の死刑執行数を公表した。

 だが、これはまだ初めの一歩に過ぎない。そして、この一歩を中国はまだ踏み出していない。アムネスティによると、中国の死刑執行数は16年も世界最多で、その数は他の国々の執行数の合計を上回るほどだった。

スイスの取り組みを担う連邦外務省 

スイスインフォが今年春に行った取材に対し、連邦外務省は当時、書面で次のように回答した。「この分野におけるスイスの特筆すべき取り組みは、国連人権委員会への決議案の提出だ。14年、15年と同様の決議案を17年9月にも提出した」。決議案の目的は「死刑がいかに人権侵害をしているかをはっきりと示すこと。とりわけ肌の色などの特徴による差別的な死刑執行を特に重要視した」

この決議は、ベルギー、ベニン、コスタリカ、フランス、メキシコ、モルドヴァ、モンゴルなどと共同で起草され、賛成27、反対13、白票7で可決された。

(独語からの翻訳・小山千早)

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