スイス西部ヴォー州で8日、13.8キロ(約2億2千万円相当)のコカインが押収され、国際麻薬密売グループのメンバー13人が逮捕された。また7日にはドイツ国境に近いスイス北東部トゥールガウ州で計14キロのヘロインが見つかり、外国人3人の身柄が拘束された。
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13.8キロのコカイン
スイス税関、オランダ、ドイツ警察などが、アフリカ西部出身の国際麻薬密売グループがヴォー州ヴヴェイとイヴェルドン・レ・バンで麻薬取引を行っているとみて調べていた。
ヴォー州警察の発表外部リンクによると、逮捕されたのは28歳~51歳のナイジェリア国籍が6人(うち5人がスイス在住)、ルーマニア国籍が2人、ポーランド国籍が2人(いずれもオランダ在住)、ドイツ在住のドイツ国籍が2人、スイス在住のアルバニア国籍の女が1人。大半が欧州出身で、それ以外は密売ルートを管理していたという。
警察はコカインのほか約1700万円相当の現金を押収。13人はいずれもスイス国内で身柄を拘束されている。
警察はこのグループが「数百キロ」のコカインをスイス国内に持ち込んだとみているが、詳しい時期や量は分かっていない。14キロに上る大量のコカインが押収されたのは、ヴォー州では珍しいという。
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≫1億円ビジネスの合法大麻
スイス国内のコカイン使用は欧州で際立って多い。欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)が昨年、欧州19カ国56都市の汚水サンプルから違法薬物の使用量を分析した調査外部リンクによると、スペインのバルセロナが欧州一「コカインの使用が多い都市」だった。ただ上位10都市のうち五つはスイスの都市で、2位がチューリヒ、4位がザンクト・ガレン、5位がジュネーブ、8位がバーゼル、9位がベルンだった。
スイス北東部では2億円相当のヘロイン
またスイスの警察は7日、ドイツ国境付近のトゥールガウ州クロイツリンゲンでの捜査で、200万スイスフラン相当(約2億2200万円)のヘロイン計14キロを押収したと発表した。
昨年11月には、国境警備員がドイツから入国したトルコ人の男(42)が所有する乗用車内からヘロイン4キロを発見。これを受け、スイスの警察が独ケルン市警察との合同捜査により、先月下旬にアルバニア人(48)と別のトルコ人の男(43)を逮捕した。このトルコ人の男はスイス国内に乗用車を保持しており、車内から10キロのヘロインを押収したという。
トゥールガウ警察によると、この2人のトルコ人は、国際麻薬密売組織のメンバー。3人とも身柄を拘束されているという。
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「タイとミャンマーは、麻薬使用者の健康問題を重視する新たな麻薬政策に門戸を開き始めた。これまで麻薬に対して厳罰主義を貫いてきた両国にとっては、注目すべき進展だ」。国際NGO薬物政策国際委員会の議長を務めるルート・ドライフス元スイス大統領は、東南アジア訪問を終えて、そう語る。
ドライフス氏は、薬物政策国際委員会の議長を2016年から務める。「1971年にニクソン米大統領(当時)の主導で始まった国際的な『麻薬戦争』は、麻薬の不正取引拡大と薬物使用の増加を招いて完全な失敗に終わった」とする報告をもって、同委員会は11年に世界的指導者や有識者によって設立された。
その発足以来、各国では麻薬対策で様々な動きがあった。今回タイ、ミャンマー訪問を終えたばかりのドライフス氏が、東南アジアの麻薬政策動向を語った。
スイスインフォ: タイ、ミャンマー両政府はどの程度まで踏み込んだ麻薬政策の改革を考えていますか?
ルート・ドライフス: 両国では、薬物使用者の間で注射器の共有によるHIVやC型肝炎の感染が広がっており、政府に保健政策を向上させようという意欲が見られる。感染の予防対策として薬物使用者に清潔な注射針を配布したり、社会復帰を促すための出会いや相談の場が設けられたりしている。重症の中毒患者にはメタドン服用治療も始まっている。両国は特に、効果が見られない上に人の品位をおとしめてきたこれまでの厳罰主義を改めようと考えている。
薬物所持・使用への刑罰が厳しすぎると認識されるようになり、タイ、ミャンマーでは、今では麻薬類の所持・使用の罪で死刑は執行されていない。死刑になる犯罪の種類を減らそうという試みもある。また、超過密で犯罪の学校と化している刑務所の現状にも目が向けられるようになった。収監を減らすためにも、刑罰の軽減が検討されることになった。
それから両国は新たな麻薬政策を進めるため、まずキャンペーンなどを通して国民に広く情報が行き渡るよう努めている。50年近く続いてきた、これまでの傲慢で強硬な麻薬禁止政策に慣れた人々が、政府の新しい方針を理解できているとは限らないからだ。
01~06年の間にタイでは、現在フィリピンのドゥテルテ大統領がしているような「麻薬戦争」が繰り広げられていたことを思い出してほしい。裁判を受けることなく警察に殺害された人が数千人にも上った。だが麻薬取引も消費量も減ることはなく、反対に増加の一途をたどった。政府もそれを認めないわけにはいかなかった。
スイスインフォ: 東南アジア諸国連合(ASEAN)の他の国もタイやミャンマーに追随する可能性がありますか?
ドライフス: そもそも、麻薬のない社会を実現することは可能なのだろうか?麻薬撲滅という目標は、スイスの薬物法に今でも記されている。あらゆる薬物から解放された国を目指すASEAN諸国にとっても、麻薬のない社会は目標だ。だが、それを実現できるといまだに信じることができるのだろうか?
私が訪問してきた国々は、麻薬の存在しない社会の実現など幻想にすぎないと理解し始めている。人間は常に、精神を活性する向精神物質に惹かれてきた。気分を良くしたり苦痛を軽減したり、その人の世界観や認識を変えたりする物質に手を出す人を、いったい何の権利があって処罰できるのか?アルコールやたばこ、チョコレートやコーヒー、あるいは医薬品のように精神的な作用を持ちながらも、文化的に受け入れられているものもあるというのに。
人間には向精神物質が必要ないなどという幻想を、どうして国家の暴力で追求しようとするのか?一体なぜ向精神物質の一部は容認されて、その他は生産や所持が規制され、禁止されるのか?
違法薬物を規制する国際協定は、各国がそれぞれの問題に合った対策を立てたり、薬物使用者を処罰しない自由を認めるほか、違法に禁止薬物を入手する人たちにも手を差し伸べる公衆衛生対策を、批准国に対して認めている。だが一方で、合法の向精神物質と同じように、麻薬や薬物の製造や市場を国が管理することを認めてはいない。
スイスインフォ: タイやミャンマーに見られる麻薬政策の転換は、今後他国にも広まると思いますか?
ドライフス: この動きは国際的なものだ。中国やイランのように極端に抑圧された国でも、薬物中毒患者への代替療法や感染症の予防対策などが発達してきた。
一方で、フィリピンのように後退している国もある。日本やロシアのように強硬に禁止の立場をとる国もある。特にロシアは、情け容赦ない麻薬禁止政策をとり続けており、国民に悲惨な影響が出ている。(薬物使用による)HIV感染が拡大している唯一の国でもある。また刑務所内を始めとして、抗生剤のきかない結核症が広まっている。弾圧的な麻薬政策のせいで、薬物を取り巻く環境が非常にリスクの高い闇の中へと追いやられてしまっているからだ。
そうとは言え、多くの国は新しい麻薬政策を模索している。
スイスインフォ: スイスは麻薬政策において、長い間パイオニア的な存在でしたが、今はどうですか?
ドライフス: スイスは、エイズの拡大と薬物乱用の問題に直面して、革新的な麻薬政策に切り替えた。今では多くの国がスイスと同じような政策をとっている。
スイスは効果的に公衆衛生政策を発展させてきたが、今後もさらにその対策と措置を充実させ、必要とする全ての人が衛生サービスを利用できるようにしなければならない。また、新たなリスクを持つ合成麻薬も対策の対象に入れる必要がある。
一方でスイスは、麻薬市場の規制と、麻薬を非犯罪化する点では遅れをとった。麻薬使用に罰金を科すだけにしても、十分な非犯罪化とは言えない。
それから、世界では弾圧的な麻薬取締りは常に恣意的に行われており、とりわけ貧困層や貧しい地域、マイノリティーがその標的になっているということを忘れてはならない。法が恣意的に適用されているようならば、法律を変える必要もある。
だがスイスは、(薬物使用者の)健康と安全や(薬物使用に対する)罰則の均衡にばかり注意しすぎていて、そのような問題が埋もれている。麻薬政策にもっと劇的な改革を求める政治的圧力もいつの間にか消え、政策の見直しを求めるイニシアチブ(国民発議)も国民投票で否決されてきた。そういうこともあり、政党はこの問題を再び議論に持ち出そうとしなくなっている。
それでも、大麻の栽培や市場は(禁止ではなく)管理・規制されるべきであり、禁止は効果がなく無意味だという判断は、国民にとっても多くの点で十分な利点があると考えている。薬物政策国際委員会(Global Commission on Drug Policy)の五つの優先事項
過酷で有害な処罰を伴う禁止政策よりも人々の健康と安全を優先させる。
モルヒネのように合法・違法の両方で使用される薬物を入手可能にする。このような薬物は部分的に使用が禁止されていることから入手が困難になっており、そのために無駄な苦痛を強いられている人たちを救うのが目的。
薬物所持・使用を非犯罪化する。そうすれば刑務所の過密問題も解消できる。
非暴力的でマイナーな薬物使用者ではなく、麻薬密売と組織犯罪の取り締まりを強化する。
タバコやアルコール、医薬品がそうであるように、麻薬市場を規制し政府の管理下に置く。
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