経済協力開発機構(OECD)の最新の調査によると、スイスは生活者の税負担が最も少ない国の一つに数えられる。
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先日OECDが発表した加盟34カ国間の租税負担率に関する比較調査によると、スイスの単身世帯における税負担率が、加盟国の中で6番目に低いことが明らかになった。さらに、核家族世帯(共働きの両親と子ども2人の世帯)が負担する所得税率に関しては4番目に低い結果となった。
同調査の対象となったのは、単身世帯と核家族世帯の所得税、資産税、社会保険料(雇用者・被用者負担)。医療費や居住費などの固定費は対象外とした。
スイスの税負担は国際比較で低いことが今回の調査で分かったが、スイスでは国・州・地方自治体レベルで各税率が規定されるため、実際の税負担率はスイス国内でも居住地域によって大きく異なってくる。
OECD加盟34カ国の平均所得税率は、平均的な収入の従業員の場合35.9%。最も高かったのは55.3%のベルギー、最も低かったのは7%のチリという結果になった。
また、2010年から15年までの5年間で、OECD加盟国の所得税率は全体で1%、スイスは0.2%増加した。さらに、加盟国において全体的に上昇傾向にあった税負担は2011年以降、比較的安定していることが同調査で示された。
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毎年値上がりを続ける健康保険料はスイスの中流階級の家庭を中心に経済的困窮をもたらしている。(RTS/swissinfo.ch)
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スイス 持株会社の税制優遇措置廃止へ
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将来的には税制の抜け穴を全て封じるという点で世界の主要国は一致している。それには新しく世界共通の基本ルールを導入する必要がある。国際的な流れに逆らえなくなったスイスも、今後はこれまで外国企業に与えていた税制上の特権を廃止する方針だ。
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200万フラン(約2億6千万円)以上の遺産相続に課税することで富を再分配し、年金制度の財源を確保する。これが左派の立ち上げたイニシアチブ(国民発議)だ。だが中道派や右派は、新税制では特に家族経営の企業にとって税負担が増大し、その存続が危機にさらされかねないとして反対している。新たな相続税の導入案をめぐり6月14日、国民投票でその是非が問われる。
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児童手当を非課税に 家庭の経済負担を軽減
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スイスでは雇用者を通じ、子どもを持つ世帯に児童手当が毎月支給される。ところがこれは収入と見なされ、課税の対象になる。これを非課税対象にすることで、家庭の経済負担を軽減するイニシアチブ(国民発議)が、中道右派のキリスト教民主党から提出された。3月8日の国民投票でその可否が問われる。
キリスト教民主党はこれまで長年にわたり家族支援を政策の中心に据え、連邦議会で提案を行ってきた。しかしその成果が上がらないことから今回、イニシアチブ成立のために必要な数の有権者の署名を集め、家庭の経済負担軽減を図る。
3月8日の国民投票で問われるのは、収入と見なされる児童手当を課税対象から外すよう求めたイニシアチブ。その原案は8年前、キリスト教民主党議員のルクレチア・マイヤー・シャッツ氏から提出された。マイヤー・シャッツ氏は、家族支援団体、プロ・ファミリア(Pro Familia)の代表も務める。
提案当初、原案は法案として連邦議会にかけられた。家族支援、特に子どものいる世帯に対する減税は、スイスの各政党が中心課題の一つと見なしているものだ。しかし、マイヤー・シャッツ氏の法案は下院で反対され、上院も「上院独自の提案を行いたい」として賛成しなかった。
連邦議会で検討が重ねられている間、実は2013年に、家族支援に関して別に2件、憲法改正案が国民投票にかけられ否決されている。よって今回、国民は家族支援に関する3度目の投票を行う。
マイヤー・シャッツ氏の主張
マイヤー・シャッツ氏は、「我々の主な狙いは中所得世帯に活力を与えることだ。しかし、現行の手当金や税制は、全く意味を成していない」と言う。
マイヤー・シャッツ氏によれば、雇用者は現在、児童手当として年間およそ50億フラン(約6千5百億円)を支払っている。しかし、同時にその手当金に対し国と自治体が合計で10億フランに及ぶ課税をする。内訳は、およそ2億フランが国、残りの8億フランが自治体だ。
こうした数字があるにも関わらず、児童手当は収入と見なされ課税対象になる。そのため多くの中所得世帯が、健康保険料や託児所利用料が減額される対象から外れてしまったり、奨学金を申請する権利を失ってしまったりするとマイヤー・シャッツ氏は主張する。
イニチアチブ反対派は…
キリスト教民主党以外の全ての政党と政府は、マイヤー・シャッツ氏とは異なった見解を持つ。児童手当によって家庭の購買力は増し、また財産や収入に基づいて課税が行われるため、現行の税制は完全に憲法に沿っていると主張する。
また、左派の社会民主党議員アダ・マラ氏は「今回のイニシアチブは不公平だ。累進課税制ため、高所得世帯は低所得世帯よりもさらに得をする」と言う。
それに、「子どもがいる全家庭の約半分が連邦税を免除される低所得世帯に属しているため、連邦税では現行の税制の方が得をする。税制が変わっても、彼らには何の得にもならない」と話す。
中所得世帯のための手当
しかし、マイヤー・シャッツ氏はこうした批判を払いのけ、次のように言う。「富裕層の家庭の子どもの数は少ない。全体のわずか6%だ」
「しかし、国全体の59%を占める中所得世帯が、低所得世帯を支援する支給金の申請をできずにいる」だからこそ、「もし児童手当が非課税になれば、多くの家庭の経済状況が少し楽になる」。
他の全ての政党がイニシアチブに反対の姿勢を示しているにもかかわらず、マイヤー・シャッツ氏は勝利を確信していると言う。「我々のイニシアチブはシンプルかつ、すぐさま効果を得られるものだ。親は自分たちの状況に重ねあわせて正しい判断ができると思う。さまざまなことを総合して考えれば、イニシアチブで提案されている減税措置は彼らの消費力の回復につながるものであることがわかるはずだ」
またマイヤー・シャッツ氏はさまざまな年代でも、このイニチアチブが高い支持を得ると確信している。「自分の子どもや孫たちにとって良い改正だと、祖父母たちもわかるはずだ」
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寛大な税制優遇措置を提供し、裕福な外国人を呼び込もうとする国はスイスだけではない。特に英国とポルトガルはその筆頭だ。税金を少しでも少なく払おうと国外へ転出する納税者をいち早く糾弾するフランスでさえ、金持ちの外国人には色目を使う。スイスでは、11月30日の国民投票でこうした富裕層対象の税制優遇措置「一括税」の廃止が問われる。
男子テニスの国別対抗戦「デビスカップ」で11月21~23日、スイスは史上2度目となる決勝戦に挑み、フランスと対決する。この対決はスポーツの枠を超えて、独特な政治的様相を帯びそうだ。
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