スイスの視点を10言語で

職業訓練生受け入れ、スイス企業にメリット

painter apprentices
塗装工の職業訓練にかかるコストは、ITスペシャリストのものと比べると安価だ Keystone / Steffen Schmidt

スイスの企業は、職業訓練生を雇い、自社で育成すると年間1人当たり3千フラン(約33万円)超の利益を得られるかもしれないという調査結果が出た。

スイス連邦職業教育訓練所外部リンクの4回目の「費用対効果研究外部リンク」によると、見習いプログラムを持つほとんどの企業が、外部から新たに人を雇うより、自社で労働者を訓練した方が安上がりだったと答えた。

>>スイスの職業訓練ってどんなシステム?

スイスの職業訓練は、学校での教育と受入先企業での実習を組み合わせた「二重システム」制度で、多くの国で参考にされている。毎年、日本の小・中学校に相当する義務教育を修了した15〜16歳のうち、3分の2が職業訓練に進む。

このため政府は、社内トレーニングの重要性を促進することに注力する。

>>14歳でキャリアを選択するのは早すぎ?

しかし、企業が職業訓練プログラムを提供するか否かは、費用対効果が大きなカギを握る。調査を委託したスイス連邦教育研究革事務局(SERI)は、職業訓練提供の余地がある企業のうち、実際に実施しているのは全体の約40%外部リンクにとどまると試算。中小企業にとっては負担がより大きいと指摘する(例えば、適切な研修指導者を見つけることなど)。

訓練制度のある5700社超とそうでない4千社超が、調査に協力した。対象は、2016~17年度の連邦職業教育・訓練資格取得コース(VET、3~4年)のほか、今回初めて2年間の連邦VET履修コースも含んだ(より学力の低い生徒向けの、求められるスキルが比較的低い職業)。

費用は業種による

職業訓練1人にかかる費用総額は年間平均2万8070フランだった。これには給与(一般的に低い)のほか、採用・人件費、設備・材料費を含む。

企業の純利益は、年間平均3万1240フランだった。企業の3分の2が純利益があったと報告したが、残りは純利益よりも職業訓練に多くの時間を費やしたと答えた。

これは、一部の職業訓練は他の分野よりもコストが高いため。例えば左官・内装は、IT専門家や「ポリメカニクス外部リンク」技術者といったハイテク、精密機械業界よりも訓練コストは安い。ITやハイテク業界ではいずれも追加の職業訓練が必要だと、調査付随の記事は指摘する。しかし、訓練生はそのまま企業に雇い入れられるため、企業にとってコストをかける価値はあるとしている。

(英語からの翻訳・宇田薫)

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

スイス中銀

おすすめの記事

スイス中銀、807億フランの黒字 2024年決算

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が3日発表した2024年度決算確報は、807億フラン(約13.5兆円)の黒字だった。速報時点の見込み通り、連邦政府・州に30億フランを配当する。

もっと読む スイス中銀、807億フランの黒字 2024年決算
スイス中銀のマルティン・シュレーゲル総裁

おすすめの記事

スイス中銀総裁、ビットコインの準備金化に反対

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)のマルティン・シュレーゲル総裁はスイス紙のインタビューで、中銀の準備金にビットコインを追加する国民投票案に反対する考えを示した。暗号資産(仮想通貨)は資産として多くの問題を抱えていると指摘した。

もっと読む スイス中銀総裁、ビットコインの準備金化に反対
ドナルド・トランプ米大統領

おすすめの記事

スイス、米国の死刑推進に「深い懸念」表明 人権理事会で

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は3日の国連人権理事会(HRC、本部・ジュネーブ)で、ドナルド・トランプ米大統領が連邦・州レベルの死刑制度を強化する大統領令に署名したことを「深く懸念している」と表明した。

もっと読む スイス、米国の死刑推進に「深い懸念」表明 人権理事会で
株価ボード

おすすめの記事

スイス株式相場、初めて1万3000の大台に

このコンテンツが公開されたのは、 スイス株式市場で24日、代表指標のSMIが一時1万3000の大台を超え、史上最高値を記録した。前日のドイツ連邦議会選挙で保守派が勝利したことを受け、安心感が広がった。

もっと読む スイス株式相場、初めて1万3000の大台に
ゼンティス山の山岳ケーブルカーとスイス国旗

おすすめの記事

ゼンティス山の山岳ケーブルカー、改修工事へ

このコンテンツが公開されたのは、 東スイスの有名観光地ゼンティス山の山岳ケーブルカー「Säntisbahn」運営会社は24日、強風に対する安定性向上を目的にケーブルカー施設の全面改修工事に着手すると発表した。

もっと読む ゼンティス山の山岳ケーブルカー、改修工事へ
牧草をはむ牛

おすすめの記事

スイス、PFASの規制強化を検討

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。

もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部