スイスの企業は、職業訓練生を雇い、自社で育成すると年間1人当たり3千フラン(約33万円)超の利益を得られるかもしれないという調査結果が出た。
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スイス連邦職業教育訓練所外部リンクの4回目の「費用対効果研究外部リンク」によると、見習いプログラムを持つほとんどの企業が、外部から新たに人を雇うより、自社で労働者を訓練した方が安上がりだったと答えた。
>>スイスの職業訓練ってどんなシステム?
スイスの職業訓練は、学校での教育と受入先企業での実習を組み合わせた「二重システム」制度で、多くの国で参考にされている。毎年、日本の小・中学校に相当する義務教育を修了した15〜16歳のうち、3分の2が職業訓練に進む。
このため政府は、社内トレーニングの重要性を促進することに注力する。
>>14歳でキャリアを選択するのは早すぎ?
しかし、企業が職業訓練プログラムを提供するか否かは、費用対効果が大きなカギを握る。調査を委託したスイス連邦教育研究革事務局(SERI)は、職業訓練提供の余地がある企業のうち、実際に実施しているのは全体の約40%外部リンクにとどまると試算。中小企業にとっては負担がより大きいと指摘する(例えば、適切な研修指導者を見つけることなど)。
訓練制度のある5700社超とそうでない4千社超が、調査に協力した。対象は、2016~17年度の連邦職業教育・訓練資格取得コース(VET、3~4年)のほか、今回初めて2年間の連邦VET履修コースも含んだ(より学力の低い生徒向けの、求められるスキルが比較的低い職業)。
費用は業種による
職業訓練1人にかかる費用総額は年間平均2万8070フランだった。これには給与(一般的に低い)のほか、採用・人件費、設備・材料費を含む。
企業の純利益は、年間平均3万1240フランだった。企業の3分の2が純利益があったと報告したが、残りは純利益よりも職業訓練に多くの時間を費やしたと答えた。
これは、一部の職業訓練は他の分野よりもコストが高いため。例えば左官・内装は、IT専門家や「ポリメカニクス外部リンク」技術者といったハイテク、精密機械業界よりも訓練コストは安い。ITやハイテク業界ではいずれも追加の職業訓練が必要だと、調査付随の記事は指摘する。しかし、訓練生はそのまま企業に雇い入れられるため、企業にとってコストをかける価値はあるとしている。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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