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舞台裏では多くのことが準備中

バチカンのサン・ピエトロ広場でのミサの後、人々に手を振るフランシス法王 Reuters

選出から100日。フランシスコ法王は今も良いイメージと高い人気を博している。最初の評価はまだできないとしても、「貧者の法王」は決断の人でもあるようだと関係者は言う。

 選出された夜、「私のために祈ってほしい」と信者たちに親しげに語りかけた新法王は、メディアと一般の人々に好イメージを与える方法を知っていた。「こうしたやり方は全てを変える。法王は帝王ではなく他のキリスト教徒と同じく1人のキリスト教徒なのだ」と、スイス人のイエズス会司祭アルベール・ロンシャン氏は語る。

このイメージの背後にある考えとは?

 この第一印象はすぐに確信に変わったと、フリブールの国際カトリック通信社(APIC)のモーリス・パージュ氏は強調する。「法王は赤い靴をやめ、自ら病院に出向いて枢機卿を見舞い、バチカン内にある専用アパートには住まず、防弾ガラスで守られた法王専用車も使わない・・・より知的で内気で控え目だったベネディクト16世に比べると、これは実にスタイルの変化なのだ」

 今のところ、このイメージにはまだ何の傷も付いていない。人々を怒らせかねない重要な決定が何一つなされていないからだろう。新法王の姿勢をもう少し明らかにするためには、教会会議など、主だったイベントを待たなくてはならない。「法王が革新的かそれとも保守的かはまだわからない。確かに人々は法王に対し好意的なイメージを持っている。しかし、そのイメージの裏で考えていることは、はっきりとはわからない」と、ロンシャン司祭は言う。

 しかし、遅かれ早かれ決定は下されるだろう。実際、多くの問題が新法王を待ち構えている。制度面では、ローマ法王庁の改革が長い間懸案のままにおかれている。「また既婚男性の叙階問題や、同性愛者や離婚者に対する態度、教会内での女性の地位の問題も残されている」と、ロンシャン司祭は指摘する。

1936年12月17日、ブエノスアイレスの質素なイタリア系移民の家庭に生まれる。

大学で化学を学び、卒業後22歳でイエズス会に入る。人文科学を学び哲学の学位を取得し、ドイツのフライブルグ大学で博士号を取得。

1969年、司祭に叙階される。それから4年も経たないうちに、イエズス会のアルゼンチン管区長に任命される。軍事政権下(1976~1983年)、アルゼンチン・イエズス会の「非政治化」のために全力を尽くす。

コルドバで再び一司祭として奉職し、1992年にブエノスアイレスの補佐司教、2001年に枢機卿に任命される。

2013年3月13日、法王に選出。史上初のイエズス会士の法王であり、また初めてヨーロッパや地中海沿岸以外の地域から選出された法王でもある。

強いメッセージ

 我々が知りうる範囲で、今までに新法王が実際に下した唯一の決定は、教会統治を補佐するため8人の枢機卿を世界各地から選任したことである。そのうちの1人はイタリア人でローマ法王庁の一員である。最初の会合が10月初めに予定されているが、法王は「枢機卿たちとすでに接触している」と、バチカンは発表した。

 このやり方はかつてなかったものだ。「司教区の中には司教を補佐する司祭の評議会が存在するが、そのやり方を法王は真似て8人の枢機卿グループを形成した。これは強いメッセージになる。つまり、ローマ法王庁の聖省長官たちではなく、ローマに常駐しないこの8人の枢機卿を法王は頼りにするということだ。いろいろなことが舞台裏で準備されている」と、カトリック・ラジオ・テレビセンター(CCRT)のディレクター、ベルナール・リツレー氏は分析する。

変革はない

 新法王への親近感と、ラテンアメリカ出身であることから、人々は法王が革新的で進歩的であるにちがいないと信じ込む。また、聖フランシスコと同じ名前を選んだことは何よりもまず物質的なことから遠ざかった精神的な法王になろうとしていることを示唆しうる。しかし、関係者はそのイメージは必ずしも現実と一致しないと言う。

 「前法王は低下気味のイメージにだいぶ苦しんでいた。危険なのは、ベネディクト16世に少し黒いレッテルを貼り過ぎた我々が、反動でフランシスコ法王には白過ぎるレッテルを貼ってしまうことだ。確かにこのレッテルはフランシスコ法王の実際の個性と一致する。しかし、法王は何よりもまず、果たすべき使命を認識している教会の人間なのだ」と、リツレー氏は指摘する。

 「法王が左派の人間ではないことを知るべきだ。彼のイメージと思想的立場の間には、はっきりとしないものある。優しいというイメージは間違っている。優しさだけで10億人のカトリック信者を牧することはできない。時には鉄拳も必要なのだ」と、ロンシャン司祭は述べる。

 フランシスコ法王は、すでにいくつかの点については前任者の方針に従っていることを示した。教会は人工妊娠中絶に断固反対すると再表明し、過激なフェミニストでリベラルな道徳観念をもつと判断されるアメリカの聖職者の取り締まりを承認した。「要するに、革命的変化を期待してはならない。私の考えでは、主な改革は教会統治に関することだろう」と、パージュ氏は注意を促す。

世界とうまく関わる

 もし基本的に変革がないのだとしたら、変化は世界との関わり方から始まるのかもしれない。「ベネディクト16世は悲観的な世界観を持っていたが、フランシスコ法王は楽観的だ。その態度はヨハネ・パウロ2世の即位のころを思い出させる」と、パージュ氏は続ける。

 「教会の頂点にイエズス会の法王を据えたことは、聖イグナチウスと聖フランシスコの精神性に再び価値を与えようとすることだ。教会では、キリスト教の精神性の中に原理的なものを再発見しようとしている。イエズス会士であることは、今の世界でキリスト教徒として生きる一つの生き方になるのだ」と、リツレー氏は話す。

(仏語からの翻訳 井関麻帆)

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