なぜスイスはコカインの使用が多いのか
欧州でのコカイン使用量の上位10都市の半分はスイスが占める。スイス中毒研究センター外部リンクによれば、スイスは規制が緩い上に購買力が強く、薬物を購入・消費する理想的な条件が揃っているという。
欧州薬物・薬物依存監視センター外部リンクによると、スイスでは年間約5トンのコカインが消費される。その収益は約3億3千万フラン(約362億円)にも上がる。欧州における薬物消費の上位10都市のうちの5都市はスイスの都市が占める。
スイス中毒研究センターが中毒性物質の消費の概要をまとめた報告書「中毒パノラマ外部リンク」2019年版によると、コカインは主に西アフリカのネットワークから欧州に流通する。ヘロインは主にアルバニアの組織によって輸入販売され、流通量は年間1.8〜2.5トンと推定される。
同報告書は、「都市で消費される違法の薬物は、迅速かつ比較的容易に発見できる」としている。
「合法的な製品に至っては安価な上、至る所で手に入る。小売店、ガソリンスタンド、自動販売機、キオスク、カジノそしてインターネットと、街のあらゆる場所で24時間購入可能だ」と報告書は指摘する。
しかし例え薬物が安価でも、社会的には常に高額なコストが伴う。薬物やギャンブル依存のために毎年1万1千人以上の死者と約140億フランのコストが発生する。
スイス中毒研究センターは、「アルコール、タバコ、およびギャンブルの提供者は、規制強化に反して連邦議会・内閣に働きかけることに成功した」と非難。非常に安価な製品の禁止、広告の減少、小売店の営業時間の短縮などの具体的な措置が必要だと訴えた。
とりわけ緩い規制の恩恵を受けているアルコール販売に関しては、価格を上げればアルコール関連の問題を削減できると中毒研究センターは指摘する。「しかし、アルコール関連に伴う社会的なコストは『わずか』42億フランであるため、政治的な意欲が欠けている」
同じことがタバコに関しても言える。過去7年間、喫煙者の数は成人の25%強で安定している。スイスでは年間約9500人がタバコが原因で死亡。2017年のタバコの販売数は96億本だった。
違法薬物のトップは依然として大麻だ。スイスでは2011年に法律が緩和され、成人は、有効成分のテトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が最大1%の大麻であれば購入・消費が合法化された。しかしTHC含有量が1%を超える大麻の栽培、消費および販売は依然として禁止されている。北米外部リンクなど国際的に大麻法の改革が行われたことを受け、中毒研究センターはスイスも規制を整備するよう求めていた。
(英語からの翻訳:シュミット一恵)
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