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職業訓練後の大学進学は可能か スイスの進路選択

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ザンクトガレン大学で講義を受ける学生たち © Keystone / Christian Beutler

中学を卒業した若者の3分の2が職業訓練コースに進むスイス。読者からスイスインフォに「別の進路選択後でも大学を目指すことはできるのか?」という質問が寄せられた。

スイスインフォはこの夏、スイスの教育制度に関する質問を読者から募集した。今回は読者から関心の高かった、「職業訓練コースを選択しても、あとから大学に進学できるのか」という質問を取り上げる。

職業訓練はスイスの教育制度の礎石とされ、週に1〜2日は学校で座学、残りの日々は職場で実地訓練を積むという2本立てのシステムだ。大半の若者は3〜4年の課程を修め、連邦職業資格を手にする。

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スイスでは14歳前後で、大学入学資格(独語でマトゥーラ/仏語でマチュリテ)の取得を目指して普通高校に進むのか、あるいは職業訓練に進むのかを選択しなければならない。

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スイス人は14歳で職業を選択 早すぎる?

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは若いうちに自分の職業人生について大きな決断をする。14歳は早すぎるか?それとも妥当か?意見は大きく分かれる。

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だが、職業訓練コースに進んだ場合も後から大学に行って学ぶことはできるのだろうか。

答えは「イエス」だ。ただし、まずは職業系高等教育進学資格(職業マトゥーラ/職業マチュリテ)を取得する必要がある。これが取得できたら全国で8つある応用科学大学から一つを選んで進学する。応用科学大学とは、実用学に重点を置き応用研究を行う大学だ。

職業マトゥーラ取得のための準備コースは職業学校に設けられている。職業訓練と並行して普段の授業にコマ数を追加するのがコース1、既に職業訓練を修了した若者のためには、全日制かパートタイム制のコース2が設定されている。このように職業資格と大学入学資格の両方を取得する道は、スイスでは「王道」と呼ばれている。

職業マトゥーラ取得者が国内10校の州立大学と世界ランキング上位外部リンク常連の連邦工科大学2校(連邦工科大学チューリヒ校/ETHZ、連邦工科大学ローザンヌ校/EPFL)のいずれかに進学するためには、別に大学適性試験(UAT外部リンク)に合格しなければならない。そのため1年間の準備コースに通うが、医学部などはさらに別途入学試験があるので注意が必要だ。

職業マトゥーラは人気の資格?

2018年版スイス教育レポート外部リンクによると国家資格である職業マトゥーラ取得率の伸びは15%で、今や進学資格全体(第3のバカロレアと呼ばれ、数的には最も少ない専門職業マトゥーラを含む)の4割を占める。現在、職業資格取得者の約25%が同時に職業マトゥーラを所持しているが、その中心は「社会的に不利な家庭の出身で学力に秀でた若者であることから、社会格差の是正機能を担っているとも言える」(同レポート)。

ところが、職業マトゥーラを取得しても実際に大学などの高等教育課程に進む若者の割合はかなり低い。例えば2014年では、応用科学大学の進学資格を受験した1万4222人のうち実際に進学したのは7231人。男女別でみると男性が女性を上回った。進学率が低い理由として、同レポートは「普通高校卒業者は何らかの実地研修が必要なのに対し、職業訓練修了済みの職業マトゥーラ取得者はすでに実践力が身についているため、すぐに高い給与を期待できるからではないか」と推測している。

しかしながら大学適性試験は受験者自体が少なく、2016年の合格者は959人。レポートによると、大学進学者の大半は取得した職業資格とは別の分野の専攻に進んでいる。

職業訓練生から大学生へ:体験者の声

ブラヒム・アークティさん
ブラヒム・アークティさんは職業訓練修了後、大学に進学した Courtesy Brahim Aakti

現在、ルツェルン近郊エンメンで村会議員を務めるブラヒム・アークティ外部リンクさん(37)も、職業訓練を終えてから進路変更し、大学進学した1人。エレベーターメーカー・シンドラー社で設計の見習いをしていたアークティさんは、職業マトゥーラ取得のため、普通の訓練生が週に1.5日学校に通うところを2日通っていた。職業訓練を終えてから数年間準備に専念するよりも、この方が自分には向いていると考えたのだ。

「まずは手に職をつけておきたかった」とアークティさん。「そうすれば、もし学校に飽きても働きに行ける。大学は後からでも行けるし、もちろん行かなくても大丈夫」

スイスでは非常に若い年齢で職業を決定するが、「職業マトゥーラがあれば後で必要に応じてキャリアパスも変えられる」(アークティさん)。

アークティさんはそのままルツェルン応用科学大学外部リンクに進み機械工学を専攻した。月曜から木曜まではローゼンテクノロジーという会社で働き、木曜夜と金・土曜の午前に大学の授業を受けるというスケジュールをこなした。大学では液体動学関連の研究所で講義アシスタントとして働く機会にも恵まれた。

「自分には数学と物理の理論基礎が不足している」。そう自覚したアークティさんはスイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ外部リンク)でパートタイムの修士課程に進むことを決心。そして2012年に卒業する。

アークティさんがETHZに進むのに大学適性試験を受ける必要はなかったが、応用科学大学での成績が良いこと、英語力が十分であることが入学許可の条件だった。入学許可が下りても、幾つかの分野では理論面での遅れを補うため、単位を追加取得しなければならなかった。

行動あるのみ

アークティさん自身、こういったルートはあまり一般的でないことを認める。ETHZで同じ課程を履修した学生の中でも、彼のような応用科学大の出身者は稀で、全体の2%ほどだったという。応用科学大からETHZへの移籍で特に難しさを感じたのは、枠組みが実学的なものから理論的なものに変わった点だという。だが、収穫は間違いなく大きい。「両方を備えていれば、どんな仕事にも対処できる」

アークティさんは2018年12月以来、地方政治外部リンクに仕事の舞台を移している。だが、職業と学問の「二重」ルートを歩んできたことに悔いは無い。「行動あるのみ(do it!)」。それが彼のアドバイスだ。

広がる進路の選択肢

職業訓練をもっと開かれたものにしようと現在のような「職業系高等教育進学資格(職業マトゥーラ/職業マチュリテ)」が全国的に導入されたのは1994年。それ以前は、職業訓練を選択するとその先は袋小路外部リンクとなり、大学進学に方向転換するには遠回りの行程(とモチベーション)が必要だった。この新資格創設の目的は、十分な能力を持った人材を育て、優秀な職業訓練生らに普通高校の大学入学資格と同等の資格取得のチャンスを与えることだった。

ただ、そのプロセスはまだ完了していない。2018年に、職業マトゥーラを若者や保護者の間に浸透させるためプロモーション外部リンク用の特別サイト外部リンクが開設されている。

(英語からの翻訳・フュレマン直美)

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