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スイスの生活保護入門

オフィスの机
スイス人口の約3%が生活保護を受ける © Keystone / Christian Beutler

スイスの生活保護制度は経済的に困窮する人やその家族に最低限度の生活を保障し、自立できるよう支援する。スイスの事情と共にその仕組みを説明する。

スイスでは27万人が州から生活保護を受けている。生活保護受給者の半数はスイス人で3分の1は18歳以下。また成人受給者の4分の1はワーキングプアだ。

2018年に州が支出した生活保護費は28億フラン(約3100億円)に上る。スイス社会保障会議(SKOS)外部リンクは生活保護制度を「スイスの社会的調和への本質的な貢献をめざし、すべての人に尊厳ある生活を保障する」ものだとしている。

生活保護の対象になるのは?

生活保護は貧困のボーダーライン以下で生活する人々のためにある。スイスで生活保護対象となる基準額は個人の場合が月2259フラン、大人2人と子供2人の4人家族は3990フランとされている。(スイスの給与の中央値は月6500フラン)

スイス国籍またはスイスの在住許可証がある場合は生活保護の対象になる。難民申請者や亡命者も対象に含まれる。それ以外のケースでも緊急支援外部リンクを申請可能。

既に社会保障給付金を受け取っている場合や、銀行口座に多額の預金があったり資産を所有したりしている場合は対象外となる。年金受給者で経済的に困窮している場合は補足給付金を申請できる。

生活保護はいくらもらえる?

生活保護は最低限の暮らしを保証するものだ。食料、衣服、その他の生活用品の購入に個人で月1000フラン、家賃に1000フラン、医療保険(スイスでは加入が義務)に200フランが支給される。

それに加えて基礎医療保険料は減額を申請できる。州によっては毎年申請が必要となる。

借金を抱えた受給者には追加で200フランが支給される。

生活保護を受給した場合にしなければならないことは?

ファイナンシャルアドバイザーから経済状況改善のための資金計画についてアドバイスを受ける。また仕事を探すか、社会統合プログラムへの参加が必要となる。

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受給中に収入があった場合は支給額を減額する可能性があるため、金銭的な贈与や医療費などの払い戻しなど、いかなる収入も申告しなければならない。

規則を守らなかったり、義務を果たさなかったり、虚無の報告などをしたりすると、支給を停止もしくは減額される。不正受給をした外国人は強制送還される。

受給期間中はどんな制限がある?

できる限り家賃の低い家を借りる努力をしなければならない。当局が設定した基準値より家賃が高すぎる場合は勧告される。25歳未満の場合、両親と同居もしくはシェアハウスで部屋を見つけるよう求められる。

公共交通機関で職場に行けない場合や、健康上の理由からどうしても車が必要な場合を除いて、車の購入費は支給額に含まれない。ペットの費用も含まれない。

生活保護を受けてもスイス国籍は取得できる?

生活保護給付金の受給期間中にスイス国籍の取得申請はできない。連邦レベルでは申請からさかのぼって3年は生活保護給付金を受け取っていないことが要件とされている。ベルン州、アールガウ州はこれが10年に引き上げられた

受給期間中に旅行は可能?

社会福祉事務所の許可を得られれば可能。旅行費は支給額に含まれていないが、旅行手段に乏しい人々が安価で行ける旅行オプションを紹介する団体がある。

支給額の返還義務は?

受給者の経済状況が改善した場合、支給額は返還しなければならない。一部の州では多額の遺産相続や宝くじに当選した場合に限り返還義務を課す。国内でばらつきはあるが、返還義務は生活保護費を最後に受給してから5~20年後に失効する。

スイスの生活保護受給者の半数は1年以内に生活保護を受けなくてもよくなる。残りの20%は1~2年後に受給を停止する。約8%は6年以上、生活保護を必要としている。

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(英語からの翻訳・大野瑠衣子)

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