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スイスのベルセ大統領、年金改革の必要性強調 国内紙に

湖畔で休む高齢者
2033年までに定年に達する人は260万人から390万人に倍増するとみられる Keystone

スイスのベルセ連邦大統領兼内務相は独語圏の日刊紙NZZのインタビュー外部リンクで、付加価値税(VAT)の最大1.7%引き上げなどを盛り込んだ新しい年金改革案について「安定した年金制度を維持するためには追加の資金調達が不可欠」と強調した。

 ベルセ大統領は年金改革が進んでいないことに懸念を示し、このままでは財政不足が「極めて深刻になる」と述べた。また「2033年までに、定年に達する人は260万人から390万人とほぼ倍増する。この喜ばしくない事実を受け入れなければならない。今の年金レベル、安定した国の年金制度を維持したいのなら、追加の資金調達を喫緊に行わなければならない」と語った。

 連邦政府は昨年、逼迫する年金財源を確保するため、付加価値税増税のほか企業年金改革にも踏み込んだ抜本的な年金改革案を打ち出したが、同年9月の国民投票で否決された。

 これを受けて連邦政府は今年3月、新たな案を発表。今回の案は日本の国民年金(基礎年金)にあたる老齢・遺族年金の財源確保に特化した内容で、付加価値税の引き上げのほか、女性の定年年齢を現行の64歳から男性と同じ65歳に段階的に引き上げることなどを盛り込んだ。年金の受給開始年齢を62~70歳(現在は63~70歳)で自由に選べるようにする一方、65歳以降の就労も奨励する。

>>スイスにはなぜ年金改革が必要なのか? 

 ベルセ大統領は定年年齢を65歳よりもさらに引き上げることについては、会社側が高齢者の雇い入れを敬遠するため利点がないと指摘。「だが高齢化社会が進み、スキルを持つ労働者が不足すれば、高齢者に対する需要は将来大きくなるだろう。定年年齢の一律引き上げは間違ったアプローチだ。我々が正しいインセンティブを与えれば、国民は自発的に長く働く。目的は実際の退職年齢を上げること」と語った。

 連邦内閣は今夏までに、連邦議会に改革案を提出する。

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