コロナ第2波 スイス政府の緩い措置
スイスでは、ここ数週間で新型コロナの感染が急激に拡大した。今では人口10万人あたりの新規感染者数が最も多い国の1つだ。連邦政府は先月28日、第2波を食い止めるための新たな措置を発表したが、国際的に見れば緩やかな措置だ。
事態は急展開した。先月初めのスイス人口10万人あたりの新規感染者(14日間の平均)はまだ60人未満で、多くの国で記録された指数を大きく下回っていた。しかし、3週間のうちに爆発的に増え、同30日には24時間に報告された感染者数が9千人の大台を超えた。スイスは今、世界で最も高い指数を記録した国の1つだ。
スイス連邦COVID-19タスクフォース外部リンクのメンバーのマティアス・エッガー氏が、ツイッターに書き込んだコメントによると、スイスの1日の新規感染者数は人口比例で先月14日に米国を、20日にスペインと英国を、22日にフランスを、そして27日にはオランダを追い越した。
連邦の新たな措置は十分か?
パンデミック(世界的流行)の初期に英オックスフォード大学が開発した「厳格度指数外部リンク」(各国の新型コロナ対策の「厳しさ」を数値化したもの)によると、連邦政府は、春から部分的ロックダウン(都市封鎖)を段階的に解除して以来、他国と比べて緩やかな衛生措置を導入してきた。
スイスでは保健衛生は州の管轄であるため、州は感染状況に応じて、連邦政府よりも厳しい措置を導入することができる。そもそも多くの州はより厳しい対応を取っていた。連邦レベルでは、感染の拡大を抑制するために、一連のより厳しい措置が先月18日に発表された。しかしその後10日間、事態は悪化する一方だったとフランス語圏のスイス公共放送(RTS)は結論付けた。
そこで、連邦政府は28日、戦略の強化を発表した。マスク着用義務の特に屋外への拡大、集会の制限、ディスコやナイトクラブの営業禁止、レストランやバーの営業時間の制限(午後11時まで)などの措置だ。また、陽性と判定された人をより迅速に隔離するため、15分で結果の判る簡易テストを11月2日から導入することを決めた。スイスはこれまで人口100万人あたりの検査数が最も少ない国の1つだった。
発表の翌日、大半のメディアは、連邦政府が介入「すべき時期だった」と厳しめの評価をした。追加措置の効果が感じられるようになるまで少なくとも2週間は掛かるだろう。欧州の近隣諸国はここ数日で、抜本的な対策(再ロックダウン、夜間の外出禁止、公共施設の全面閉鎖など)を打ち出したが、スイスの措置は国際的に見ても緩やかなままだ。
「連邦政府の追加措置が目下の指数関数的増加を食い止めることができるか完全には確信が持てない。スイスの医療システムにとって、この増加は非常に懸念される」と、ジュネーブ大学グローバル公衆衛生研究所外部リンクのアントワーヌ・フラオー所長(疫学者)は先月29日、RTSの番組で話した。
現在の実効再生産数(1人の感染者が何人に感染させるかを表す)は3月の数値より低いこと、それゆえ春ほど厳しい措置である必要はないことを同所長は指摘したうえで、「今取るべき措置は外出自粛とバーやレストランの営業禁止だ」と考える。そして、再ロックダウンが功を奏したアイルランドやウェールズを例に挙げる。
しかし、保健行政を管轄するアラン・ベルセ内務相は今のところ、州によって異なるアプローチを取る戦略を擁護し、連邦政府の対応が遅すぎたのではないかという批判に反論する。ドイツ語圏の日刊紙NZZに30日に掲載されたインタビュー記事外部リンクでは、「スイスを統治するのは科学者ではない」と言い切った。
(仏語からの翻訳・江藤真理)
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