新型コロナウイルスの影響で、スイス国内の医療機関では少なくとも2万人の医療従事者が短縮労働していると、ドイツ語圏の日刊紙が報じた。緊急性のない手術などが禁止されたためだ。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは新型コロナの影響で労働時間を短縮した場合、政府の補償措置がある。
操業短縮制度
経済危機で急激な減産に直面した企業は、従業員と合意の上で労働時間を減らすことができる。州当局の承認が必要だ。
承認されると、従業員は失った給料の8割を補償される。例えばフルタイム(100%)勤務の従業員の労働時間が50%に減った場合、雇用主は50%分の給与を払い、失業保険から残りの50%の8割が給付される。つまり元の労働時間が週40時間なら、労働時間は20時間に減るが、収入は36時間分受け取れる。
ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーが2日報じた。感染を防ぐため他人と一定の距離を空けるソーシャルディスタンシングの実施や、緊急性を要しない医療措置を禁止したことにより、一部の医師や医療スタッフの仕事が減っている。
公立・私立病院の多くは、州の新型コロナウイルス対策に人的支援を提供しているが、それ以外の医療スタッフの仕事に影響が出ている。
国内2番手の私立病院グループ、スイスメディカルネットワークのレイモンド・ロレタン会長は同紙に、同グループほぼすべてにあたる21の病院で操業短縮の導入を余儀なくされたと語った。3千人の全従業員のうち、3分の2が該当するという。
職員1万人、医師2300人が働く私立病院最大手ヒルスランデングループでも、短時間勤務補償制度を申請した。該当する職員の大半は事務・入院管理のスタッフ。ただ手術室のスタッフも業務量不足に直面している。
おすすめの記事
おすすめの記事
操業短縮制度は新型コロナからスイス経済を救うのか
このコンテンツが公開されたのは、
世界金融危機の嵐が吹き荒れた2009年、スイスの操業短縮制度は多くの労働者を救った。今、新型コロナウイルスの感染拡大で再び注目を浴びている。
もっと読む 操業短縮制度は新型コロナからスイス経済を救うのか
国内のリハビリテーション病院も、業務量が4分の3減少するなど影響が顕著だという。リハビリ病院傘下団体スイス・リハのウィリー・オギエ代表は「感染症対策による収入減を国が引き起こしているのなら、国が補償するべきだ」と話す。
一部の公立病院も影響を受けている。アールガウ州とツーク州の病院は操業短縮を導入した。バーゼル大学病院は、研究員、事務員に短時間労働を取り入れた。ただ、病院の広報担当者は、医師と看護師らが現在、失業を回避するためできるだけ多くの人々を配置しようとしている、と明かす。
スイスメディカルネットワークのロレタン氏は、緊急でない手術を中止するという政府の決定は適切だと語った一方で、非緊急手術の段階的再開を検討することが大事だと述べた。
おすすめの記事
ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。
もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
おすすめの記事
スイスでX離れ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。
もっと読む スイスでX離れ進む
おすすめの記事
スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究者たちが、キノコで発電する電池を開発した。農業や環境研究に使われるセンサーに電力を供給できるという。
もっと読む スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
おすすめの記事
ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
このコンテンツが公開されたのは、
米ヘルスケア大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、スイスでの人員削減を計画している。
もっと読む ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
おすすめの記事
「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
このコンテンツが公開されたのは、
スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。
もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
おすすめの記事
スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
このコンテンツが公開されたのは、
スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。
もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
おすすめの記事
ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
このコンテンツが公開されたのは、
ユングフラウ鉄道グループは、ユングフラウヨッホの2024年の来場者が105万8600人となり、2015年以来6度目の100万人の大台を超えたと発表した。
もっと読む ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
おすすめの記事
2024年のスイスの企業倒産件数、過去最高に
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは2024年の企業倒産件数が過去最高を記録した。
もっと読む 2024年のスイスの企業倒産件数、過去最高に
おすすめの記事
国民投票に向けた署名がまたも偽造
このコンテンツが公開されたのは、
医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。
もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
おすすめの記事
スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト
このコンテンツが公開されたのは、
1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。
もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト
続きを読む
おすすめの記事
スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。
もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
おすすめの記事
新型コロナ後の人の動き、携帯端末データで分析 スイス政府
このコンテンツが公開されたのは、
政府の要請で通信大手スイスコムが利用者の携帯電話端末位置データを収集し、政府の外出自粛要請などがどれだけ守られているかを検証していたことが分かった。データは24時間前のもので、匿名化もされているが「プライバシー侵害につながるのでは」との懸念も上がる。
もっと読む 新型コロナ後の人の動き、携帯端末データで分析 スイス政府
おすすめの記事
新型コロナに揺れる世界の民主主義
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で世界が動きを止めている。公の活動は中止され、ジェームズ・ボンドの最新作すら撮影が延期になった。ロックダウン(都市封鎖)は民主主義にも影響をもたらし、世界中で国民・住民投票が延期になっている。だが独裁者や大衆主義者、国粋主義者が喜ぶのはまだ早い。
もっと読む 新型コロナに揺れる世界の民主主義
おすすめの記事
ティチーノ州の産業停止命令は容認、スイス内閣
このコンテンツが公開されたのは、
政府の声明外部リンクによると、感染症の拡大により住民の健康に危険が生じると判断される場合は、内閣は州が域内産業の一時的な制限・停止を命じることを認める。ただ従業員がお互いに一定の距離を空ける社会的距離(ソーシャル・ディス…
もっと読む ティチーノ州の産業停止命令は容認、スイス内閣
おすすめの記事
新型コロナ1カ月 図で見るスイスの感染状況
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルス対策の最前線にいない者にとって、感染者数の増え方を把握するのも骨が折れる状況だ。
もっと読む 新型コロナ1カ月 図で見るスイスの感染状況
おすすめの記事
新型コロナ対応、「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)」ルール
このコンテンツが公開されたのは、
人口880万人のスイスで、当初「握手や挨拶のキスを避ける」だけだった勧告は、今や「できるだけ外出させない」ための措置に変わった。新型コロナウイルスの流行を収束させるには何が許されて何が許されないのか、国民も困惑している。
もっと読む 新型コロナ対応、「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)」ルール
おすすめの記事
コロナ危機 スイスの連邦制に試練
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、連邦政府は連日のように記者会見を開き、各州も頻繁に情報を発信している。それぞれの発言内容からは、スイスの政治システムの内情や、連邦と地方(または州)のパワーバランスが垣間見られる。 連…
もっと読む コロナ危機 スイスの連邦制に試練
おすすめの記事
新型コロナ なぜスイスでは外出の「自粛」を「勧告」なのか?
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大へのスイスの対策について、読者から多くの質問が寄せられている。そこで今回の新型コロナQ&Aでは、連邦政府が打ち出した「社会的距離」ルールと、それに対する住民の受け止め方を取り上げる。
もっと読む 新型コロナ なぜスイスでは外出の「自粛」を「勧告」なのか?
おすすめの記事
新型コロナ、スイス観光業に6600億円の損失
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスによりスイスのスキーリゾート、ホテル、レストランは営業停止が続き、雇用にも影響が出ている。国内の大学が行った調査によると、国内の観光産業は今年60億フラン(約6600億円)の損失が生じる可能性がある。
もっと読む 新型コロナ、スイス観光業に6600億円の損失
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。