グルリット氏の所蔵品受け入れを決定したベルン美術館
Keystone
スイスのベルン美術館は独ベルリンで24日、故コーネリウス・グルリット氏が所蔵していた絵画の遺贈を受け入れると発表した。今年5月に亡くなった同氏の父はアドルフ・ヒトラー専任の美術商で、遺贈品の中にはナチス略奪美術品が含まれているとされる。
このコンテンツが公開されたのは、
ドイツは今後、遺贈される絵画やデッサン、スケッチなど計1200点の出所を調べていく方針。また、ナチスドイツから逃れたユダヤ人家族の遺族が絵画の返却を求めてベルン美術館を訴えた場合に生じる法定費用は、同国が負担するという。
「これは簡単な決断ではなかった」と、ベルン美術館基金委員会のクリストフ・ショイブリン氏はこの日ベルリンで行われた記者会見で語った。また、遺贈品が背負う歴史の重さを鑑みれば、同館には寄贈を受けたことで「得した」という感情はないと付け加えた。
おすすめの記事
おすすめの記事
大量のナチス略奪画 所有者死去でベルン美術館に遺贈
このコンテンツが公開されたのは、
グルリット氏とは何のつながりもなかったベルン美術館には衝撃が走っている。「なぜ私たちが?」とスイス国営放送の番組でマティアス・フレーナー館長は言う。フレーナー氏はコレクションの引き取りに非常に前向きだが、ベルン美術館は正…
もっと読む 大量のナチス略奪画 所有者死去でベルン美術館に遺贈
グルリット氏の所蔵品を巡っては、現在、同氏の親類が所有権を主張しているが、ベルン美術館の受け入れ決定に影響はないという。同館は、ナチスに略奪されたものと判明した絵画はスイスには持ち込まないと強調している。また、グルリット氏との間で交わされたやりとりの多くを、今後公開する予定にしている。
数百億円の価値があると言われている遺贈品は現在、ベルリンで保管されている。これまでに元の所有者が判明したのは、その3分の1だ。
モニカ・グリュッタース独文化大臣によると、遺贈品のうち240点の出所が不明だという。
グルリット氏が死去した今年5月、所蔵品をベルン美術館に遺贈するという遺言が残されていたことが判明し、世間を騒がせた。しかし、ベルン美術館が遺贈を受けるうわさは前々から上がっていたため、今日の発表にあまり驚きはない。
今回の決定が、遺言が発表されてから数カ月後となった理由についてベルン美術館は、遺贈を受けることによる法的問題やモラル問題を明らかにしなければ、ナチスの犠牲者の遺族から絵画の返却を求める訴えが何百件も起こされる可能性があったためだとしている。
世界でトップニュースに
グルリット氏がメディアで注目されるようになったのは2010年のこと。ドイツで年金生活を送っていた同氏は、スイスからドイツへ向かう電車の中で税関から無作為に選ばれ検査を受けた際、日本円で数百万円にあたる数千ユーロの現金を所持していたことが発覚した。
その後、独当局が脱税容疑でグルリット氏の自宅を捜査した際、ピカソ、ルノワール、マティスなど、推定数百億円の価値がある芸術作品が自宅から大量に見つかった。
この事件は13年に公になり、そのニュースは世界中を駆け巡った。特に、グルリット氏の死後、所蔵品のすべてがベルン美術館に遺贈されるという話は世界から注目を浴びた。
おすすめの記事
スイス、PFASの規制強化を検討
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。
もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
おすすめの記事
ローザンヌ国際バレエコンクール 韓国高校生男子が優勝、安海さんが3位
このコンテンツが公開されたのは、
ローザンヌ国際バレエコンクールの最終選考が8日に行われ、韓国のパク・ユンジェさんが優勝。群馬出身の安海真之介さんが3位で入賞した。
もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール 韓国高校生男子が優勝、安海さんが3位
おすすめの記事
スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
このコンテンツが公開されたのは、
世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。
もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
おすすめの記事
ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。
もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
おすすめの記事
スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。
もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
おすすめの記事
スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。
もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
おすすめの記事
スイスに感染症情報解析センター発足
このコンテンツが公開されたのは、
感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。
もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
おすすめの記事
ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。
もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
おすすめの記事
スイスでX離れ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。
もっと読む スイスでX離れ進む
おすすめの記事
スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究者たちが、キノコで発電する電池を開発した。農業や環境研究に使われるセンサーに電力を供給できるという。
もっと読む スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
続きを読む
おすすめの記事
ナチス略奪の絵画 ユダヤ人相続人に返還へ
このコンテンツが公開されたのは、
ナチスによって略奪されたトマ・クチュールの絵画は、美術収集家グルリットが秘蔵していた作品の一つ。この貴重な「グルリット・コレクション」は後にベルン美術館に継承され、今回、ドイツに住むジョルジュ・マンデルの相続人に返還された。マンデルはユダヤ人政治家かつレジスタンス指導者だった。
もっと読む ナチス略奪の絵画 ユダヤ人相続人に返還へ
おすすめの記事
グルリット氏のナチス略奪絵画、ベルン美術館は受け取るか?
このコンテンツが公開されたのは、
第2次世界大戦の戦火で失われたと考えられていた約1240点の絵画が2012年2月、ドイツで発見された。絵画の所有者コーネリウス・グルリット氏は今年5月に死去。ところが、遺贈先を遺言でドイツではなくスイスのベルン美術館に指定していた。戦後、この事件以上にナチスの略奪画への関心を高めたものはない。この降ってわいた贈り物に当惑するベルン美術館に世界の注目が集まる。
もっと読む グルリット氏のナチス略奪絵画、ベルン美術館は受け取るか?
おすすめの記事
ナチス略奪美術品 スイスに求められるのは公正な態度
このコンテンツが公開されたのは、
ドイツやナチス占領下の欧州諸国で美術品を略奪されたユダヤ人の遺族には、もう時間はあまり残されてない。所有権を立証するための法的な争いに疲れ果てて、本来受け取るべき遺産をあきらめるケースも数多い。 専門家にとってスイス…
もっと読む ナチス略奪美術品 スイスに求められるのは公正な態度
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。