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政治情報を手話で スイス人ろう者たちが要望

シモネッタ・ソマルーガ司法警察相
2016年9月、スイスろう連盟主催の討論会「手話なき直接民主制」に出席したシモネッタ・ソマルーガ司法警察相 Keystone

国民投票の情報冊子や連邦政府の法案の解説を、インターネット上で手話で提供してほしい。そう主張するスイスろう連盟(Swiss Federation for the Deaf)が、連邦内閣事務局に請願書を提出した。

  スイス在住のろう者および聴覚に大きな障害をもつ1万人以上の人々にとって、投票の情報冊子は「間違った言葉」で書かれているようなものだと、スイスろう連盟は2日に出された声明で述べた。

  「聴覚障害者の言葉は手話だ。書き言葉のドイツ語は外国語であり、読めるようになるのに大きな労力を要する。この外国語で複雑な政治的内容を理解しなければならないことが、情報へのバリアフリーアクセスを定めたスイス国内法および国際法に反する、不必要な障害となっている」という。

  連盟は、適切な措置が取られない限り「自由な意見形成とそれによる政治参加が、障害を持つ人々にとって、不可能ではないとしてもより困難になる」としている。

  9月23日土曜日の「スイス手話の日」、2700人分以上の署名が集まった。請願は、連邦レベルを始め、国が作成する全ての政治情報を手話で提供するよう求めている。

書き言葉の難しさ

  しかし本当にその必要はあるのか?聴覚障害者だって読むことはできるのではないだろうか?

  「読めるが、それは学校で学ぶからだ。話すのを学ぶのと同じように」と説明するのは、スイスろう連盟のスイス・ドイツ語圏の広報担当者、マルティナ・ラシュリさんだ。

  「耳が聞こえる人々は書き言葉を音で学ぶ。しかし、聴覚障害者にははるかに難しく、記憶力が試される。その上、新しい単語を何気なく聞いて覚えるということがない。単語は一つ一つ、文法的用法とともに学ばなければならない。手話はイメージに基づく完全に視覚的な言語で、文法も話し言葉と異なる」と説明する。

  聴覚障害者の中にも読むことが「上手で好きな」人もいるし、聴覚障害者は仕事で書き言葉を使わざるをえないが、手紙を間違えずに書くことは難しいとラシュリさんは指摘する。例えば、ドイツ語文法の定冠詞と不定冠詞の複雑な規則などのせいだ。

  「聴覚障害者は書き言葉を学ぶが、使うのはどうしても必要な場合だけ。聴覚障害者同士のコミュニケーションには書き言葉はほとんど使われない。動画メッセージが登場してからはさらに少なくなった。今は、電子メールやワッツアップ(スマートフォン用のメッセンジャーアプリ)を使って、文章なしの短い手話動画を送り合っている」

  メディアに関しては、文章を説明するイメージ付きのメディアを主に利用する。「手話や字幕付きのテレビの方が新聞よりも人気がある」とラシュリさんは話す。

  スイスインフォでは、全ての動画に字幕を付け、視覚障害者向けに音声による写真キャプションを提供している。

公式言語?

  しかし、ドイツ語、フランス語またはイタリア語を読むことに困難を感じている人はスイスにたくさんいる。人口の4分の1が外国人なのだ。なぜ聴覚障害者だけに特別待遇を与えるべきなのだろうか?

  「なぜなら聴覚障害者には、さまざまな法律や協定により、手話で情報を受け取る権利が保障されているからだ」とラシュリさん。一例として、障害者に対する不平等の解消を定めた連邦法の第14条を挙げる。

  「手話がなければ、聴覚障害者は社会や教育に他の人々と等しく参加する機会を持つことができない」という。

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 正確な数字は存在しないものの、他国の推計によれば、聴覚障害者の失業率は耳の聞こえる人々の約3倍になるとラシュリさんは話す。

  スイスろう連盟が手話を国の公式言語の一つとして認めるよう求めている理由の一つがそれだ。

  「連邦レベルで三つのスイスの手話(ドイツ語、フランス語、イタリア語)が認められることが、スイスろう連盟の戦略的目標の一つだ。この点でスイスは国際的に遅れている。多くの国で、手話は公式言語または国語として認められている」

  世界ろう連盟によれば、世界の約5分の1の国が手話を法的に認めているという。

あなたはどう思いますか?請願の内容に賛成ですか?

(英語からの翻訳・西田英恵)

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