スイスの視点を10言語で

中国からの渡航者にコロナ検査は実施せず スイス内閣

エスカレーターを利用するマスクのアジア人女性
先月、突如「ゼロコロナ政策」を大幅緩和した中国では感染者が急増している Copyright 2023 The Associated Press. All Rights Reserved

新型コロナウイルスの感染者が急増する中国からの渡航者に対し、スイス連邦内閣は11日、現時点では水際対策としての検査義務付けを行わないことを閣議決定した。

内閣は閣議後の声明外部リンクで、現在の感染状況が、中国からの渡航者にコロナ検査を義務付ける「正当な理由に現時点ではならない」と述べた。欧州連合(EU)は中国での感染拡大を受け、加盟国に検査義務付けを勧告。一部の加盟国が検査義務を再導入した。スイスはEU非加盟だが、加盟国間の自由な移動を定めたシェンゲン協定に加盟しているため、EUの勧告に足並みを揃えるかどうかを検討していた。

内閣は声明で「スイス国民は現在、新型コロナウイルス感染症の重症化を避けるだけの十分な免疫をつけている」と説明。多くがワクチンを接種済みか、感染から回復した人で、中国における感染増加がスイス国民や医療機関へのリスクを増やすとは考えにくいとした。

また最新の知見によると中国で流行しているのはオミクロン変異株の亜種で、スイスでは既に感染が広範囲に広がり、感染者数が減少している種類だと指摘した。

内閣は「スイス国内では新型コロナウイルス感染症が広範囲に広がっている。中国から空路直行便で入国する渡航者は比較的少なく、検査を義務付けたところでウイルスの流行拡大に与える影響はほとんどない」と述べた。また「懸念される新種の変異株が発生するリスクについても、中国が他の地域より高いわけではない」とした。

スイスでは人口(870万人)のうち、約97%がワクチン接種や感染を通じ抗体を保有する。現在、スイスでは新規感染者数は減少を続けている。これは今年からコロナ検査が原則自己負担になり、検査を受ける人が減ったことも影響している。

おすすめの記事
ワクチン

おすすめの記事

スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。

もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

中国の感染拡大で不安広がる

中国でコロナ感染が急速に拡大していることを受け、米国、オーストラリア、一部の欧州諸国を含む10カ国以上が、中国からの渡航者に対し出国前検査と陰性証明提示を義務付けた。中国が公表した感染実態のデータについて過少報告だとの批判が上がったことに対し、中国側は反発している。

EUは4日、中国から空路でEU圏内に入国する乗客に対し、出国前検査と陰性証明提示を義務付けるよう加盟国に勧告。中国発着便の全乗客はマスク着用が望ましいとした。また加盟国政府に対し、中国からの入国者への無作為検査のほか、経由便を含む中国からの便が到着する空港で汚水検査の実施・追跡を行うよう推奨した。

米国は5日から、中国・香港・マカオからの渡航者に新型コロナ検査を義務付けた。国籍やワクチン接種の有無を問わず、空路を利用する2歳以上の全員が対象で、出発前2日以内の検査と陰性証明提示が必要となる。米国疾病予防管理センター(CDC)は、これらの国々への渡航を再考するよう国民に呼びかけた。

世界保健機関(WHO)の欧州地域事務局長は10日、中国での感染拡大について、欧州地域には「差し迫った脅威はない」としたが、より多くの情報が必要だと述べた。

スイス連邦内閣は声明で、国内の感染状況を注視していると述べた。政府は空港エリアや主要観光地などの汚水処理施設の監視のほか、義務となっている報告システム(検査数、新規感染者数、入院者数、死亡者数)、開業医の任意参加型報告システム、汚水サンプルや入院患者から得たウイルス変異株の追跡などを通じ感染状況を把握する。また、中国発の全ての直行便で、汚水の確認を行うかどうかを検討している。

スイスでは昨年9月、新規感染者数と入院者数が再び上昇したが、12月には減少に転じた。検査費用の公費負担が終了したため、検査機関で確認された新規感染は今年初めから急激に減少。連邦内務省保健庁(BAG/OFSP)はそのため「検査の実施件数が減少し、統計に反映されない感染件数の増加が予想される」としている。

英語からの翻訳:シュミット一恵

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

兵士

おすすめの記事

スイス製狙撃弾60万発以上がウクライナに

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの弾薬製造会社Pディフェンスの狙撃用弾薬が昨年7月、ポーランドの会社経由でウクライナに届いていた。スイス公共放送が報じた。

もっと読む スイス製狙撃弾60万発以上がウクライナに
取材に応えるナグラのマティアス・ブラウンCEO

おすすめの記事

核ごみ処分場計画「国民投票で可決されれば加速」 

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・チューリヒ州の放射性廃棄物処分場建設計画をめぐり、計画主である放射性廃棄物管理協同組合NAGRA(ナグラ)は、国民投票による決着を歓迎する姿勢を示す。

もっと読む 核ごみ処分場計画「国民投票で可決されれば加速」 
ジョン・レノンとオノ・ヨーコさん

おすすめの記事

ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定

このコンテンツが公開されたのは、 ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。

もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
スイス証券取引所を運営するSIX本社

おすすめの記事

スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。

もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
野菜

おすすめの記事

2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。

もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
研究所の外観

おすすめの記事

CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える

このコンテンツが公開されたのは、 今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。

もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
クラスの風景

おすすめの記事

女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。

もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
雪山で写真を撮る観光客

おすすめの記事

11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ

このコンテンツが公開されたのは、 スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。

もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
巨大な豆腐を切る人

おすすめの記事

スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。

もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部