新型インフル対策も新学期
スイスでは夏休みも終わりに近づき、すでに学校が始まった州やこれからの州などさまざま。秋の新学期は生徒がバカンス先から新型インフルエンザを持ち帰る季節でもある。
すでに600人以上の感染者を確認しているスイスだが、予防に学校閉鎖を実施した学校はまだない。スイス連邦保健局 ( BAG/OFSP ) も衛生面での予防にのみ力を注いでいる。
感染対策いろいろ
「生徒はマスクを着けなくてもよい。マスク着用が最善の予防法と考えるのは間違いだ」
とベルン州教育課長ベルンハルト・プルファー氏は言い切る。最善策は、定期的に、かつ徹底的に手を洗うこと。ウイルスは机、ドアなどについており、それらに触った手で目、口、鼻などを触ったりして感染するからだと続ける。
「ただし、もし感染したら、その時は感染した本人がマスクを着けるべきだ。そうすれば、ほかの人にうつらない。さらに、もし感染したら家にいるのが普通。従って、感染してもいない生徒がマスクを着ける必要はまったくない」
と言う。
しかし、これはあくまでベルン州教育課の方針。26の州がまったく異なる教育制度を持つスイスでは、26の新型インフル予防対策があると言っても過言ではない。
ゾロトゥルン州では、ドアの取っ手や階段の手すりの消毒を行い、生徒は距離を置いて座ることになった。またグラールス州では学校のキャンプなどの集団行動を秋休みまでは行わないことにした。トゥールガウ州では、手を洗った後は、ペーパータオルを使用することにした。
今を利用して衛生指導
こうした学校側の対策はあるが、親たちは多くが恐怖心をもって新学期のスタートを見つめている。
「確かに、新型インフルが流行る可能性は非常に高い」
とツーク州保健課長のヨアヒム・エダー氏は言う。
バーゼル・シュタット州では生徒2人が感染すれば、ただちに学校を閉鎖する方針だ。またベルン州でもクラスで6、7人が感染したり、感染者数5、6人のクラスが増加していく場合には、学校閉鎖指令を出す校医に連絡することが先生に義務づけられている。
過剰反応では?
「確かに新型インフルは季節性インフルより症状が軽いという現在の情報からすれば、少し過敏すぎる反応かもしれない。しかし一方で、新型インフルが変異し、非常に危険度の高いものになる可能性があることも知っている。そのため、今の時期を利用して、衛生面での指導をし、手洗い励行などに慣れておくことは大切だ」
とプルファー氏は考える。
ところで、親たちのもう1つの問題に、たとえ子どもが感染しても親が取れる休みは3日間のみとスイスの雇用労働者法が謳 ( うた ) っている点がある。現時点では、新型インフル用に新しい規定は考えられていない。
一方、子どもたちも学校閉鎖を休みが増えたと喜んでもいられない。多くの州が、次回の秋休みや冬休みなどを、その分短くしたり、オンラインでの授業を考えたりしているからだ。
スイスのピークはこれから
スイス連邦保健局の最近の報告によれば、南半球では新型インフルの感染度がピークに達した。しかしスイスでは今年の終わりまで、このピークが来る可能性が残っているという。そのひとつの証として、隣国のイタリアとオーストリアでは最近、新型インフルの感染者数が急に増加したと伝える。
また、8月11日の時点で、スイスでは638人の感染者を記録しているが、そのほとんどが外国旅行からの帰国者。そのうち4人が出産後や呼吸器系の病気を持っているため入院したが、こうした人を除けば、大多数の場合症状は軽い。
世界的に見ると、世界保健機関 ( WHO ) は7月31日付で、新型インフルの感染者総数を16万2380人、死者数を1154人と報告している。しかし、これに感染者数の多いイギリスやアメリカの数は含まれていない。これらの国はWHOへの報告をストップしたからだ。
米疾病対策センター ( CDC )によれば、アメリカだけで100万人を超える人が感染しているといい、多くのアメリカ州の保険局は人数を数えることを断念したという。その理由の1つとして、たとえ感染したと思う人が医者の所へ出掛けても、現在行われている簡易テストの信頼性がかなり低いからだということを挙げている。
swissinfo.ch、トマス・ステファンス
( 英語からの翻訳、里信邦子)
スイス連邦保健局(BAG/OFSP)は9月にワクチンのテストを行い、10月からワクチンの導入を考えている。
スイスは1300万人分のワクチンを注文している。
スイスの医薬品大手「ノバルティス ( Novartis ) 」は8月5日、新型インフルエンザのワクチンのヒトを使ってのテストを開始したと発表した。
ノバルティスの広報担当官エリック・アルトフ氏によれば、同社製造のワクチンは今年の第4四半期には、各国に向けて配送される予定だという。
熱があり、咳き込む調子の悪そうな人との接触を避ける。
せっけんで一日に何度も徹底的に手を洗う。
十分な睡眠、適切な食事、適度な運動を行うなど健康面に気をつける。
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