スイスはマスク着用義務なし、ロックダウン緩和でどうなる
スイスは27日から、新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)が段階的に解除される。公共交通機関も徐々に通常のダイヤに戻る。27日は理髪店・美容院、美容サロンなどが営業を再開する。政府はマスク着用は義務付けないが、必要な人に行き渡るようバックアップする。
公共スペースでのマスク着用が義務付けられたオーストリアやドイツとは対照的に、スイス政府はマスク着用を一律に義務付けることは見送った。「(相手との)距離を保ち、手を洗う」。健康な人は、マスクよりもこの2点をまず徹底すべきだという。
マスクは「推奨」
ロックダウンの一部解除後、相手との距離を保つことが物理的にできない業種に対しては、連邦政府は「保護策」の徹底を義務付けた。そこで想定されるのがマスクだ。だが連邦内閣は22日の会見で、マスクは「距離、衛生対策」の補足的役割に過ぎないとし、着用は「推奨」にとどめた。
これではっきりした。つまり2メートルの距離ルールが守れないところでは、マスクが一定の効果を発揮するということ。もしマスクに全く効果がないのなら、看護師が常時マスクを着ける意味がなくなる。
マスクは正しく着用しないと、感染リスクが非着用時より上がる可能性がある、と保健庁はこれまで呼びかけてきた。それが間違った衛生対策に向かい、距離ルールがないがしろになってはならないと指摘する。保健庁は、マスクをどのように着用すればよいのか、特に説明していない。布マスクの自作も勧めていない。
連邦政府がマスクを提供
スイス当局がこれまで「健康な国民にマスクの着用は必要ない」と繰り返してきたのは、主にマスクの在庫不足があったからだ。限りある在庫は主に病院、クリニック、介護施設に優先して振り分けられ、需要はかろうじてカバーされた。これまで、国民の大部分は政府の呼びかけに従っている。公共の場でマスクを着けている人はまだ少数派だ。だがこれも変わる可能性がある。
連邦内閣は22日の会見で「(必要な分の)マスクを確保する責任は基本的にヘルスケア、企業、家庭それぞれにある」と述べた。しかし、連邦政府は小売業者に働きかけ、在庫の確保・拡大を図っている。内閣は同日 「第一の措置として、軍の医薬品局が4月27日から2週間、毎日100万枚の防護マスクを大手小売業者に供給する」と発表した。
美容院でのマスク
国がマスク供給を決めたのは、間もなく始まるロックダウン緩和を見越しての措置だ。これを受け、27日から美容院や美容サロンの多くが営業を再開するかもしれない。内閣の方針は22日に発表されたばかりで、業界の保護策はまだはっきりしていない。理美容店団体「Coiffure Suisse」は会員向けに、どこでマスクなどの保護物資を手に入れられるかをまとめた一覧を作っている。
ルツェルン州クリエンスにあるBlue Box Distribution外部リンク社には、21日夜までに300軒のサロンから美容マスク3万点、保護マスク3千点の注文が寄せられた。マルセル・マイヤー最高経営責任者(CEO)は、注文の多さに供給が間に合わなかったとswissinfo.chに語った。このため1軒のサロンにつき美容マスク50点、防護マスク10点の上限を設けたという。来週になれば追加の出荷が可能だとしている。
公共交通機関では?
ロックダウン緩和で列車、バス、トラム(路面電車)の利用も増加する。交通量の多い場所では、他人と安全な距離を保つのは難しい、または不可能だ。公共の場でのマスク着用が義務付けられたオーストリアのように、スイスも電車に乗るときはマスクをつけなければならないのか、まだはっきりと決まっていない。スイス連邦鉄道(SBB)は第2段階のロックダウン緩和が行われる5月11日までに、乗客・乗務員の保護策を公表するという。SBBのダイヤが通常に戻るのはこの日を予定している。
マスクの正しい着用を
ドイツ政府は以下の方法を推奨する。
・マスクを着ける前に手を洗うか消毒する
・マスクは口と鼻を覆う
・着けるときと外すときは分泌物が手に付かないように注意
・マスクを外すときはストラップの部分を持つ。その後に手を洗うか消毒する
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