スイスの視点を10言語で

休校中の学習時間、子供たちの間で大きな差

自宅学習
子供の学習時間に差が出ているという Keystone / Laurent Gillieron

新型コロナウイルスに伴う休校期間中の勉強時間は、スイスの子供たちの間で大きく差が開いていることが研究機関の調査で分かった。1日5時間以上の子供もいれば、1〜2時間と回答した子供もいた。

これは、ツーク教育大学の教育経営経済研究所(IBB)が12日に発表した調査報告書「学校バロメーター」の結果だ。同調査はスイス、ドイツ、オーストリアの7100人超の生徒、保護者、教師、その他関係者に聞き取りを行い、休校にどう対応しているかを調べた。

スイスでは3月16日から休校が続き、約100万人の生徒が自宅学習をしている。学校の再開の時期は16日に発表される可能性が高い。

勉強時間に差

調査結果で特に懸念されたのが、10~19歳の約20%が1週間の勉強時間は9時間未満と回答したことだ。

IBB所長で調査を率いたシュテファン・フーバー氏は「ほぼ5人に1人の子供が休校を休暇だと考えている。あるいは非常にストレスの溜まる経験だと思ってはいるが、その時間を学習に使っていない」と話す。

やる気の欠落、自宅学習のサポートとリソースがないことが最大の理由と考えられる。フーバー氏によると、生徒の自宅学習環境を整備するため、学校が一部家庭に定額料金のインターネット回線を提供した、という報告もあった。

その一方で、31%の生徒が週に25時間以上勉強していたことも分かった。週に15時間から24時間は36%だった。

外部リンクへ移動

全体的には下の図が示すように、学校の課題に費やした平均時間は約18時間だった。 (例えばチューリヒ州の同じ年齢の生徒が、学校で過ごす時間は最大26時間)。

外部リンクへ移動

教育格差

教育の専門家の間では、自宅学習がスイスの教育格差の拡大につながりかねないとの懸念が挙がる。これは長年の課題だ。

高学歴の親の子供は、教育水準の低い親の子供たちより、大学進学のための高等学校に入学する率が高い(一部の調査によると、前者が50.6%、後者が12.2%)。フーバー氏は、休校が長期間続くほど、この教育格差が拡大する可能性があると警鐘を鳴らす。

国際調査では、学習成果を図る最も重要な因子の1つが、学習に費やされた時間であることが分かっている、とフーバー氏は話す。

新しい学習形態

一方、生徒の50%は学校に行けなくて寂しいと回答している。親が以前とは異なる形で教師に尊敬の念を抱いていることも分かった。フーバー氏は「数日間自宅で子供の面倒を見ながら仕事をして、教師の仕事に改めて感謝した、という親の言葉が報告書に掲載されている」と述べた。 「彼らは自分の子供を教えることがいかに難しいか話してくれた」

調査ではさらに「大勢のやる気のある教師、校長、そして学校が、この状況を活用してデジタル学習環境を推し進めた」ことが分かったという。ノウハウのレベルが学校ごと、また学校内で異なっていたとしても、だ。

フーバー氏は、学校はデジタル学習環境を使用して、課題を分け、個々の生徒のニーズに合わせた教育を行っているとした。同氏は、混合学習(教室とデジタル学習を合わせたもの)が将来、より定着していくだろうと話した。

(英語からの翻訳・宇田薫)

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む
ベルジエ報告

おすすめの記事

「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱

このコンテンツが公開されたのは、 スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。

もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
整備中の飛行機

おすすめの記事

スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠

このコンテンツが公開されたのは、 スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。

もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
署名の入った箱

おすすめの記事

国民投票に向けた署名がまたも偽造

このコンテンツが公開されたのは、 医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。

もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
エリック・ヘンニさん

おすすめの記事

スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

このコンテンツが公開されたのは、 1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。

もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部