休園中の動物園をデジタル訪問 子供向け教材に
スイスは11日から、新型コロナウイルスに伴うロックダウン(都市封鎖)解除の第2弾に入る。動物園は第3弾の来月8日に再開する予定だ。ベルン市営動物園は子供が自宅で動物の生態を学べるデジタル教材を用意した。教育関係者からの評価は高い。
スイスの学校と同様、ベルンのデールヘルツリ動物園も新型コロナの影響で3月中旬から臨時休業中だ。同園は自宅学習中の子供たち向けに、学べる動画シリーズ「dählhölzli@home外部リンク」のオンライン配信を開始した。おたまじゃくしが卵からカエルになるまでの過程など、ウェブカメラを通じて観察できる。同園の講師ペーター・シュルプさんがクマや爬虫類などのユニークな生態について説明する動画もある。年長の子供向け教材は、鳥の生態― 特にフラミンゴに焦点を当てた。
動物の生態を学ぶ
動物園は市営ゆえに教育事業を行う役割を持つ。教育専門家でつくるチームと共に、教育課や学校の教師と連携してあらゆる年齢の子供向け学習教材を開発している。提供するコースはドイツ語圏の教育カリキュラム「Lehrplan 21」に沿ったものだ。シュルプさんによると、新型コロナウイルス危機が広がる前、学校はよく課外学習で動物園に来ていた。休園を受け、生物の授業に使うデジタル学習教材を開発してほしいという声が挙がったという。教材はすべて無料で提供している。
動物園が自然保護区に
ロックダウン中の動物園は、ちょっとした自然保護区のよう。通常は人で混雑している園内は閑散とし、職員がシャベルで鳥小屋を掃除する音のほかに聞こえるのは、動物の鳴き声だけだ。人の姿を認識したときの動物の反応はさまざまで、例えばフラミンゴは羽をはばたかせ、大きな叫び声を上げる。サル、ヘビ、クモ、魚、カメ、ワニなどが住む屋内飼育室に足を踏み入れると、新参者が登場したと、小さなサルが興味津々に窓へ駆け寄ってきた。通常とはあべこべに、こちらが観察されている。屋外のアザラシも、人間が来たことに興味を隠せない様子で泳いでくる。群れがあると通常は人間に興味を示さないジャコウウシも1頭、慎重にこちらへと近づいてくる。
園の職員はロックダウン中、ゲルディモンキーとリスザル用に、ココナッツの殻のフードディスペンサーやハンモック、中を登れるチューブを設置した。人から見られることのなくなった動物たちの行動の変化は、dählhölzli@home外部リンクで見ることができる。ベルント・シドガー園長がサルのおりのそばで自転車に乗り、トリックをしている映像もある。
高評価のデジタル教材
配信したデジタル教材に対し、教師からの反応は好評だという。園は、営業再開後も配信を継続していくことを検討している。そうすれは、入場料を捻出できない学校にも提供することができる、とシュルプさんは説明する。
国内にある他の動物園もまた、ロックダウン中に市民との交流を図る努力を続けている。例えばチューリヒ動物園は、オンライン日記外部リンクを毎日更新し、動物の様子をリポート。シュヴィーツ州のゴルダウアニマルパーク外部リンクとバーゼル動物園は、子供が自宅でできる、動物がテーマの工作や実験を紹介外部リンクしている。バーゼル動物園は「最近5匹のピグミーヤギが双子を出産し、赤ちゃんヤギが14頭になった」とウェブサイトで発信した。ザンクト・ガレン州ゴッサウにあるヴァルター動物園では人の居ない園内でラクダが自由に駆け回る動画を公開した。
動物園の危機
ロックダウンによって入園料収入がなくなり、動物園は大きな打撃を受けた。ベルンの動物園は財政難に陥り多くの職員が現在、就業時間を減らして働いている。ただ市営のためそれほどの危険はない。一方でチューリヒ動物園は部分的に民営化されている。株式の75%は個人、25%はチューリヒ州と市が保有する。通常であればこの季節は一日に3千人が訪れる。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)によると、動物のエサは毎日必要で、そのために出勤する職員の給与に1日当たり7万フラン(約770万円)が出ていく。
バーゼル動物園も同様だ。コストのほとんどは入場料やレストラン、ギフトショップからの収入で賄われている。経費の3分の1は寄付や相続、証券・不動産収入でカバーする。しかし最も打撃を受けたのは、ベルン州カルナッハにあるジョンズ・クライネ・ファーム外部リンクのような小さな動物園だ。同園はすでにロックダウン前から資金難に陥り、クラウドファンディングを通して動物のエサ代を賄っていた。
(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
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