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スイスに永眠する 喜劇王監督チャップリン

Keystone

1950年代に米国で巻き起こった「赤狩り」を逃れて、天才映画監督チャーリー・チャップリンがスイスのヴヴェイにやってきたのは1952年だった。

イギリス人のチャップリンが安住の地に選んだのはレマン湖畔の小さな町ヴヴェイ。シャトー・ドゥ・バンという豪華なお城で、晩年の25年間を過ごした。

 ヴヴェイはローザンヌとモントレーの間に位置する小さな町で現在はネスレの本社があることで有名だ。この西側のレマン湖畔からの展望は特に素晴らしく、湖の向こうにアルプスが望め、緩やかな傾斜の丘には葡萄畑が見渡せる。チャップリンが安住の地に選んだのも頷ける。

チャップリンの縁の地

 ヴヴェイの湖畔を歩くとチャップリンのトレードマークのステッキを持ち、帽子を被った銅像に出会う。この他に、チャップリンが購入したシャトー・ドゥ・バンのお屋敷があるコルジェ・シュル・ヴヴェイ(ヴヴェイの上という意)の村には「チャップリン広場」がある。ここには、チャップリンの墓もある。

スイスへ避難

 1952年、自伝的作品で、生きる希望を失ったバレリーナと、孤独な老コメディアンの愛を描く『ライムライト』を発表するためにツアーに出たところ、「共産主義支持者である」としてアメリカ下院非米活動委員会に召喚され、米政府は彼の再入国許可を取り消した。同委員会には戦争そのものを否定する『独裁者』(1940年)の発表以来、執拗な監視を受けていたのだ。米国では丁度、マッカーシー旋風が巻き起こり、共産主義者が弾圧を受け始めた時代だった。

 このため、チャップリン(当時63歳)はローザンヌで有名なボーリヴァージュホテルで滞在しながら、嵐が去るのを待つことにした。しかし、米国民の激しい阻止運動を受け、再入国許可申請を断念する。受入国スイスでの静かな生活が気に入ったチャップリンは敷地が14ヘクタールもあるシャトー・ドゥ・バンを購入し、家族全員(妻ウーナと子供が8人)と共に住居を構える。

 チャップリンはスイスに亡命してからも仕事を続けた。伝記「チャプリン自伝」(上・下/新潮文庫、中野好夫訳)を書き、映画ではマッカシー旋風のアメリカを批判する『ニューヨークの王様』(1957年)とソフィア・ローレンとマーロン・ブランドが主演する『伯爵夫人』(1977年)を撮った。

チャップリン記念館

 「何もしていないということがなく、常に活動している人という思い出が強い」と回想するのは息子のマイケル・チャップリン。スイスでの生活については「ハリウッドにいないことで家族との生活を得ることができ、精神的な安定も得たのだろう」と語る。散歩に出てもファンに付きまとわれる事のない静かなスイスの生活が気に入っていたようだ。スイスのサーカス「クニー」の公演には欠かさず行ったという。

 チャップリンファンに嬉しいことにはこの縁の城、シャトー・ドゥ・バンが記念館としてもうすぐ、一般公開される。2001年4月に創設されたチャップリン基金が彼の子供達からお城を買い取り、現在、改修工事が行われている。チャップリン基金のメイヤー氏によると「全てが順調にいけば、2006年末には開館予定」という。チャップリンの映画関係の資料などの他にチャップリンが住んでいた当時のままの部屋など、チャップリンの個人的な側面も垣間見れる。シャトーは24室もあり、地下や離れも改造中というから、楽しみだ。

 この記念館開館の先触れとして、今年3月から始まる愛知万博のスイス館では「チャーリーのコーナー」が設けられる予定という。


swissinfo  屋山明乃(ややまあけの)

<チャップリン1889〜1977年、人生ハイライト>

– ミュージックホールの芸人の父と母の間にロンドンの貧民街で生まれる。父は1年後に蒸発し、夫婦は離婚。母に育てられる。

– 5才で初舞台を踏む。

– 母親が精神病院に入院したため、7歳で兄ととも孤児院に預けられる。

– 10歳で劇団に入団し、21歳で劇団と渡米、25歳で初めて映画監督を勤める。

– 生涯で80数本の映画(うち75本は無声映画)を撮り、多くの作品で監督、脚本、主演や時には音楽まで手掛けた。

– 代表作は『キッド』(1921年)、『黄金狂時代』(1925年)、『モダン・タイムス』(1936年)、『独裁者』(1940年)など。

– 結婚は4度し、2度目のリタ・グレイと2人、4度目のウーナ・オニールと8人の子供がいた。36歳から73歳まで10人の子供をもうけた。

– 結婚相手は皆女優で10代の少女(16才〜19才)ばかりだった。

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