スイスの起業家、投票システムを米国に売り込む
米大統領選が目前に迫るなか、スイスの起業家が米国にスイス式投票システムを売り込もうと全力を注いでいる。
米国では、2000年の大統領選で票集計上のトラブルが報告されるなど、投票システムの信頼性が揺らいでいる。
スイス式投票システムを導入すれば、投票運営を低コストに抑えられ、さらに有権者の投票システムへの信頼性も回復できる、と起業家べアット・フェール氏は訴える。だが、米国当局の反応は鈍いようだ。
スイス方式
「スイスはモノ作りの緻密さとサービス業の信頼性に定評がある。チョコレートやアーミーナイフ、時計と同じように、投票システムも自他共に認める質の高いものだ」。フェール氏はそう語る。
同氏によると、スイスでは有権者1人にかかる投票時間が平均1分と短く、どの投票所でも有権者が列をなすようなことはないという。各投票所での開票作業も3時間以内と速く、疑問票や無効票などのトラブルは一度もないという。
スイスで投票システム開発が進んでいる背景には、国の重要法案から地域の駐車場建設に至るまで、最終的には直接投票で決めるという直接民主主義がある。このため、年に最低4回は投票が行われている。
先月行われた国民投票では、直接投票所に足を運ぶ、郵便で送る他に、一部の州でインターネットにアクセスして電子投票も行えるようにした。
電子投票導入
電子投票の導入については、米国を始め、各国でも関心が高い。開票作業が短縮できるだけでなく、有権者にとっても操作が簡単なことから、投票率の低下に歯止めがかけられるなどの期待が大きいためだ。
だが、2000年の米大統領選で行われた電子投票の票集計を巡る混乱を機に、電子投票システムの信頼性に疑問の声があがっている。
今年7月に新会社、スイス投票システム社(本社、バーゼル)を興したフェール氏は、スイス式投票システムを採用すれば、こうした懸念も解消できると強調する。また、スイス方式が有権者1人当たりにかかるコストが2ドル(約220円)と、米国の最高40ドル(約4,400円)に比べて大幅に低いとも指摘する。
同氏は現在、スイス式投票システムのコスト競争力と精密さを武器に、飛び込み営業を展開している。
「2カ月前ほどから、米国の選挙担当職員に1,500以上もメールを送ったんだ」とフェール氏は話す。「だけど、返事はたったの1つか2つでね。でも、あきらめないよ。選挙の後でも売り込み攻勢を続けて、新風をおこすことは可能なはずだからね」と語っている。
スイス国際放送 ロバート・ブルックス 安達聡子(あだちさとこ)意訳
米大統領選と電子投票:
2000年米大統領選での票集計を巡る混乱を機に、電子投票の信頼性に疑問の声があがっている。
前回の悪夢を繰り返すまいと、米当局は欧州安保協力機構(OSCE)に対し、11月の大統領選に選挙監視団の派遣を要請。
国際監視団の下で行われる選挙は先進国としては異例だ。
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